shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

In The Court Of The Crimson King / King Crimson

2009-01-11 | Rock & Pops (70's)
 プログレッシヴ・ロックの雄キング・クリムゾンは音楽シーンが混沌としてきた1969年にデビューした。プログレッシヴ・ロックとは「進歩的なロック」、つまり「考えるロック」である。例えて言うならエルヴィス・プレスリーからビートルズへと受け継がれてきたいわゆる「ロックンロール」から「ロール」の部分、つまり聴いてて思わず身体が揺れるような「理屈抜きの楽しさ」を取り去ったもの、と考えれば分かりやすいかもしれない。そういった音楽本来のノリとかスイング感から離れた所でいかにロックが可能なのかを追求し続けたのが通称「プログレ」と呼ばれるロックなのだ。
 彼らのデビュー・アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」は衝撃的だった。とにかく1度見たら忘れられないようなエグいジャケットで、口を大きく開けて恐怖におののいたような凄い形相の男の赤い顔がどアップでリアルに描かれており、それはもう強烈すぎるほどのインパクトがあった。中身の方もジャケットに負けず劣らず凄まじい。A面1曲目のタイトルからして①「21世紀の精神異常者」である。先鋭的でアグレッシヴなイントロに導かれ、ディストーションをかけて歪ませたヴォーカルが狂気に満ちた攻撃的なフレーズを連射、フリーキー・トーンをまき散らすギターが暴れまわり、アヴァンギャルドな咆哮を上げるサックスとのユニゾン・フレーズをビシッとキメ、手数の多いドラミングが生み出す複雑極まりないリズムが更に興奮を煽るという、それまでのポピュラー・ミュージックにはとてもあり得ないサウンド展開だった。精神異常者の世界を音で表現したかのようなその破壊的で壮絶なプレイは実にスリリングで、7分21秒を異常なくらいのハイ・テンションで一気に駆け抜ける。抽象的で難解な歌詞は今まさに混沌の真っ只中にある21世紀の現代社会を40年前に予見していたかのようだ。キング・クリムゾン恐るべしである。
 心が安らぎ癒されるような②「風に語りて」(1曲目とのこの落差は何なん?)に続くのが有名な③「エピタフ」で、歌詞にある「混乱こそ我が墓碑銘」というのがクリムゾンがこのアルバムに込めたメッセージ。メロトロンが生み出すその重厚なサウンドは混沌としたロックという音楽へのレクイエムのように響く。静謐な④「ムーンチャイルド」は12分を越す長い曲で、前半部分は胸をしめつけるような切ないメロディーに涙ちょちょぎれるのだが、2分25秒以降は難解すぎて私にはさっぱりワケが分からない。いつもこの悪趣味な前衛ごっこみたいな部分だけは飛ばして聴いている。ラストを飾るアルバム・タイトル曲⑤「クリムゾン・キングの宮殿」は壮大なスケールを持ったダイナミックな曲で、メロトロンを駆使した温かみのあるサウンドの洪水の中から聞こえてくるグレッグ・レイクの説得力溢れるヴォーカルが心の琴線を震わせまくる。狂気に満ちた①の対極にあるような幻想的で荘厳な⑤で大団円を迎えるこのアルバム、高度なテクニックでシュールな世界を見事に描き切った、プログレッシヴ・ロックの金字塔といえる1枚だ。

King Crimson - 21st Century Schizoid Man

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