shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ベンチャーズ・カヴァー特集⑥「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」

2014-10-14 | エレキ・インスト
①加山雄三&ハイパーランチャーズ
 ベンチャーズの「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」(原題:「Ten Seconds To Heaven」)はめちゃくちゃカッコイイ曲なのになぜかカヴァー・ヴァージョンは数えるほどしか存在しない。手持ちの盤を調べてみても、井上宗孝とシャープ・ファイブやザ・スペイスメンといった60年代の日本のエレキ・エンスト・バンドがリアルタイムで取り上げているぐらいで、海外のエレキ・インスト・バンドによるカヴァーは1枚もないというお寒い状況だ。ひょっとするとベンチャーズのヴァージョンがあまりにも素晴らしすぎておいそれと手が出せないのかもしれない。そんな数少ないこの曲のエレキ・インスト・カヴァーの中で私が最も気に入っているのが加山雄三&ハイパーランチャーズのヴァージョンで、ヘタな小細工をせずに真っ向勝負でストレートにカヴァーしているところがいい(^.^)  一音一音にベンチャーズへの愛とリスペクトが感じられるのだ。還暦を過ぎてなおこれだけのプレイを聴かせる加山雄三こそ “永遠のギターキッズ” の名に相応しいと思う。
パラダイス・ア・ゴー・ゴー


②Caterina Valente
 「Ten Seconds To Heaven」のオリジナルは1953年のブロードウェイ・ミュージカル「キスメット」の挿入歌「ストレンジャー・イン・パラダイス」で、トニー・ベネットのヴォーカルで全米2位の大ヒットになり、めでたくスタンダード・ナンバーの仲間入りを果たしたとのこと。私が好きなヴォーカル・ヴァージョンはカテリーナ・ヴァレンテのもので、ウェルナー・ミューラー編曲指揮のオーケストラをバックに持ち前の伸びやかな歌声を聴かせてくれる。彼女は数か国語を駆使して世界中の歌をオリジナル言語で歌ったことから “歌う通訳” などと呼ばれているが、その最大の魅力は大排気量のアメ車を想わせるようなパワフルなヴォーカルに尽きるのではないか。この曲はクラシックの有名曲を歌った「クラシックス・ウィズ・ア・チェイサー」というアルバムに収録されているが、スタンダード・ソングを集めたCD「スーパーフォニックス」のボートラにも入っているので、女性ヴォーカル・ファンにとってはそっちの方が断然お買い得だ。
Stranger In Paradise (Caterina Valente)


③ Johnny Smith
 「ストレンジャー・イン・パラダイス」はヴォーカルだけでなくティナ・ブルックスやバリー・ハリス、ケニー・ドリューといったインストのミュージシャン達も取り上げているが、そんな中で私が一番気に入っているのがまたまた出ましたジョニー・スミス。この曲はブルーのジャケットが美しい10インチ盤「イン・ア・メロウ・ムード」に入っており、初めて聴いた時は「ウォーク・ドント・ラン」のこともあったので “ひょっとして「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」もジョニー・スミスがオリジナルなんか???” と思ったが、曲名を見ると「ストレンジャー・イン・パラダイス」となっており、色々調べてベンチャーズの方がこのスタンダード・ソングをロック・アレンジしたのだと知った次第。ドン・ラモンドの瀟洒なブラッシュに乗って軽快にスイングするジョニー・スミスが素晴らしい。
Johnny Smith Quartet - Stranger in Paradise


④Natasha Morozova
 私はジョニー・スミス盤を聴いて以来 “「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」の原曲はスタンダードの「ストレンジャー・イン・パラダイス」” だと信じて生きてきたのだが、何と「ストレンジャー・イン・パラダイス」には更なる元ネタがあった。それがロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディンが作った「ダッタン人の踊り」(原題「Polovetsian Dances」)という曲で、何でも「イーゴリ公」という有名なオペラの一節らしい。YouTubeで検索してみると合唱やら管弦楽やら色んなのがゾロゾロと出てきたのだが、どれもこれも眠たくなるような代物で辟易し、見るのやめよーかなーと思い始めていたところで偶然見つけたのがこのナターシャ・モロゾワという人。名前からしてロシア人らしいということ以外は何も分からないが、オペラ臭さを微塵も感じさせないエキゾチックなムード横溢の妖しげなヴォーカルが気に入った。どうやらCDは出ておらずDL販売のみのようだが、たまたまアマゾンの無料クーポンがあったので、彼女の「ロシアン・エニグマ」からこの「ポロヴェツィアン・ダンシズ」(英題:「Fly Away On The Wings Of The Wind」)をダウンロード。何度も聴いているうちに彼女の歌声にハマってしまう中毒性をはらんだヴォーカルだ。あぁおそロシア...
Polovtsian Dances -Borodin - Prince Igor - Natasha Morozova -"Russian Enigma"


⑤Ventures
 まるでベンチャーズのために書かれたような、エレキ・インストの魅力全開のこの曲を初めて聴いた時、私は「ウォーク・ドント・ラン」や「10番街の殺人」の時と同じくベンチャーズのオリジナルだと信じて疑わなかった。その後、スタンダードの「ストレンジャー・イン・パラダイス」をロックにアレンジしたものだと知ってビックリしたのだが、同時に長いこと不思議に思っていた邦題の謎が解けたような気がした。つまり東芝の担当者が元歌の「ストレンジャー・イン・パラダイス」から「パラダイス」を拝借し、そこに当時流行していた「ゴー・ゴー」をくっ付けて「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」になったのではないか。もしそうなら実に安直な発想から生まれた邦題なワケだが、原題をそのままカタカナ表記にして「テン・セカンズ・トゥ・ヘヴン」とやるよりもずっといい。何よりも言葉の響きがカッコイイではないか(^o^)丿 やはり洋楽の邦題はこうでなくてはいけない。
 演奏の方はもう文句の付けようのない素晴らしさで、ベンチャーズ史上屈指の大名演と言い切ってしまおう。イントロのマラカスにリバーブを深くかけたドン・ウィルソンのリフが絡んでいくところなんかもうゾクゾクしてくるし、ノーキーのリード・ギターに影のように寄り添うエレピも実に効果的。メルとボブのコンビが生み出すタイトなリズムも完璧だ。余談だが、この曲がなかったら「ウルトラQ」のあの有名なテーマ曲は生まれなかったんじゃないか... と考えてるのは私だけかな? 尚、この曲は65年にシングル・カットされているがオリジナル・アルバムには未収録で、67年にリバティ・レコーズ・クラブから通販のみで発売されたアルバム「The Versatile Ventures」にのみ収録されているのでアナログ・ファンは要注意だ。
ザ・ヴェンチャーズ - パラダイス・ア・ゴー・ゴー
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