shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「聖域番外地」/ The Beatles

2024-06-30 | The Beatles

 今日6月30日は “ダーク・スーツの日” である。とはいってももちろん洋服の青山やアオキの宣伝ではない。このブログをお読みの方ならもうお分かりだと思うが、ビートルズ・ファンにはいくつかの “特別な日” があって、たとえば 1月30日は “ルーフトップの日”、8月15日は “シェア・スタジアムの日” という感じで、ファンはこれらの日にはそれぞれのライヴ音源を聴きながら “自分もその場に居合わせたかったなぁ...” と思いを馳せるのだ(←でしょ?)。来日公演に関してもそれは同じで、彼らが羽田空港に降り立った6月29日は “来日記念日”、濃いモス・グリーンのスーツ姿で武道館のステージに立った6月30日は “ダーク・スーツの日”、オレンジのストライプが入ったライト・グレーのスーツ姿でライヴを行った7月1日は “ライト・スーツの日” として日本のビートルズ・ファンの心に深く刻まれている。
 私もご多分に漏れず、この期間は武道館ライヴのDVDを観たりCDを聴いたりして過ごすのが当たり前になっている。ちょうど土用の丑の日にウナギを食べるようなモンである。映像に関しては手持ちの中では HMCの「Tokyo 1966」ブルーレイが一番キレイなので(→もっとキレイなのがあればぜひ教えて下さい... m(__)m)そればっかり観ているが、音源に関してはどれもこれも帯に短しタスキに長しで、私の知る限りではこれぞ!といえる決定版はこれまで無かったように思う。アップルからオフィシャル盤が出ない以上、我々ファンはブートレガーたちが手を変え品を変え自画自賛インフォと共に出してくる “自称” アップグレード・ヴァージョンに “あんまり変わり映えせんやろうけどやっぱり気になるから一応買っとこ...” とついついお金をつぎ込んでしまうのだ。
 今日ご紹介する「聖域番外地」もそんな1枚で、狙いすぎて見事にスベッた感のあるこのクッソダサい邦題はもしや Xavel では?と思ったらやはりそうだった(笑)。無駄の最たるものと言える “帯付き” というのも相変わらず。ライトハウスですら赤面しそうなこっ恥ずかしい自画自賛インフォはもはや様式美と言えるもので、 “これまで登場したいかなるブドーカン・ライヴとも異なる革新的なサウンド・バランスで捉えた会心作” とハイ・テンションな紹介文が笑わせてくれる。
 しかしそれに続く一文が心に引っ掛かった。曰く、 “6/30夜のステージと7/1昼のステージを収録した現存する最良の状態のサウンドボード・マスターを最新AIを用いてディミックス処理。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、黄色い歓声といった複数のトラックに分離された素材を完璧なバランスのステレオ・サウンドに再構築。さらに入念なリマスター作業によって音を極限まで磨きあげた完全オリジナルの武道館ライヴで、各パートのセパレート&定位感はまさしく驚異的と形容するに相応しく、その明瞭な音像には誰もが驚かされることでしょう。” と書いてあるのだ。
 ジャイルズ・マーティンやピーター・ジャクソンが関わった一連のリマスター・プロジェクトの驚異的な成果を身をもって体験した者としては、あの武道館ライヴ音源を “最新AIを用いてディミックス処理したサウンド” とやらを何としても聴いてみたい... という衝動を抑えきれず、ヤフオクに送料無料で出ていた新品未使用盤を即決購入。知らん間に勝手に溜まってた PayPayポイントとクーポンを使ってほぼタダ同然で手に入れたので、これなら万が一ハズレでも腹は立たないし、もし当たりだったらめっちゃ得した気分に浸れるだろう。
 早速届いたCDを聴いてみる。まずは6/30からだが、確かにこれまで聴いてきた音とは一味も二味も違う立体的なサウンドで、おっ、これはなかなか... と思わせてくれる。良い意味で予想を裏切られて感心してるとアッという間に1ステージ35分が過ぎ去り、続けて 7/1に突入。こっちの方は更に音が良く、出るところは出て引っ込むところは引っ込むという音の奥行き感がしっかりと感じられるのだ。これまで聴いてきた武道館ライヴのモノラル音源を “平板な写真” とすれば、このディミックス・サウンドはさしずめ “出来の良い油絵” といったところか。とにかくこのCDは小さな音で聴くよりも大音量で聴いた方が違いがよくわかると思うし、是非とも大音量で聴くべきサウンドだと思う。スピーカーと対峙して聴くに十分値するというか、私的には少なくともハーフ・オフィシャル級の音でビートルズの武道館公演が楽しめる傑作ライヴ盤として “買って大正解!” だったと自信を持って言える逸品だ。
THE BEATLES - YESTERDAY (Nippon Budokan, Tokyo 1966-7-1) Audio