shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Blame It On The Bossa Nova / Eydie Gorme

2009-04-05 | Jazz Vocal
 日本人はマイナー調のメロディーが好きだとよく言われる。昔ながらの歌謡曲はもちろんのこと、かつて一世を風靡した「ランバダ」や“泣きのジャズ“の定番「レフト・アローン」を例に挙げるまでもなく、哀愁を帯びた旋律は日本人の心の琴線を震わせやすい。
 80年代中頃にたばこのCMソングとしてイーディー・ゴーメの③「ザ・ギフト」という曲がお茶の間に流れていたことがある。原題を「リカード・ボサ・ノヴァ」といって、ジャズ・ファンの間ではハンク・モブレイの名演で有名なこの曲、哀愁のメロディーとラテンのリズムが見事にハマッた“いかにも日本人好みのする”洒落たボサ・ノヴァで、イーディ・ゴーメという名前を知らなくてもこの曲を聴けば「あぁ、何かどっかで聴いたことあるなぁ...」と思い出す人が多いかもしれない。私もそんな1人で、そのCMが流れていた当時はマドンナやマイケル・ジャクソンといったいわゆる80'sポップス一筋の生活を送っていたため、ボサ・ノヴァもクソもなかった(笑)のだが、それから約10年経ち、女性ヴォーカルに開眼して色々聴き漁っていた頃たまたまこの「ブレイム・イット・オン・ザ・ボサ・ノヴァ」というアルバムをレコード屋で聴かせてもらい、この曲との再会を果たした。マイナー調のメロディーが大好きな私は「うわぁ~、めっちゃ懐かしい感じのするこのメロディー... たまらんなぁ(≧▽≦)」ということで即購入。厚化粧のオバQみたいなジャケットが玉にキズだが、中身の方は文句の付けようがないくらい素晴らしい。
 ゴーメはデビュー直後の1950年代後半のABCパラマウント時代が声に張りと艶があり彼女の旬だと言われる。確かにその通りだけれど、親しみやすいメロディーを持った名曲の数々を軽快なラテンのリズムに乗って伸びのある歌声でハツラツと歌うこのコロムビア盤の方が遥かに聞きやすいと思う。つまりゴーメとしてはベストではないかもしれないが、聴く方にとってはベストのゴーメだということだ。ましてやこのアルバムが録音されたのはボサ・ノヴァが文字通り“新しい波”として世界的にブームになりつつあった1963年だから、あらゆる条件がプラスに作用し大ヒット(全米アルバム・チャートで22位まで上がった!)したのも頷ける。
 個々の曲に関して言うと、スイートで可愛らしい②「メロディー・ダモール」やエキゾチックな雰囲気横溢の⑤「ダンセロ」、リラクセイション感覚溢れる本格的ボッサ⑦「ディサフィナード」なんか癒し効果抜群だし、エルジー・ビアンキの名唱で有名な④「ザ・スウィーテスト・サウンズ」は哀愁舞い散るメロディーと乾いたボサ・ノヴァがベストのマッチングを聴かせてくれるキラー・チューンだ。アルバム・タイトル曲⑥「ブレイム・イット・オン・ザ・ボサ・ノヴァ(恋はボサ・ノヴァ)」は何とあのバリー・マン&シンシア・ウェルという超強力コンビの作品で、そのせいかポピュラー歌手であるゴーメが全米シングル・チャート7位にまで上がるという快挙を達成、ポップス・ファンにまでその名を知られるようになった記念すべき大ヒット曲だ。私の愛聴曲⑨「オールモスト・ライク・ビーイング・イン・ラヴ」や超有名曲⑩「ムーン・リヴァー」、どちらも他に類を見ないアップ・テンポのボッサ・アレンジで賛否両論あるだろうが、私はめっちゃ気に入っている。マンデル・ロウの軽快なギターが絶品だ。とにかく全12曲、実に聞きやすい歌と演奏のオンパレードで「ザ・ギフト」以外にも聴き所が満載の、“アルバム1枚通して捨て曲なし”といえる名盤だと思う。

Eydie Gorme The Gift!(Recado Bossa Nova)

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