shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Sports / Huey Lewis And The News

2009-03-10 | Rock & Pops (80's)
 ポップスの世界において70年代というのはある意味大物アーティストが君臨した時代で、ポール・マッカートニー&ウイングス、ローリング・ストーンズ、スティーヴィ-・ワンダー、エルトン・ジョン、イーグルスといったビッグ・ネームたちがチャートを支配していたような印象が強かった。70年代末にイギリスで起こったパンク/ニュー・ウェイヴの波は音楽的に実を結んだとは言い難いが、ポリスやプリテンダースといったバンドの台頭が来るべき80年代に向けて新しい風を感じさせてくれた。それは無名の新人バンドでも曲さえ良けりゃヒットするという、ある意味下克上的な様相を呈していた。
 そんな70年代も終わり、明らかにそれまでとは違う明るくてノリの良いポップスがまるで雨後のタケノコのようにチャートに顔を出し始めた82年の春頃、ラジオからヒューイ・ルイス&ザ・ニューズというバンドの「ドゥー・ユー・ビリーヴ・イン・ラヴ」というキャッチーな曲が流れてきた。タイトにカッチリと引き締まったサウンドに絡む爽やかなコーラス・ハーモニーが実に魅力的なその曲は、ちょうど暖かくなってきてアウトドアのお出かけが増えてくるこの季節にピッタリで、まるでオープンカーで海岸通りを初夏の風を受けながら流しているかのような爽快な気分にしてくれた。サンフランシスコのバンドかぁ... ロックンロールのバンドでこんなに爽やかなコーラス・ワークが聴けるなんて貴重な存在やし、これから先が楽しみやなぁと思い、早速目をつけた。
 そして83年の秋、待望のニュー・アルバムがリリース、タイトルは「スポーツ」....(>_<) はぁ?長年音楽を聴いてきたが「スポーツ」なんてタイトルつけるバンド、他には考えられない(笑) 無骨というかアメリカ的なおおらかさというか、実にユニークな連中だ。中身の方はというと、①「ハート・オブ・ロックンロール」の歌詞に「モダン・ミュージックには色んなスタイルがあるけれど、僕をワイルドにさせるのはあのおなじみのバック・ビートのリズム... ロックンロールなんだ」とあるように、出てくる音すべてに熱いロックンロールの鼓動が脈打っているのだ。その①ではよく弾んで気持ちのいいリズム感バツグンのロックンロールをバッチリ軽快にキメてくれる。高音部でちょっとハスキーにしわがれるヒューイ・ルイスの声が超渋い。②「ハート・アンド・ソウル」はパッと聞きには地味だが何度も聞くうちに良さがじわーっと伝わってくる渋い曲で、この曲をファースト・シングルに切った彼らも凄いがそれをヒット・チャートの8位に迎え入れたアメリカという国も凄い。それに比べてセカンド・シングルになった④「アイ・ウォント・ア・ニュー・ドラッグ」はキャッチーでゴキゲンなノリノリのナンバーで、このリズミカルな演奏を聴いて身体が思わず揺れなければもうロックンロールには無縁な人だと言い切ってしまいたいぐらい素晴らしい。そのファンキーなノリは思わず「ゴースト・バスターズ!」って叫びたくなるほどだ(笑)
 タネも仕掛けも無いストレートなロックンロール⑤「ウォーキング・オン・ア・シン・ライン」、ゴムマリのように弾力性のあるリズムが快感を呼ぶ⑥「ファイナリー・ファウンド・ア・ホーム」、爽やかなコーラス・ハーモニーの妙が存分に楽しめる⑦「イフ・ジス・イズ・イット」とシンプルで味のある曲の波状攻撃。ハンク・ウイリアムズのカントリー・ナンバー⑨「ホンキー・トンク・ブルース」を高速化してごきげんなロックンロールにしてしまうあたり、まさにこのバンドの真骨頂だろう。生き生きして躍動感に溢れるタイトなロックンロールが満載の、80年代ポップス名盤だ。

Huey Lewis and The News - I Want A New Drug

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