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「小さな田んぼのイネ作り」 コロガシ ⑨

2019-06-13 04:26:00 | 「ちいさな田んぼのイネづくり」
田植え1週間で、コロガシを行った。田植え直後の田んぼは水位を深くできない。急に深くすると浮き苗がでる。少しずつ深くして1週間たてば、八センチまで水位を上げることができる。八センチあれば、ヒエは発芽できない。そしてコロガシの一回目である。5人で1時間ほどの作業だった。一人ならコロガシ5時間。それを4回だから、20時間かかることになる。その後30分程度で補植を行った。ここまで順調な生育である。五,五葉期で田植えを行い、いくらかの停滞を見て、六葉期になっている。イネは活着すると葉先につゆが付くようになる。露が宿れば一安心である。コロガシは田植え1週間前後に行う。このときうまくいっていれば、コナギはまだでていない。上手くゆくとはコナギの種は田んぼに水を入れたときにスタートを切る。だから田植え前ギリギリまで水を入れない。水を入れるのは田植え前の一週間以内である。代掻きは苗の生長を見ながら、5,5葉苗になるタイミングを見ながら決める。順調な生育であれば、種まき5週間後である。種まき4週間目までに荒起こしを丁寧に行い終わる。そしてここで水を入れる。水を入れて3,4日たてばざっと代掻きをする。このあたりはできるだけ素早く作業を進めなければならないだろう。田植えができる状態になれば、大丈夫なので、それほど丁寧な代掻きは必要がない。その分荒起こしは可能な限り丁寧に行っておく。

東さん撮影の写真、不思議な調子で面白いさざ波の水面。一本植えのさらっとした田んぼ。

田植え前には線引きをする。30センチ角の正方形の線である。線引きは慣れないと曲がる。比較的良いやり方は、田んぼの中央部を決め、向かいの対岸に目印の旗を立てる。この旗をめがけてまっすぐに進む。その後左右に線を見ながら広げてゆく。縦方向が終われば、今度は横方向でおなじことをする。このとき正確に線を引くことは、コロガシ作業に影響をしてくる。おかしな線であるとコロガシの時に、田車で苗を巻き込んでしまう。線引きの時には水がわずかにあるくらいがやりやすい。きっちりとした線が引かれていれば、子供でも田植えができる。線の交点に植えてゆく。この辺は前回書いたことである。水が来るとコナギが発芽を始めるが、田植えが終わりすぐにそばかすを撒く。すると、そばかすが沈殿して地表で発芽を抑制してくれる。だから、上手くゆけば田植え1週間後、つまり水を入れてから2週間後でもコナギの発芽は見られないはずだ。コロガシ前後は苗数を数えやすい。苗数にもし三〇センチ角植えなら〇,九を掛けたものが正確な面積になる。いびつな田んぼの時はこのやり方で正確な面積を出しておく。田んぼの端に植えたものがあれば、二分の1本である。


根守さん撮影のコナギの発芽

田植え1週間後に田車によるコロガシを入れる。主目的は土壌の発酵を良い方向に進めるためである。堆肥を作るときの切り返しと同じ意味である。土壌を攪拌して酸素を入れてやる。すると根が窒息気味になっていたものが、一気に活性化する。翌日には稲株はシャキッと立ち上がっている。土壌の中には大量の緑肥がすき込まれている。これがすでに腐植を始めている。田んぼを歩けば、あぶくが出てくる。このあぶくの匂いを嗅いでみる。臭いからいけないではなく、臭さの違いを確認すること。ドブの腐った悪臭に近ければ危険。このときにはクン炭を撒いて、よくかき回してやる。多分土壌もユルユルにっているはずだ。ある意味この腐敗している状態で出てくる何かで、雑草の発芽は抑制されるようだ。ここを転がしてやることで、苗に害のない、良い発酵土壌に進んでゆく。だから、苗は5,5葉期の苗でなければ耐えきれない。雑草は発芽しても地表のそばかすの発酵でとろけてしまうこともある。1週間後には田んぼの地表には大量のミジンコが動き回っている。これが様々な小動物のエサになる。斯うして田んぼの地表にはとろとろ層が形成されてゆく。この形成されるトロトロ層はとても大切である。コナギの種を覆い尽くしコナギの種の発芽を抑制する。コロガシはできるだけ深水で行う。水尻は排水をしない。コロガシは前後にコロガシながらできるだけ深く土壌を攪拌する。このとき水の濁りが続き翌朝にやっと田んぼ面が見えるくらいだと良い。

田んぼの土壌は腐植質が多ければ多いほど良い。良い土壌とは腐植の多い土壌のことである。肥料分や粘土分やミネラルバランスも意味がないわけではないが、腐植質の量は絶対的なものだ。田んぼを耕せば腐植は減少する。トラックターの登場以来、土壌は耕されすぎである。耕されて、腐食物質が極端に減少している。これが土壌の砂漠化の主たる原因である。農薬や化学肥料よりも、悪影響は大きい。トラックターを使わない耕作は環境的にも素晴らしいものだ。畦に生えた草などは田んぼの中に刈り込んでやった方が田んぼの土壌はよくなる。東洋4000年の永続農業である。肥料は田んぼの中で自然に生産されてゆく。永続性のある伝統稲作である。手で耕すのであれば、腐植の減少はそれほど多くない。稲わらの田んぼへの戻し、緑肥のすき込みで補われる量の腐食物質の量で田んぼにおける腐植質は減少が起きない。むしろ増大してゆく。伝統稲作が、地球環境を守る大きな意味を示している。自給のための田んぼが環境破壊につながるのでは、充実感がなくなる。





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