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円安時代に米を輸出しよう

2024-05-28 04:01:44 | 稲作


 円安時代である。米輸出を考えるべきでは無いだろうか。世界では食糧不足が続いている。日本のお米の生産費は高いので、米は輸出できないと言われているが、そう決めつけない方が良いだろう。円は一時の半分の価格になったのだから、お米の生産費も半分になったと考えて良いのだろう。

 農家の大規模化や機械化が進んでいることを考えれば、米の生産費はまだまだ下がるとも言える。企業的農家が増えて、一般農家が減っている。そして農地の集積は進む。集積された農地で合理的経営を行い、お米を輸出産業に出来るはずだ。

 このまま何も手を打たないで居れば、水田が失われて行く。水田がなくなれば日本の環境のためにも問題が起こる。そもそも稲作がなくなれば、日本文化が見えなくなる。主食であるお米を大切にしなければならない。そのためにはお米の輸出のための環境整備を国が行うべきだ。

 お米は2018年に減反が廃止された。減反が廃止されて米農家が成り立たなくなり、廃業が進んでいる。減反奨励金でかろうじて生活していた農家は、競争価格になり、下落した米価では成立しないことになったのだ。そこで、農地の集積が始まり、日本にも大規模企業農家が出現した。

 しかし、政府は農協や農家からの強い抗議を受けて転作奨励金のような形で、作らなければお金を上げる減反奨励金はさすがに止めたが、稲作を止めて、畑にすれば補助金を出している。様々な形の補助金が今もあるが、あくまで経過処置のような、宙ぶらりんの方向の見えないものになっている。
 
 国は年間2300億円の補助金を出して、小麦や大豆を生産させている。生産量は130万トンに満たない。しかも、国産の小麦は品質が安定しないので製粉会社は使いたがらない。2300億円出せば、500万トンの小麦を輸入できるのだから、やることがちぐはぐである。

 家畜の餌となる飼料米を作れば、補助金が出る。年間950億円の補助金をあてて、主食用米から餌米への転作を奨励している。その費用で生産されるのは66万トン。にすぎない。同じ財政負担を飼料の輸入に回せば、その数倍の飼料が輸入できる。

 すべては農家を守るための補助金である事は確かなのだが、補助されなければ成り立たないような産業はいつか終わる。農家の生活保全がまるで生活保護費の代わりに農業補助金があるような気がしてくる。農家を守ろうとして、農家を廃業させているような結果になっている。

 そして、農業基本法が見直されたが、農家が増えるような政策はどこにも見当たらないのだ。これからも農家は減少して行くだろうし、農地も放棄されて行く。生活保護費が出るような産業を誰も始めようなどと思わないはずだ。日本農業が世界で対等に経済活動できるようにすべきなのだ。

 日本の自然環境は確かに、規模拡大しにくいところはある。しかし、小さな国オランダが、穀物輸出国なのだ。日本独自の農業技術を開発して、世界と対等に商売が出来るようなものを考えなければだめだ。そのためには大規模化は機械化は必要なことだ。

 日本では長く、農家は自民党の票田と言われていた。しかし、さすがに今では農業者数が減少し、それこそ票田の減反が進んで、自民党への圧力団体と言っても、それ程の影響力は失われている。今では地方でも農協よりも土建業や建設業分野の方がパー券キックバック裏金の影響力がはるかに強い。

 そこで、確かに政府は今度の農業基本法の見直しでも、農業を輸出産業にする。農家にITを取り入れた、スマート農業の研究開発なども打ち出している。しかし、肝心なことは具体的に、どうやって輸出産業にするのか。どういうスマート農業なのかは見えてこない。

 具体策ないのは、政府には農業に対する、未来像がない。農業が一次産業だと言うことが分っていない。農業基本法が見直されても、農家は減少するとしか思えない。もっと具体的に考えて、農家になりたくなるような提案をしなければならない、国の未来の緊急事態だと思う。

 もう一般農家の延命策のようなものは止めるべきだ。例えば、沖縄ではサトウキビの奨励金というものがある。1トン当たり補助金額は16800円とある。これを無くせば、間違いなくすべてのサトウキビ農家は継続できないだろう。

 補助金を止めて、サトウキビ農家が、その後どういう農業経営をすれば良いかの、具体的な農業の形を示すことが、農政の役割ではないだろうか。何時までも補助金だけで経営を維持することは、さらに苦境が続くことになる。これはどの農産物でも大きな違いはない。

 米を輸出品にすべきだ。日本のお米は特徴があるものだ。ブランドとしての評価もある。何故、米輸出量が少ないかと言えば、輸出手続き等が極めて煩雑と言うことがある。農家が輸出に手を出せるほど簡単なことではないのだ。間に商社が必要になる。この流れを農水省が協力すべきだ。

 各国には自国の農業者の生産農産物の関税等の輸入規制がある。衛生・安全面では、輸入国の食品衛生法や食品表示法などの規定条件がある。また自国の農産物に害虫や菌などの悪影響の原因となるものを水際で抑止する動物・植物の検疫検査制度がある。

 さらに米輸出のための物流が整備されていない。米の品質を落とさず、輸出するための輸送船や港湾設備の整備が必要になる。当然、それぞれの国柄によって、米販売のマーケティングも違う。どうやって日本のお米をアピールして行くかには、高級品販売の戦略が居る。これも専門家の仕事だ。

 農家レベルでは手が出せない高いハードルがある。日本には優秀な大商社がある。そうしたところの力を借りて、そこに政府の補助金を入れて、日本のお米の輸出を試みることが必要だろう。農家に補助金を出すのを止めて、世界に輸出するための方策を、政府が試みて行くことが必要になる。

 これからの農業は国民皆農と言えるような、自給の農業と育成が一つの道。同時に世界に流通する大規模農業の輸出への政府の支援がもう一つの道。政府の農業政策はこの2分野に分かれて行なわなくてはならない。現在の農家はこの2つの道を選択して貰わなくてはならない。そうならなければ、日本の食料の安全保障は達成できない。

 これから新規就農をする人も居る。農業は魅力的な仕事だから当然のことだ。そうした人はよほどの特殊な回答を用意する必要がある。普通に補助金を当てにして、農家を始める人が多いいが、それでは農家経営は不可能になる。補助金も遠からず出なくなる。政府はさらに困窮するはずだ。

 40年近く農業に関わってきたが、40年前に予測したとおりに進んでいる。多分これからの予測も概ね間違えない。普通の農家はほとんどなくなるだろう。大規模農家と特殊な農家と自給農家の3つに分かれる。農業に興味があるとすればそのどれが自分に合うかを考える必要がある。

 米を輸出品にする。農家への補助金を止めて、輸出奨励金に変える。直接的に輸出奨励金にすると、海外の拒否反応も出るだろうから、輸出環境の整備に国は力を注げばいい。田んぼ大規模化の為の道路、耕作地、水利の整備。専用船の準備や、海外のマーケティング、輸出可能な品種の開発。等々国が担うべき事は様々ある。
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