shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ビートルズのインド盤特集①「Rubber Soul」

2016-11-13 | The Beatles
 何年か前にジャズのUSオリジナル盤とそのヨーロッパ・プレス盤を色々持ち寄って聴き比べ会をやった時のこと、アート・ペッパーの英ロンドン盤からレイ・ブライアント・トリオの怪しげなイタリア盤に至るまで、様々な珍盤でひとしきり盛り上がった後で “shiotchさんのことやからビートルズもUK盤だけやのうてヨーロッパ盤とかブラジル盤とかの各国盤まで行かはるんちゃいますか?” と焚き付けられ、“いやいや、ビートルズはUKモノラル盤の1stプレスがあればそれで十分ですわ。同じタイトルで色んな国の盤を揃えていったらそれこそキリがないですし、第一お金がいくらあっても足りませんやろ?” と言って一笑に付したのを今でもハッキリと覚えている。
 そして2016年の今、気が付けばあれほど “UKモノ一筋” を金科玉条としていたこの私が UK黄パロのステレオ盤は言うに及ばずドイツ盤がスベっただの、オージー盤がコロんだだのと言って大はしゃぎしているのだから一体どの口が言うてんねん!と突っ込まれても返す言葉がない(>_<) ここはもう男らしく前言撤回して “今、各国盤にハマってまーす(^.^)” と宣言してしまおう(笑)
 各国盤と言うぐらいだからターゲットは無限と言ってもいいくらい広く、何らかの指針となるガイド本の類が無いとどこから手を付けていいのかさえサッパリ分からない。ということで、ビートルズの各国盤を蒐集するにあたって避けて通れないのが湯浅学氏の「アナログ・ミステリー・ツアー~世界のビートルズ~」という本で、例えるならジャズ・レコード・コレクターにとっての「幻の名盤読本」のようなバイブル的存在としてその筋では有名だ。この本が出た当時はUK盤以外は眼中になかったので見向きもしなかったのだが、去年たまたま時間つぶしに立ち寄った本屋で立ち読みし、そのあまりの面白さに上下巻併せて衝動買いしてしまったのだ。
 この本はイギリス、ドイツ、アメリカ、オーストラリア、日本といったメジャーな国からニュージーランド、スウェーデン、ハンガリー、チェコスロバキア、ユーゴスラビア、ペルー、インド、シンガポールといったマイナーな国に至るまで、世界の様々な国々でリリースされたビートルズ・レコードの音質インプレッションが載っており、特にイギリスとドイツに関してはセカンド・プレスやサード・プレスまでカヴァーしているのだからアナログ・レコード・コレクターにとってはこんなに面白い本はそう無いのではないか。それにしてもこれだけ膨大な量のレコードを蒐集し、尚且つ聴きまくった湯浅氏は凄いとしか言いようがない。
 リイシュー盤や日本盤には全く興味がない私にとっては上記の “マイナーな” 国々のレコード・インプレッションが面白かったが、そんな中で私が一番興味を引かれたのが他でもない「ラバー・ソウル」のインド盤に関する記述だ。この盤はA面のみインド独自のカッティングになっており、湯浅氏曰く “UKマザーの「ノーウェジアン・ウッド」のシタールの音にインド人のカッティング・エンジニアが我慢できず自分でカッティングしたのだろう” とのこと。その結果、“シタールの音が大きく倍音も豊富で他国プレスの追従を許さない、さすがインドと思わせる素晴らしい音”になっていると絶賛しているのだ。ここまで言われて “聴いてみたい” と思わなければビートルズ・ファンではない。
 私は早速ネット・オークション・サイトをいくつか覗いてみたのだが、この本の影響か、ヤフオクでは1万5千円近い値付けがされていて問題外。私は興味本位で買うレコードの上限は5千円と決めているので全くお話にならない。続いてeBayで検索してみると、インド盤自体がレアなせいか真っ当な盤質のレコードはどれもこれもが数百ドル(←「アビー・ロード」$250、「ヘルプ」$300、「ホワイト・アルバム」$400って... そんなん一体誰が買うっちゅーねん!)で、数十ドルで買えるのはジャケットがボロボロに剥がれ落ちてるものや盤質の悪いものばかりという悲惨な状況だ。そんな中で1枚だけ盤質が VG+ 〜 Near Ex表記でジャケットも奇跡的に無事な(笑)「ラバー・ソウル」が BUY IT NOW 送料込み$48で出ているのを発見、“これを逃したら一生聴けへんやろなぁ...” と思った私は即決で買いを決めた。
 届いた盤を聴いた感想としては、まず第一に音圧が結構高いということ。UK黄パロのステレオ盤よりも1割増しぐらいの音の大きさだ。しかしそのせいでUK盤とは似ても似つかぬ強烈な “左右泣き別れミックス” が強調されてしまっていて、曲によっては左chから聞こえる演奏に右chから聞こえるヴォーカルが負けてしまっているように感じられるのが難点。倍音がどうこうと言う以前に音のバランスがオリジナルとは違うのだ。だから問題の「ノーウェジアン・ウッド」も左chに入っているシタールの音が相対的に大きく聞こえる、というだけの話で、何もインド人エンジニアがシタールの音だけを大きくミックスしたのではないように思えるのだが...(>_<)  まぁシタールの音とジョンのヴォーカルが同音量に聞こえる珍盤であることだけは間違いない(笑)
 それと、全体的に高域がキツめに入っているので、特に「ユー・ウォント・シー・ミー」や「ザ・ワード」ではギターの音が耳にキンキン響いて人によっては聴き辛いと感じるかもしれない。私的には上記の「ノーウェジアン・ウッド」も含めて “良い音” というよりは “面白い音” という印象で、音質的に決してUK盤を凌駕するものではない(←それでもUS盤や日本盤に比べれば遥かに良い音だと思うが...)と感じた。ただ、これはこれで面白いミックスだし音圧も高いので自分としては思い切って買って大正解で、時々取り出して聴きたくなるような愛着の湧くレコードになった。ガイド本の高評価に踊らされて1万円以上も出す価値は無いと思うが、数千円で買えるならお買い得の1枚と言えるかもしれない。