赤坂泰彦のディアフレンズ(2)

2006年07月19日 | 佐野元春 Radio Days

[06/07/19<Play List>]

[BGM]約束の橋
楽しい時 / 佐野元春
[BGM]Yeah! Soulboy
Night Life / 佐野元春
Boys Keep Swinging / David Bowie
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■内容の一部を抜粋
・'90年代に入って曲の主題が'街'から'地球'に広がっていった気がします。
「初期の3部作『Back To The Street』、『Heart Beat』、そして『SOMEDAY』ですよね。このアルバムでのメインのテーマは『ガラスのジェネレーション』の一節じゃないですけれども"つまらない大人にはなりたくない"、大人に対する反抗それから既成に対する抗いというね、それこそがロックンロールの本質だという思いが僕にもあった。そうした思いを形を変えていろいろな曲にその思いを託して書いたんですけれども。やはりソングライターとしていろいろな人生の経験を積んでいくにつれて、それだけでなくてそれ以上にもうちょっと広いテーマにも挑戦してみたいな、といって取り上げる主題がだんだん広がっていったのが'90年代以降ですね。その中には政治や環境やそうしたなかなかポップソングの中では取り上げにくいテーマを取り上げて、それを分かりやすい形のポップソング、ロックンロール・ソングに仕立て上げたい、それが'90年代最初の僕のチャレンジでしたね」
「それとそうしたトピック・ソングを書く、その何かいいロール・モデルがなかった。だから僕が書くことによって下の世代のソングライターたちが"あぁ~ああいう形でやればいいのかもしれない"といったようなそういう見方をされていたような節がありますね」と佐野元春。

・2000年以降の作品感はどうですか?
「作品の作り方ということでいえばデビューした時からさほど変わっていないと思うんですよね。根っこのところは変わっていない。ただ音楽を作る現場が変わってきたし、それはアナログからデジタル中心のレコーディングになりました。これは大きな変化でした。それとその音楽の届け方ですよね。そうした新しい時代に沿った僕らアーティストのやり口やり方というのがきっとあるはずだ。何がファンにとっていちばんうれしんだろうといったことを考えているのがちょうど2000年以降の取り組みですね。音楽リスナーあっての僕らですから音楽リスナーに楽しい利益が落ちてゆくようなやり方というのが、長い目で見ればそれが正解なんじゃないのかと僕は思うんですよね。十代、二十代の心の多感な連中たちに音楽をプレゼントして、彼らの喜怒哀楽をそっとサポートしてあげて、それで彼らから本当に恩恵を被って成り立っているビジネス、それがレコード・ビジネスだと僕は思っているんですね。それを考えるとその彼らにいちばんいい利益が落ちてゆくようなビジネスの方法が、たぶん長い目で見ると正解なんだろうな、そんなことを漠然と思っています」と佐野元春。

・『THE SINGLES』は新しくファンになった人にはいいアルバムですね。
「いちばんいいと思います。僕の音楽を十代の時、多感な頃に聴いたリスナーであれば現在三十代、四十代といったところにいらっしゃると思うんですよね。そろそろ彼らの子どもたちもこうした音楽に触れることになってしまう。だからコンサート・ツアーをやって面白いのはだいたい三世代ぐらいに渡ってお客さんが集まってきてくれるんですよね。ロック・コンサートでこうして三世代が連なってる景色というのは、けっこう珍しいと思うんです、日本ではね。かつて僕はマジソン・スクエア・ガーデンで見たジャクソン・ブラウンのライヴ。これがやはり客席を見ると三世代ぐらいの、たぶんお父さんとその息子が一緒にジャクソン・ブラウンの『STAY』という曲を歌ったり。そういう景色が"素晴らしいな"と思って若い頃見てたんですね。で、いつか自分のライヴも自然な形でこうなればいい。それが最近になってようやく実現してきている。これがうれしいですね」と佐野元春。

・このコンピレーションを編纂して
「複雑な気持ちなんです。昔の自分の曲を改めて今聴くというのは。普段はそうしたことはほとんどしません。こうしたコンピレーションを作るという時がいい機会なんですね、自分自身を知る。佐野元春というソングライターは一体どんなやつなんだということを知るいいチャンスでしたね」と佐野元春。

