shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【爆裂ラウドカット】Wings Over America オール -1U盤

2019-02-20 | Paul McCartney
 私は「オーバー・アメリカ」のラウドカット疑惑(?)にオトシマエをつけるため、盤が届いた2日後に早速 B-SELS を訪ねた。“UK盤「オーバー・アメリカ」のマト・オール1盤を手に入れたんですけど、一緒に聴きませんか?” と言うと店主のSさんは目を輝かせながら(笑)“ぜひ!” と2つ返事でOKして下さった。
 私は比較対象にもう1枚の「オーバー・アメリカ」も持参しており、まずはマトの差が大きくてデッドワックスの幅も異なるC面で試してみようということで聴き比べスタート。この面はご存じのとおり「ピカソズ・ラスト・ワーズ」「リチャード・コーリー」「ブルーバード」「アイヴ・ジャスト・シーン・ア・フェイス」「ブラックバード」「イエスタデイ」と続くアコースティック・セットなので、アコギをこよなく愛するSさんがどのような反応をされるかを興味深く見守っていると、一言も発せずにずーっと目を閉じて聴き入っていたSさんが「ブラックバード」で “高音の伸びが全然違いますね! いや~、コレは凄いですわ!” とコーフン気味におっしゃった。
 そこで一つのアイデアが浮かんだ。私が持参した“1/1/1/1/1/1” と “1/2/3/2/1/1” に加えて、お店にある「オーバー・アメリカ」のUK盤2枚“2/1/1/1/1/1” と “2/2/2/1/1/1” を併せた計4枚の中から選んで比べてみようというのだ。これにはSさんも大賛成で、まずはC面に的を絞ってマト2、マト3と順に聴いていく。因みにデッドワックスの幅の件だが、お店にあった定規でそれぞれ計ってみると、マト1とマト2が1.5cmでマト3が2.3cmだった。となると理論的にはマト1とマト2は同じ音がすることになる。
 ところが聴いてみた結果はお店のマト2(2/1)の方が私のマト1(1/1)よりもおとなしく感じられたのだからアナログは奥が深い。続いて聴いた私のマト3(3/2)もそれなりに良い音なのだが、やはりマト1の後に聴いてしまうと物足りなく感じてしまう。一通り聴き比べが終わると、Sさんが “「ブラックバード」をもう1回いいですか?” とおっしゃったので(←この曲が大好きだそうです...) “何度でも気のすむまでどうぞ!” とエンドレス試聴に突入(笑)  結局1時間半ほどC面を繰り返し聴いて、“1/1 >> 2/1 ≒ 3/2” という結論に達し、“じゃあ次はA面に行きましょう。” ということになった。
 C面が“アコースティック・サイド”ならA面はバリバリのロック・サイドである。マトは1と2しかないが、同じマト1でも 1/1盤と1/2盤に違いがあるのかどうかにも興味があったので、こちらも私が持参した 1/1盤と1/2盤、そしてお店の2/1盤の計3枚を聴き比べることにした。
 まず 1/1盤だが、ライヴ始まりの歓声の大きさからして明らかに違う。それまで聴いてきた「オーバー・アメリカ」を数万人収容の巨大スタジアムとすれば、この1/1盤は武道館か国技館クラスのアリーナである。それぐらい音が近いのだ。そしてA①「ヴィーナス・アンド・マース」が始まり、メドレーの「ロック・ショウ」に突入した瞬間の爆裂感には2人とも思わず身をのけぞらせた(←これホント!)。Sさんは “今まで聴いた中で最高の「オーバー・アメリカ」です!” と大喜びで、“まるでハードロック・バンドのライヴを聴いているみたい” とおっしゃったが、実に上手い例えである。確かに、気が付くと2人とも軽くヘッドバンギングしていた(笑)
