今回のWBC世界大会は日本にとっては記念すべき大会になった。アメリカ生まれのベースボールに日本の野球が、正面から挑戦し勝利を収めた。日本に野球が伝わったのは1872年(明治5年)。ヨーロッパでは広がらなかった 野球は日本人の気質にあつていた。
攻撃と守備が交代で行う。休み休みやるというところが、在っているような気がする。休んでいる間にいろいろ相談できる。選手同士も、監督も、チームとしての十分な関係が保てる。ルールが複雑で、体力と技術力だけでは勝てない、戦略的なところがある。
日本のプロ野球で活躍した外国人選手が、アメリアに帰って、「日本にはベースボールに似た、野球というスポーツがあった。」と語ったという。日本チームは侍ジャパンという。どこか侍に似たような精神力が求められるスポーツである。
WBC出場の日本の選手のレベルは過去最高と言われ、優勝するかも知れないと期待され他チームであった。中心選手の一人大リーガー鈴木誠也選手がケガで出場辞退と言うことで、黄色信号がともった。外野の守備に穴が開いた。
金メダルに輝いた2021年の東京五輪で4番打者を務めた鈴木選手は、今回の栗山ジャパンでも大谷翔平、ダルビッシュ、村上宗隆と共に中心選手として期待された。クリーンアップを打てる右の強打者で、右翼の守備でも強肩を誇る。特に外野の守備が不安になった。
ところがこの穴を埋めたのが、ヌートバー選手だ。守備では外野3ポジションを守ることのできる器用さがあり、昨シーズンも右翼(105試合)、左翼(20試合)、中堅(12試合)と右翼メインながら中堅と左翼もこなしている。なおかつ肩も強く昨シーズンも8個(右翼6個,中堅1個、左翼1個)の補殺を決めた。
ヌートバー選手は大リーガーなのだが、母親が日本人なのだ。本人も日本人意識を強く持っていたので、日本選手として出場してくれることになった。外野手の守備力は相当に重要で、長距離打者の多いこの大会では、守備範囲が広くなければ務まらなかった。
誰か一人でもかけたら優勝は出来なかっただろう、いよいよ初戦が始まった中で、ヌートバー選手の果敢な守備で、日本チームに勢いが付いた。センター前のヒット性のライナーをダイビングキャッチをした。身を挺したまさに大リーグのプレーである。見ているものまで目が覚めた始まりのプレーだった。
その後も素晴らしいセンターの守備で、日本のピンチを何度もすくった。あのガッツあるプレーに、ベースボールの素晴らしさを再認識した。世界と言うことでみると、まだベースボールはマイナースポーツである。オリンピック種目からも外された。
しかし、今回の大会を見ていると、どの試合もオリンピック種目のスポーツに劣らないスポーツの素晴らしさに溢れていた。特にチームワークの重要性が目立った。若い村上選手は去年の最年少3冠王で日本では最も優れたバッターとされていたが、不振に落ち込んだ。
しかし、チームの選手仲間も、栗山監督もその本来の力を引き出すために、あらゆるサポートをした。そして、準決勝メキシコ戦では、さよなら2塁打を放ち、決勝では、肝心要のところでの、同点のホームラン。起死回生の活躍をして、面目を保った。
栗山監督の気持ちの落ちた選手を信頼した采配の素晴らしさが優勝を導いたところだ。WBCの特別な緊張感で若い村上選手は、気持ちで負けていたのだろう。その選手が土壇場で、起死回生の一打を放った。こうした気持ちの裏まで良く見えるのが野球だ。
日本のピッチャー陣は間違いなく実力的に世界一だっただろう。球速でもアメリカのピッチャーに負けていないのだ。配球の素晴らしさは天下一品で、強豪打者揃いの各国の選手に、真っ向から勝負をした。そして、そこそこに押え込んだ。特に決勝戦で7人の小刻みな継投で、アメリカを2点に抑えたことは特出されることだ。
まさかアメリカにしてみれば2点しか取れないなど思いもしなかっただろう。7人のピッチャーを繋いで、最後の9回は大谷が3人で攻撃を抑えた。この試合が日本の真骨頂だったと思う。普通7人も交代すれば、必ず誰かが打たれてしまう投手がいる。
しかし、アメリカを相手に、どのピッチャーも本領を発揮したと言える。アメリカの素晴らしい投手を相手に、日本の打線では3点が精一杯の所だっただろう。2点に抑えきることは、投手陣に課せられた目標のようなところがあった。アメリカをソロホームら2本だけで抑えきった。日本も日本のホームランだったが、岡本のツーランホームランで勝利した。
「アメリカが2点しか取れないとは、信じがたい。」とアメリカの監督がゲーム後に語っていた。アメリカオールスター選手が東西に分かれていないドリームチームなのだ。それを抑えきった日本の投手陣は桁外れだったし、その調子のピークを決勝戦にあわせたことがすごい。
今年の日本のチームは過去最高だった。アメリカのチームも過去最高のチームだった。それは大リーグが選手の出場を認めたからだ。そうして出来た別格とも言えるようなチームが、本気で戦った。これほど野球はおもしろいスポーツになるのだ。今回のWBC決勝戦は過去最高のベースボールゲームだったのではないだろうか。