・「アンジェリーナ」を歌う若き佐野元春くんに今かける言葉は?
「まぁ、もうちょっと肩の力抜けよみたいな(笑)」と佐野元春。

・クルマのラジオから「Night Life」がながれて
「デビューしてからまだ半年くらいしか経ってないですから、まだ自分の曲がラジオからながれてくるということを経験したことがなかったんですね。いつかラジオから自分の曲がながれてきたら、うれしいだろうなってことを、ずうっーと思っていね。で、ある時タクシーに乗ったんですよ。そしたらそのタクシーのカーラジオから僕の『Night Life』がかかってきた。すごく小さな音だったから運転手さんに"運転手さんっ、運転手さんっ、もうちょっと大きくして!"で大きくしてもらった。しばらく聴いたらね、もう言いたくしてしょうがなかったんですね。"運転手さんっ、この曲ねぇ僕の曲なんだよ!"言っちゃいましたけどね。プロになって自分の曲がはじめてラジオからながれてきた時の感激ですよね。これは一生忘れないですね」と佐野元春。

・ソングライティング
「女性に向けて書く詩、男性に向けて書く詩、大雑把にそんな分け方ができると思うんですよ。不思議なんだけれども、男性に向けて書く場合には、大抵その男性のイメージというのは少年だったり青年だったりする場合が多い。心の少年だったり、心の青年だったりする。ただ女性に向けて書く場合には、同じように年齢を経てきているとしたらば、その同じ年代の女性に向けてメッセージなり、自分の何か思いを託す。そうした書き方をね、これすごく不思議なんですよね。う~ん」と佐野元春。

・同い年の男性に向けてはどうですか?
「あるんですよ。ただ同い年の男性に向けて書く時も、なにかその男性の中の少年性であったり、その男性の中の青年の時の強い思いであったり、そこを突いていく、こういう詩を書きがちなんですね。う~ん。不思議です。女性に向けて書く書き方と、男性に向けて書く書き方と違うんですね」と佐野元春。

・かつて少年少女だった佐野元春のリスナーに向けての曲もあるんですよね?
「もちろんある。だから男性に歌いたい時には、もちろん時を経て来ている、お互いにいろいろと経験を積んで来ているから、まぁ、こういう思いもある。でもお互いオヤジになっちゃったわけじゃないだろっていう部分もあって、僕たちの男性の魂の中にあるね、ある種の少年性とか、あるいは十代二十代多感な頃に一瞬"これは真実かもしれない"と掴んだ要素とかね、エッセンスとか。そうしたものをやっぱり僕たちの身体の中にきちんとキープしておこう、というようなメッセージを僕は歌いたいですね。ロック曲の中ではね。だからいつまでも、ちょっと誤解されてはいけないけれども、どんな大人の男に対して歌うのでも"いつまでもスウィングし続けるんだぜ、俺たちは"っていうそんな感じかな。でも女の人にはそう言えないです」と佐野元春。

・今日のリクエストは何ですか?
「そうですね。デヴィッド・ボウイの曲で正にそんなことを歌っている曲があるんですよ。リスナーの人たちに聴いてもらいたい曲は『Boys Keep Swinging 』」と佐野元春。

・ニュー・アルバム
「今ちょうど新作のレコーディングがはじまったばかりで、ここ数日間レコーディング・スタジオに籠もっていたので、こうして赤坂さんと会って音楽の話ができるというのは、なんだかすごく楽しかった」
「今回の新しいアルバムは、いつも一緒にやってるザ・ホーボーキングバンドというベテランのミュージシャンではなく、十歳くらい世代が若い、新しい世代のミュージシャンと一緒に作ってるんです。ですので出来上がりが僕自身も楽しみですね」
「目標は来年の春ぐらいにリリースできたらいいなと思っている」と佐野元春。

・EPIC ARCHIVESの今後
「'80年代'90年代、レーベルに残してきた音・映像いろいろとありますので、新世代に向けて"佐野元春はこんなことをやってきたんだよ"、それをわかりやすい形でパッケージにして出せていけたらと思っています」と佐野元春。

・音楽の神様が「何か賞を渡します」としたら何賞を貰いたいですか?
「う~ん...そうだな、僕、神様のために歌っているわけじゃないからねぇ。ファンのために歌ってるから、ファンから褒められるとうれしいけれども、神様から褒められても大してうれしくないなぁ。う~ん...う~ん...」
「これはホントに究極の問いだね。答えられないね。また十年後にここに来て、その時に答えられるようにしときます」と佐野元春。
コメント (2)
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