shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【BN祭り⑤】Moanin' / Art Blakey & The Jazz Messengers

2023-08-28 | Jazz
 ほんの思いつきで始めた “真夏のブルーノート祭り” もいよいよ最終回。最後を飾るのは全ブルーノート、いや、全ジャズ・アルバムの中で五指に入るくらい大好きな「Moanin'」だ。
 私は中学に入って本格的に音楽を聴き始めてから20年以上ずーっとロック/ポップス一筋で生きてきて30代後半で初めてジャズに開眼したのだが、その段階で既に知っていたジャズ・ナンバーはわずか3曲だった。デイブ・ブルーベックの「Take Five」、カーティス・フラーの「Five Spot After Dark」、そしてアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズの「Moanin'」である。これらは3曲とも90年代初め頃にテレビCMソングとして頻繁に耳にする機会があったので多分そのせいだろうと思うが、ガンズやデフレパ、シンデレラにボンジョヴィといった80'sメタル中心に音楽を聴いていた当時の私にとってもこれら3曲はメロディーも演奏も十分に親しみやすく、ジャズという未知のジャンルの音楽を何の違和感もなく楽しめたのだった。
 グランジ/オルタナ・ロックが主流になった90年代の洋楽にウンザリし、それまで10年以上毎週欠かさず聴いてきた全米チャート番組を聴くのもやめて何かエエ音楽はないかいなぁと探していた私は渡りに舟とばかりにジャズに飛びついた。しかし当時のジャズ界には小難しくて無味乾燥な楽曲を “オリジナリティーがあって興味深い” などと言って持ち上げる傾向があり(←アホやろ...)、CMに使われるような “わかりやすい” ジャズはどちらかというと蔑視されるような風潮があった。私は他人が何と言おうと自分の感性を信じて音楽を聴くので、好きな曲を聴かれるたびに敢えて上記の3曲を挙げて周りを挑発していた(笑)のだが、中でも特に白い眼で見られていたのが「Moanin'」だった。
 この曲がリリースされた当時のエピソードとして “ソバ屋の出前持ちが口笛で吹いた” というのがあるが、流行りの歌謡曲ならともかく、ド・マイナーなジャンルであるジャズでそこまで一般ピープルに浸透するっていうのは実はものすごいことではないのか? 私は口笛で吹けたり鼻歌で歌えたりするメロディーこそ最高の音楽だと信じているのでこのエピソードには大いに納得したものだし、今でもこの考えは1ミリたりとも揺るがない。
 それにしてもこの「Moanin'」という曲の吸引力はハンパない。ゴスペルからの影響を強く感じさせるコール&レスポンス(→要するに “掛け合い” ですね)の気持ち良さが抜群の効果を発揮、伝説となったクラブ・サンジェルマンでのライヴではこの曲を書いたボビー・ティモンズの、まるで酔っ払った牧師が弾いているかのような粘っこいピアノに感極まった女性(→最前列で聴いていたピアニストのヘイゼル・スコットさん)が “Oh Lord, have mercy!” と叫んで失神したという有名なエピソードがあるくらい強烈なグルーヴを生み出すキラー・チューンなのだ。因みにこの「モーニン」とは morningの「朝」ではなく「苦しみ呻くこと(moanin')」という意味です、念のため。
Moanin' (Remastered 1998/Rudy Van Gelder Edition)


 このアルバムが凄いのはこのA①「Moanin'」以外の曲もすべてエネルギーに満ち、キャッチーでなおかつ強烈なグルーヴを感じさせるナンバーが並んでいることだ。中でもA①と並ぶメッセンジャーズの代表曲と言えるB②「Blues March」の破壊力は凄まじく、頭でアレコレ考えるより先に思わず身体が揺れてしまうあのえげつないグルーヴは理屈抜きに快感そのものだ。話はちょっと逸れるが、初めてこの曲のイントロを聴いた時にすぐ「ゲバゲバ90分のテーマ」の間奏ドラム・ソロが思い浮かんでアッと驚くタメゴローだったのだが、あれは同じマーチということで宮川泰さんが思いついた遊び心なのだろうか? それと、ベニー・ゴルソン作のA②「Are You Real」やA③「Along Came Betty」もこのアルバムの “汗が飛び散るファンキー・ジャズ” というコンセプトにピッタリのパワフルなナンバーだ。
Blues March (Remastered)


 とまぁこのように大好きなアルバムなので、「Sonny Rollins Vol. 2」の時と同様にオリジナル1st プレス盤、“NEW YORK USA” 表記 60's プレス盤(ただしこっちは耳マークあり)、Classic Records 復刻盤の3種類のレコードを持っている。音の傾向はロリンズ盤のケースとほぼ同じだが、手持ちの 60's プレス盤は耳マークのご利益か(笑)音のスケール感が比較的大きく感じられる。点数化すると、1st プレス盤が100点満点で Classic Records 復刻盤が95点というのは変わらないが、耳あり 60's プレス盤にも同じ95点をあげてもいいぐらい良い音がしている。やっぱりブルーノートのレコードは RVG刻印と Plastylite(プラスタイライト)社プレスを示す耳マーク(本当は Pマーク)入りの盤に限りますな...
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