shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

アイルランドに平和を & メアリーの小羊 / ポール・マッカートニー

2013-05-21 | Paul McCartney
 ポール・マッカートニーは “アルバムとシングルは別物” と考えているフシがあり、特に70年代の作品には “シングル曲でありながらアルバム未収録のために不遇を嘆いている名曲” も少なくない。ということで今日からしばらく “70'sポールの隠れ名曲” 特集をやりたいと思う。まずはA面編パート1として1972年リリースの2枚のシングルからいってみたい。

①Give Ireland Back To The Irish
 1972年にリリースされたこの「アイルランドに平和を」はウイングスにとっての記念すべきデビュー・シングルであるにもかかわらず、その過激な歌詞のせいでBBCを始めとするイギリスの電波媒体から放送禁止を食らい、その後のベスト盤からもことごとく外される憂き目にあってきたが(←「ウイングスパン」のUK盤に収録予定だったが結局ボツになっとった...)、中学生の頃なけなしの小遣いを叩いてポールのシングル盤を1枚また1枚と買っていた私にとっては盤が擦り切れるくらい聴いた思い出の1曲だ。
 1972年1月30日に北アイルランドのデリーでカトリック教徒のデモ隊に向かってイギリス軍のパラシュート部隊が発砲して一般市民13人が虐殺された “血の日曜日事件” に激怒したポール(←マッカートニーのMcはアイルランド系のしるし)が事件のあった日の夜から翌日にかけてこの曲を一気に書き上げ、翌2月1日のスタジオを押さえて1日でレコーディングしたという。同じアイルランド系のジョンもこの事件を題材にして「ザ・ラック・オブ・ジ・アイリッシュ」や「サンデー・ブラッディ・サンデー」(←U2にも同じタイトルの曲がありましたね...)を書いていることもあって、政治に無関心な私もさすがにこの事件だけは結構詳しく調べたものだ。
 曲調はミディアム・テンポのロックンロールで、当時のウイングスらしい荒削りでタイトなバンド・サウンドが楽しめる。中でも新加入のヘンリー・マッカロック(←この人はコテコテのアイルランド人!)の切っ先鋭いリード・ギターは実にスリリングで、イントロからハイ・テンションなプレイを連発しているし、ポールのヴォーカルも最初はおとなし目だが徐々に盛り上げて行って後半はシャウトを連発する “本気モード” に突入、特に “should he lie down, do nothin', should he give in, or go mad?(何もせずに堪え忍び屈服しろということか、それとも狂ってしまえというのか!)” とたたみかけるあたりの高揚感はハンパない。ポールの気持ちがストレートに伝わってくる “熱い” ヴォーカルだ。
 しかもそんな過激なメッセージ・ソングにあっても、絶妙なタイミングで挿入されるハンド・クラッピングや幾重にも重ねられたリズム・ギターなど、随所にポールらしいアレンジが施されており、私としてはこの曲はもっと評価されて然るべき佳作だと思う。
 因みにシングルB面には同曲のインスト・ヴァージョンが収められているのだが、これは単にA面からヴォーカルを抜いただけのカラオケではなく全くの別録音で、ヘンリーのハードボイルドなギターの代わりにノーテンキなリコーダーを大きくフィーチャーした脱力系サウンドになっているところが面白い。A面の歌入りヴァージョンはCD「ワイルド・ライフ」のボートラでのみ入手可能だが、B面のインスト・ヴァージョンはそのボートラにすら収録されておらず、アナログ・シングル盤でしか聴けない。いや、今の時代なら YouTube で手軽に聴けるか...(笑)
Sir Paul McCartney & Wings - Give Ireland Back To The Irish [New Master Exp.] [HD]

