shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

涙のかわくまで / 西田佐知子

2011-08-17 | 昭和歌謡・シングル盤
 美人といわれる歌手は数多いが、昭和の気品溢れる “イイ女” 西田佐知子はホンマモノの美人である。ルックスを云々するのはどうかと言われるかもしれないが、やはり女性ヴォーカルは雰囲気なんである。しかも彼女にはその歌声だけで聴き手をグッと引き込む力があり、まさに60年代を代表する美人流行歌シンガーと言えた。
 しかしいくら美人で歌が上手くても肝心の曲がつまらなければ売れるわけがない。ラッキーなことに、彼女はその美貌と才能に加えて楽曲にも恵まれていた。60年代前半の彼女は「アカシアの雨がやむとき」の “水木かおる&藤原秀行” コンビの曲を中心にヒットを飛ばしていたが、65年あたりから他のソングライターの曲もどんどん歌うようになり、より一層歌手としての表現力の幅を広げ、深みを増していった。
 そんな中でもダントツに素晴らしい出来なのが筒美京平、そして宮川泰という日本が誇る2大作曲家の作品である。60年代後半のさっちゃんはこの2人の存在を抜きには語れない。ということで、今日はさっちゃんが歌う宮川ナンバーの大傑作「涙がかわくまで」(1967)を取り上げたいと思う。
 さっちゃんの代表曲はどちらかというと切々と歌い上げるタイプの曲が多いのだが、この曲は彼女には珍しくビート感を前面に押し出したテンポの良いナンバーで、その軽快でリズミカルなイントロから一気に引き込まれてしまう。特にビート感全開で盛り上がっていくサビの部分なんかもう最高! “別れるなんてできないわぁ~♪” の歌い方なんてめちゃくちゃカッコイイと思いません?
 この曲がリリースされた67年と言えば黛ジュンの「恋のハレルヤ」や中村晃子の「虹色の湖」などが大ヒット、あの女王美空ひばりですらブルコメをバックに「真赤な太陽」を歌うという、まさに “ビート歌謡全盛期”。だから私はこの曲を、人一倍流行に敏感で好奇心旺盛な宮川泰が仕掛けた “さっちゃん流 一人GS” ではないかと思っている。
 編曲を担当した森岡賢一郎はブルコメの「ブルー・シャトウ」を始め、クール・ファイヴの「長崎は今日も雨だった」やあゆの「砂漠のような東京で」、小柳ルミ子の「私の城下町」などで明らかなように雄大なスケールを感じさせるアレンジが得意なのだが、この曲でもそれがドンピシャとハマり、イントロからエンディングまでの2分38秒を全くムダな音のない至高の歌謡ポップスに仕上げている。
 塚田茂の作った歌詞も実に良く出来ていて、未練たっぷりの1番とその未練を断ち切ろうとする2番、そしてそんな女心の微妙な揺れをたったの4行で見事に表現した “もう少しいてほしい あきらめる約束の 涙のかわくまで かわくまでぇ~♪” のライン... これはもう単なる流行歌の次元を遥かに超え、行間を読む芸術作品と言ってもいいぐらいのレベルに達している思う。
 このシングルは67年の暮れも押し詰まった12月27日に発売され、その4日後に紅白で歌われたということだが、それが良い宣伝になったのか年が明けてすぐにヒットしたらしい。ポリドールもたまにはエエ仕事するやん(笑) とまぁこのように文句なしの大ヒット・シングルなのだが、唯一不満なのが “ナントカ写真館” で撮ったような地味なポートレートを使ったジャケットで、中身の素晴らしさに比べるとめっちゃ味気ない。まぁ使い回しの切り絵写真よりはマシやけど、もーちょっと何とかならんかったんか...
 ザ・ピーナッツでノリにノッていた宮川泰が手掛けたこの「涙のかわくまで」は、「アカシア...」や「エリカ...」、「東京ブルース」ではちょっと古臭い感じがしてイマイチ馴染めない、というイケイケの歌謡ポップス・ファンにも自信を持ってオススメできる、ビート歌謡の大傑作ナンバーなのだ。

涙のかわくまで 西田佐知子 Sachiko Nishida 1967 (OH!モーレツ復活版 / 218 )

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2 コメント

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こんばんは (shoppgirl)
2011-08-18 00:05:25
兄さん、これエエやん!

初めて聴きました。
歌い出しの ♪引き止めは しないけど♪
とってもカッコいいです。

“私は歩けない”だったのが2番で“私は大丈夫”
この機微がたまらないです。
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エエでっしゃろ (^.^) (shiotch7)
2011-08-18 19:33:16
姐さん、こんばんは♪
コレ気に入っていただけましたか!
めっちゃ嬉しいです。
西田佐知子って「アカシア」と「コヒルン」の知名度が突出してるので
こういう隠れ名曲を発掘する楽しみがありますねん。

それにしても、初めて聴いて
“歩けない”1番と“大丈夫”な2番の機敏を喝破された姐さんも
只者やおまへんな...

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