shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

赤坂の夜は更けて / 西田佐知子

2011-08-14 | 昭和歌謡・シングル盤
 西田佐知子特集も何やかんやで4回目、今日は今や昭和歌謡のスタンダード・ソングと化した感がある「赤坂の夜は更けて」でいこう。
 私がこの曲を初めて聴いたのは青江三奈の CD「グッド・ナイト」で、元々クラブ・シンガーだったという彼女のハスキーな歌声とジャジーなムード満点の演奏(←むせび泣くサックスなんかカフェ・モンマルトルのジョニー・グリフィンそっくり!)が絶妙な味わいを醸し出していてめっちゃ気に入ったのだが、当時はまだ今ほど昭和歌謡に詳しくなかったこともあってすっかり彼女の曲やと思い込んでいた。
 それから何年かが経ち、ちあきなおみにハマって彼女の昭和歌謡カヴァー音源を集めていた時にこの曲のオリジナルが西田佐知子だということを初めて知った。時系列に沿って整理すると、“西田佐知子→青江三奈→ちあきなおみ” ということになるのだが、他にもザ・ピーナッツ、松尾和子、藤圭子など、傑作が目白押し。珍しいところでは “Akasaka After Dark” というカッコイイ英題(←何かカーティス・フラーみたいやね...)が付けられたブレンダ・リー盤や白木秀雄のファンキー・ジャズ・ヴァージョンなんかも面白い。
 そんな数々の名カヴァーを生んだオリジナルの西田佐知子ヴァージョンは1965年にリリースされたもので、ジャケットを見ると「女の意地 / 赤坂の夜は更けて」という表記になっていてどう見てもB面扱いっぽいのだが、センター・レーベルでは「赤坂」の方に A と記されているし、その年の紅白でもちゃんとこの曲を披露している。いつもながらポリドール・レコードって大らかというか何というか、細かいことは全然気にしない会社らしい。
 作詞作曲は洒落た歌詞と洗練されたマイナー・メロディーの絶妙な融合による都会的な歌謡ブルースを得意とする鈴木道明。あの「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」も彼の作品だ。「ワン・レイニー...」も「赤坂...」も歌謡曲ファンの心の琴線をビンビン震わす大傑作なのだが、そんな昭和歌謡史上屈指の名曲をさっちゃんの気だるい歌声で聴ける幸せ... 大袈裟に聞こえるかもしれないがこの曲の良さが分かる日本人に生まれて良かったなぁと思う。
 ポリドール・オーケストラの演奏も相変わらず文句ナシの素晴らしさで、鈴木章治みたいなクラリネット・ソロといい、ラルフ・シャロンみたいなピアノのオブリガートといい、ジャジーな雰囲気が横溢だ。この場合 “ジャズ” ではなくあくまでも “ジャジー” 、つまりジャズっぽいというのが重要なポイントで、ムード歌謡の名曲名唱を見事に引き立てている。
 この曲はタイトルに地名を入れたいわゆる “ご当地ソング” の傑作としても忘れ難い。これは 60年代の歌謡曲にはよく見られた手法で、具体的な地名を歌詞の中に入れることによってリスナーはその情景を想像しやすくなり、ストーリーによりリアリティーが増すという案配だ。私はコテコテの関西人なので、「雨の御堂筋」や「京都の恋」なんかを聴くとその情景が目に浮かぶような錯覚を覚えるのだが、やはりよく知っている場所はイメージしやすいということだろう。奈良の人間としては吉永小百合の「奈良の春日野」だけはカンニンしてほしいが...(>_<)
 お恥ずかしい話だが、私は東京に関してはレコード屋のある街にしか行ったことがない。だから和泉雅子&山内賢の「二人の銀座」を聴けばハンターを、青江三奈の「池袋の夜」を聴けばレコファンを、藤圭子の「新宿の女」を聴けばディスクユニオンを目指して彷徨い歩いた夜の街並みがすぐにイメージできるのだが、残念ながら赤坂には行ったことがないので “夜霧が流れる 一ツ木あたり~♪” と言われても何のこっちゃなのだ。これが吉祥寺や神保町、高田馬場あたりやったらわかるんやけど...
 「夜が切ない」(59年)、「アカシアの雨がやむとき」(60年)、「エリカの花散るとき」(63年)、「東京ブルース」(64年)と、これまで純日本風の曲が多かった彼女だが、このレコードあたりから徐々に洗練の度合いを増し、洒落た都会的なムードの歌を聞かせるようになっていく。その成果の集大成と言えるのが69年の「くれないホテル」あたりだと思うのだが、そういう意味でもこの「赤坂の夜は更けて」は彼女にとって非常に重要な1曲だと思う。

赤坂の夜は更けて 西田佐知子 1965 (最高級音響版/217)PCM

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2 コメント

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追悼 藤圭子 (みながわ)
2013-08-27 21:41:47
shiotchさんどうもです。
ポール祭りもたけなわですが、ご存じのとおり藤圭子さんが亡くなったというニュースが飛び込んで来てびっくりしています。
「明日なき暴走」で過去に藤圭子を取り上げたとこはなかったかなと思い検索したところ西田佐知子の回に名前が出てきたのでここにコメントを入れました。

ユーチューブで藤圭子の「赤坂の・・」を探したら出てきたので聞いて見ました。
いいですね、正直演歌は好きではないのですがなぜか藤圭子は心に残ります。
歌のうまさは八代亜紀、ちあきおみにだって負けてないと思いますが、いかがですか。

ご冥福をお祈りします。
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私もビックリしました (shiotch7)
2013-08-28 12:30:46
みながわさん、こんにちは。
藤圭子のレコードは昭和歌謡のシングル盤特集を再開したら取り上げようと思ってたんですが
今回の突然の訃報にはホンマにビックリしました。
それも飛び降り自殺とは...(゜o゜)

歌のうまさは文句ナシですよね。
凡百の歌手とは説得力が違います。
何かこう、心に喰いこんでくるという感じですね。

いずれにせよ、昭和の偉大な歌手がまた一人逝ってしまったのが淋しい限りです。
謹んでご冥福をお祈りしたいと思います。
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