Give Ireland Back To the Irish (Version) - Wings


②Mary Had A Little Lamb
 上記の「アイルランドに平和を」に続くウイングスのセカンド・シングルがこの「メアリーの小羊」だ。政治的に超過激な歌詞で放送禁止を食らった「アイルランド...」の次がこのほのぼのムードの童謡調「メアリー...」で、更に次が卑猥な歌詞で再び放送禁止を食らうロックンロール「ハイ・ハイ・ハイ」と、まさにやりたい放題なポールがたまらなくカッコイイ(^o^)丿
 それにしてもこの「メアリー...」、一体どういう風の吹き回しなのだろうか? 「アイルランド...」への批判をかわすためとか、逆に批判した連中への当てつけとか、世間では色んな説があるようだが、ひょっとするとリンダとの間に出来た初めての子供メアリーが可愛くて可愛くて、そんな愛娘のために曲を書いてシングルで出したかっただけなのかもしれない。その証拠に、リンダを始めヘザーやメアリーまでバック・コーラスに参加して “ラ~ラッ、ラ~ラッ、ラ~ララ、ララ~ラ~♪” と家族みんなで楽しそうに歌っているではないか。因みにポールはこの曲を “人々を幸福にさせる春の歌” だと言っており、ザ・フーのピート・タウンゼンドも娘にせがまれてこのシングルを買ったという(笑)
 歌詞は取り立ててどうということのない童謡そのものだが、曲はいかにもポールらしい親しみやすいメロディーを持った子守唄風のスローなカリプソで、私は初めて聴いた時からこの曲が大好き(^.^)  ギスギスした日常の中で鬱陶しいことがあっても、この曲を聴いたらアレコレ悩むのがアホらしくなってきて、何かめっちゃ癒されるのだ。バリバリのロックンロールから夢見るような美しいバラッド、そしてこんなほのぼのムードの童謡まで作れてしまうポールの音楽家としての懐の深さは凄いの一言。やっぱりポールは天才やね!
 この曲のプロモ・ビデオは3種類ほど存在するのだが、私はウイングスの面々が納屋の中で動物たちに囲まれて歌い演奏するヴァージョンが一番気に入っている。いかにも動物好きのポール&リンダ夫妻らしいビデオなのだが、これに付き合わされるウイングスのメンバーがちょっと気の毒な気も...(笑)  ピアノに張り付くバッタ軍団も面白かったが、ピアノの上に乗っかったニワトリに向かって歌うポールというのも笑わしてくれる。最近 YouTube で見つけたレアなロング・ヴァージョンも一緒に貼っときますのでマッタリと愉しんでくださいな。
Paul McCartney and The Wings - Mary Had A Little Lamb-Official Video

Wings-Mary Had A Little Lamb-RARE LONG VERSION!

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4 コメント

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Unknown (みながわ)
2013-05-22 08:25:58
ポール特集のってきましたね。
ポールのシングル盤で未CD化はほんとファン泣かせです、
既存オリジナル盤のボートラもすでにオリジナル盤をもっている人にはいい迷惑で、
シングルコレクションみたいな盤を出してくれたほうがありがたいと思っています、
以上愚痴でした。
アイルランドもメアリーもアナログシングルもってますよ。
メアリーのロングバージョンは始めて聞きました、こんなのがあったとは。
Good Night Tonightのロングバージョンなら持ってます(12インチ)。
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自家製「コンプリート・シングル・コレクション」 (shiotch7)
2013-05-22 17:01:46
みながわさん、こんにちは。
ポールに関しては日本盤LP→CD→UKオリジナル盤→アーカイヴ・コレクションと、
同じタイトルを何種類も買ってきましたが(笑)
私の出発点はやっぱり中学時代にコツコツと買い集めたシングル盤なんです。
だから今回のポール前夜祭企画で思いついたシングル盤特集は
私にとって原点に帰るようなモンですね。

「シングル・コレクション」の件は激しく同意です。
「ウイングス・グレイテスト」にしても「オール・ザ・ベスト」にしても「ウイングスパン」にしても
選曲が何か中途半端な気がします。
もっともポールの場合、ヒット曲が多すぎるからしゃあないのかもしれませんけど。
やっぱり自分で作るしかないか...

メアリーのロング・ヴァージョンはめっけもんでした。
グッドナイトは近いうちにやると思います。
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ダン!Mary had a little lamb (蟷螂の斧)
2015-05-23 19:38:39
ピアノの音。一つだけ。それがイントロ。
そしてポールのヴォーカル。いいですね。まさに牧歌的。メロディもきれいです。「♪ラーラ」と言うコーラスもいい。エンディングも爽やかです。『ジェームス・ポール・マッカートニー・ショー』のラストで歌っていた記憶もあります。
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Smple is best (shiotch7)
2015-05-24 22:09:07
蟷螂の斧さん、
この曲は一緒に歌えるシンプルなメロディーが良いですね。
この “わかりやすさ” こそマッカートニー・ミュージックの真骨頂。
発表当時の不評が信じられません。
「ジェームズ・ポール・マッカートニー」は見所満載ですね。

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