shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Wings Over Europe / Paul McCartney & Wings

2018-12-25 | Paul McCartney
 先週ハイレゾ音源で手に入れた「Wings 1971-73」はCD7枚分のヴォリュームがあり、それぞれ聴き応え十分の内容だったが、中でも断トツに気に入ったのは未発表ライヴ音源集の「Wings Over Europe」だ。この数日間は両国と名古屋のライヴをも凌ぐヘビロテぶりで、家でも車でもこのウイングス・ライヴばかり聴いている。
 トラックリストには1972年に行われたUKツアーとヨーロッパ・ツアーのうち、 ニューカッスル(イギリス)、フローニンゲン(オランダ... 綴りは“グロ人間”...笑)、ハーグ(オランダ)、アントワープ(ベルギー)、ベルリン(ドイツ)の5公演から計20曲が選ばれている。内訳は1stソロの「マッカートニー」から1曲、「ラム」から2曲、「ワイルド・ライフ」から4曲、「レッソ・ローズ・スピードウェイ」から2曲、アルバム未収録のシングル盤から4曲、カヴァーが2曲、そして未発表曲が5曲という構成だ。
 このアルバムの第1印象は、ウイングスの演奏がかなりアグレッシヴにガンガンくるなぁというもので、スタジオ録音のアルバムやシングルではキレイキレイに纏まりすぎな部分も随所に見られたが、ここでは “ライヴ・バンド” としてのノリを重視したグルーヴィーな演奏が展開されている。
 大急ぎで作ったと言われる「ワイルド・ライフ」収録の「マンボ」なんか演奏の重心を下げてハードボイルドに迫ってくるし、“歌詞にちょっと問題アリってことでイギリスでは放送禁止を喰らったけど、ここ(オランダ)じゃ大丈夫だよね。”というポールのMCで始まる「アイルランドに平和を」なんかもスタジオ録音のシングル盤よりもロック魂溢れるこっちの演奏の方が断然カッコいい。「マイ・ラヴ」のような激甘バラッドですらそうなのだからコレはもうたまらんですわ(^o^)丿
Paul McCartney & Wings - Mumbo (Live In Antwerp 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - Give Ireland Back To The Irish (Live In Groningen 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - My Love (Live In Hague 1972) (2018 Remaster)


 そしてそんな “アグレッシヴさ” に拍車をかけているのが、こちらの予想を遥かに超えた“音の良さ” だ。この時期のポールのライヴ音源はブートの劣悪な音が先入観として私の脳内に刷り込まれているせいもあるが、それにしてもこの音は凄い。私にとってのポールのライヴはどうしてもリアルタイムで聴いた「Wings Over America」の “あのホワーッと広がるユル~い音” が基準になってしまうので、その対極に位置するような “オンで生々しい音” がスピーカーから飛び出してきた時は腰を抜かしそうになった。特にドラムの音が3次元的に屹立しており、それが演奏に更なる推進力を与えているように聞こえるのだ。
 これまで色んなライヴ盤で耳にしてきた名曲「メイビー・アイム・アメイズド」だが、このヴァージョンで聴けるポールの伸びやかな歌声の瑞々しさにはマジで心が震えるほど感動するし、「メアリーの子羊」のようなメルヘンチックな童謡ですらデニー・シーウェルのへヴィーでダイナミックなドラミングによって十分傾聴に値するナンバーとなっている。とにかく良い音で聴けば演奏がもっともっと良く聞こえるというお手本のようなサウンドだ。
Paul McCartney & Wings - Maybe I'm Amazed (Live In Groningen 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - Mary Had A Little Lamb (Live In Hague 1972) (2018 Remaster)


 同じことは「ラム」収録の2曲にも言える。特に「イート・アット・ホーム」なんかアルバムに入っているスタジオ録音ヴァージョンはポール流 “ポップンロール” の典型であり、そのせいで頭の固いロック評論家連中からボロクソに叩かれたのだが、1分近いギター・ソロで始まるこのライヴ・ヴァージョンを聴けばその圧倒的なグルーヴに参りましたと平伏すだろう。「スマイル・アウェイ」もライヴでバリバリのロックンロールに仕上がっているが、スタジオ録音盤で目立ちまくっていたリンダのバック・コーラスが控えめになってしまうのだけが残念(>_<) リンダの大ファン(←大名盤「ラム」への彼女の貢献は計り知れない...)を自負する私としては痛し痒しというか、贅沢な悩みではある(笑)
Paul McCartney & Wings - Eat At Home (Live In Hague 1972) (2018 Remaster)


 もう一つ面白かったのはこの時期ならではのテンポ設定によるアレンジの違いが楽しめることで、後に「Wings Over America」でイケイケの超高速アッパー・チューンとしてアンコールを盛り上げることになる「ソイリー」や「ハイ・ハイ・ハイ」が、ここではテンポを落として演奏されているのに注目。特に後者は T.Rex を彷彿とさせるブギウギ調で演奏されていて実に面白い。「コールド・カッツ」にも入っていたブギーな「ベスト・フレンド」も同様だ。
Paul McCartney & Wings - Soily (Live In Berlin 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - Hi Hi Hi (Live In Hague 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - Best Friend (Live In Antwerp 1972) (2018 Remaster)


 それと、アレンジ違いというほどではないが、同じライヴ・ヴァージョンでも公式盤(←シングル「マイ・ラヴ」のB面)とは違うテイクが楽しめる「ザ・メス」も超オススメ。そしてビートルズ時代を彷彿とさせる「ロング・トール・サリー」の超絶シャウトには言葉を失うこと間違いなし。とにかく熱いのだ。ロックなウイングスのロックなライヴ... 何でこんな素晴らしいライヴ盤を単体でリリースしないのか不思議でならない。すべてのポール・ファン必聴と言えるこのライヴ・アルバムをごく少数のマニアしか楽しめないというのは実に勿体ないことだと思う。幸いなことにYouTubeにほぼ全曲アップされているので、ファンは消される前に速攻でチェックしましょう(^.^)
Paul McCartney & Wings - The Mess (Live In Berlin 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - Long Tall Sally (Live In Groningen 1972) (2018 Remaster)

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