 更に驚いたのは「ジェット」の冒頭部分のホーンの厚みが全然違うことで、音の押し出し感がハンパない。もう一つの大きな違いはドラムの音で、他のマトの盤では奥に引っ込んでいたジョー・イングリッシュが前に出てきて、まるでレッドブルを一気飲みしたかのような(←これこそまさに Gives You WINGS!!!)豪快なドラミングを聴かせてくれるのだ。Sさんも “スネアがスコーン!と突き抜ける感じが全然違いますね!” と満面の笑み。とにかく音が近いので、まるでスタジオ・ライヴを聴いているかのような錯覚に陥ってしまう。A⑤「メディスン・ジャー」でもポールの“よく歌う” 闊達なベース・ラインがまるでヘビー級ボクサーのボディーブローのようにズンズン腹に響いてめっちゃ気持ちイイ(^o^)丿 “コレはどう聴いてもラウドカットでしょ!” とおっしゃったので “やっぱりそう思いますか。僕もそう思ったんですけど自信がなくて... でもこれで確信に変わりました。これは間違いなくラウドカットですね!” と言いながらB面に行く。
 B①「メイビー・アイム・アメイズド」のポールのヴォーカルが実に力強い。バックのコーラスの広がり方も一回り大きく感じるし、ジミーのギター・ソロも一歩前へ出てきて弾いているような感じ。更にB②「コール・ミー・バック・アゲイン」の音密度の濃さには2人とも “おぉ~!!!” と声を上げてしまったほどで、とにかく音がスカスカなイメージのあった「オーバー・アメリカ」とは全く別物の、熱いライヴの音像が我々2人の前に屹立しているのだ。ここからはあくまでも私とSさんの想像だが、UK盤「オーバー・アメリカ」のディスク1だけマト1/1盤が極端に少ないのは、ちょうど「ラバー・ソウル」モノのマト1盤と同じ理由で発売後すぐに差し替えが行われたからではないか。この仮説が正しければ諸々の音の違いがすべて説明がつくのだが...
 1/1盤の次は 1/2盤だ。同じマト1なので 1/1盤と1/2盤のA面は同じ音がするはずなのだが、聴いてみた結果は1/1盤の圧勝で、これには2人ともビックリ。スタンパー・コードが 1/1盤の「P」に対して1/2盤は「GDP」とかなり開きがあるのでそのせいではないかというのがSさんの推測だが、なるほどそれなら筋が通る。スタンパー・コードが2桁までと3桁ではかなり音が違うらしいので、ましてや1桁と3桁ならその差は歴然だ。
 最後に 2/1盤を聴いてみたが、こちらはスタンパー・コードが「1G」で、マト2の中では最初期盤ということになる。聴いてみた結果は 1/2盤とほとんど変わらずで、3枚比較の最終結論としては “1/1 >>> 1/2 ≒ 2/1”だった。“いやぁ~、「オーバー・アメリカ」のラウドカット、最高ですわ。帰ったら神棚に飾ろうかな...(^.^)” と言うと Sさんも “エエもん聴かしてもらいました!” と大いに喜んでおられた。
 結局3時間にわたって同じレコードを何度も何度も聴きまくったワケだが、時の経つのを忘れるほど楽しい至福のひと時で、私もSさんもホンマにビートルズが好きなんやなぁと改めて実感。そもそも B-SELS でUS盤にハマらなければこのマト・オール1・リアル 1st プレス盤を買うこともなかったワケだし、「オーバー・アメリカ」のUKオリジナル盤のマト違い4種類をじっくり聴き比べできる場所だって日本中探してもそんなにないだろう。ここ数ヶ月の充実したレコード・ライフを考えると、このお店には足を向けて寝れない。そんなレコ屋が地元の奈良にある幸せ... priceless (≧▽≦)

【試聴盤データ】上段がマトリクス枝番、下段がマザー番号とスタンパー・コード
① 1U   1U   1U   1U   1U   1U
  3P   2RR   1TT  2AO   5TO  2RR

② 1U   2U   3U   2U   1U   1U
 4GDP 1GRA  1GHD  4GHA   3PD  3OO

③ 2U   1U   1U   1U   1U   1U
 1G   2GR   1GD  1GR   1MD  3RL

④ 2U   2U   2U   1U   1U   1U
 2MD  2TT  2GGP  5GGP  3GM  2OG