古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

はやぶさが開発した4つの技術

2014-12-26 | サイエンス
 『ハヤブサ2の真実 どうなる日本の宇宙探査』(松浦晋也著、講談社現代新書2014年11月刊)を読みました。
この本で面白かったのは、ハヤブサを成功させるために開発された技術の解説と、副題が示している宇宙開発を推進する組織の話(旧文部省と科学技術庁の主導権争い、それはまた日本の宇宙開発をすすめるために求められる国家意思の話でもありますが)です。
 ここではまず技術の話。「はやぶさ」のために開発された4つの技術があります。
 探査機の目的は「小惑星からサンプルを持ち帰る」ではなく、「小惑星からサンプルを持ち帰るために必要な様々な技術を実地で実証する」と設定されました。
1.まずは、イオンエンジン(原理は下記をご覧ください。)
http://spaceinfo.jaxa.jp/hayabusa/about/principle2.html
小惑星への往復に必須の燃費の良いエンジンです。キセノンというガスにマイクロ波という電波を浴びせて電離させ電気を帯びたキセノンガスに電圧をかけ、加速噴射する。
推力が非常に小さい。化学推進ロケットだと、推力500N(51kgf)とか2000N(204kgf)とかだが。ハヤブサの「μ10」エンジンの推力は7mN。これは0.714gf、つまり1円玉を手にのせたほどの推力である。そのかわり長時間推力を発生し続けることが出来る。空気のない宇宙空間では、小さな加速でも何か月も続けていれば、最終的に非常に高い速度に到達するのだ。
 初代のはやぶさの検討段階では、化学推進を使う試案も存在した。この場合、打ち上げ時の探査機重量は、大量に積み込む推進剤で、2トンちかくになる。打ち上げに使ったm-Vロケットはそんな重さの探査機を打ち上げることが出来なかった。
2.光学航法
 探査機を目的の星にきちんと導くためには、探査機が今どこを飛んでいるかを精密に測定する必要がある。通常は、地球との電波のやりとりで、ある特定の波形の電波を送り、探査機がオウム返しに送り返す。時間差から地球と探査機の距離がわかる。また地球は自転しているので、地上の通信局は24時間周期で探査機に近づいたり離れたりする。この時のドプラー偏移からどの方向にいるかわかる。ところがこの方法では誤差を小さくするのが難しい。3億㎞離れた探査機の位置の測定誤差は300㎞にもなる。小惑星の大きさは1㎞以下。これでは小惑星に近づけない。
 そこで登場したのが光学航法だ。ある程度まで近づいたら、はやぶさ本体に搭載したカメラで、はやぶさから見える小惑星を星空毎撮影する。小惑星が星々とどういう位置関係かを見て、方向を判断する。
3.サンプラーホーン
 小惑星にお一瞬接地させて「弾丸を撃ち込む」。舞い上がってきた小惑星表面のサンプルはサンプラー内部を上がって、サンプル室に到達すると、次の瞬間、はやぶさは化学推進スラスターという小さなロケットエンジンを噴射して上昇するという仕組みである。
4.地球帰還カプセル
 地球にかえってきたハヤブサは、採取したサンプルをカプセルに収めて切り離す。カプセルは秒速12km以上の高速で大気圏に突入する。
 そこでカプセル全体は、はやぶさのために開発した炭素繊維に樹脂を浸透した熱防護材で覆われている。熱が加わると、樹脂は蒸発してカプセル表面にガスの層を作り、熱の浸透を防ぐ。


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