1月に台湾の農家を訪問できることになった。状況が分からないために、ここに至るまで大変な苦労をした。その過程を記録しておこうかと思う。
台湾の農家に行ってみたいと考えたのは、1年以上も前のことである。台湾が好きで何度か行っている。美術館などを見て歩いた。それでもスーアオまで行き、実に楽しい旅行だった。今度は蘭展の時にと思って計画したら、コロナが始まり行けなくなった。
コロナが沈静化して行けるようになり早速行った。今度は台湾の種屋さんを見てみたいと思った。石垣で台湾と交易のある方の紹介で行った。実に親切にしてもらったのだが、台中には種屋さんがあるが、台北にはないと言うことで見ることは出来なかった。
だんだんに台湾の農業に関心が深まり、実際の台湾農家の方に、稲作の実際の所を聞いてみたくなった。それで東京に行ったときに、台湾観光局と台湾通商部に行き色々尋ねたが、農家民宿については何も分かることはないと、冷たい対応だった。
台湾の方はあんなに親切なのに、日本にある台湾の出先機関は正直あまり良い対応では無かった。多分、日本人が働いているからだと思われる。台湾観光局に行って、日本人の不親切を痛感することになった。台湾の人があんなに不親切なはずがない。
さてどうするかと言うことになり、石垣島で色々の方に相談すると、石垣島の農家に外国の人が農家でワーキングホリデーという感じで働いているのをみる。多分台湾にもそういう組織があるはずだと教えてくれた。農家に働きに行くのが一番だと言うことだった。しかし、74歳ではむりじゃないのとも言われた。
探してみたところ。WWWOOFと言う組織が台湾にもある事が分かった。早速入会した。年間4000円が会費だった。これで見つからなければ高いものだ。何をしてくれるのだろうかと一瞬思ったが、台湾農家を尋ねるには、他に方法がない。だめで元々と思って入会した。
その会費を払うのにまた一苦労だった。海外送金のためにパスポートや顔写真やら、色々準備して、分からない手続きの中、何とか送金をした。フィレンチェの画材屋さんから画材を送ってもらったときの経験が役立った。その時のペイパルと以下言うものがパソコンの中に残っていたのでうまく行った。
石垣島で農業をしていると、品種が適合していないために、十分な栽培が出来ないと言う事を痛感するようになった。例えば石垣島の稲作の奨励品種は、ひとめぼれとミルキーサマーとユガフモチである。亜熱帯向きの品種ではない。「ひとめぼれ」は東北で作られているお米である。
その結果沖縄の稲作の反収は日本で一番低い。五俵程度である。多い地域と較べると半分位である。その理由は沖縄の農家が能力がないとか、熱意が低いからではない。そういうことを公言する人が居るが、見ていてよく働くのには驚くほどだ。品種が適合しないからが最大の理由だ。
稲は普通は15枚の葉を出す。小田原で35年の稲作で何度やってもそうだった。葉にマジックで番号を書いて確認している。ほぼ1週間に一枚である。ところが石垣島の稲作では13枚しか葉がでない。近所の田んぼで確認させてもらったが、どこの農家でも13枚である。
稲が十二分に生長できない。そうとしか考えられない。様々工夫しているが、今の品種で葉を15枚出すことは絶望的である。十分葉が揃わなければ、稲は畝取りは出来ない。果たして15枚葉を出すことの出来る品種はないものか、そう考えてきた。
当然石垣島の気候に適合した品種を作出しなければならないのだろう。ところが、国は新しい稲の品種の作出に力を入れなくなった。まして、南西諸島の稲作など止めれば良いくらいにしか考えていない。総理大臣が主食の米を止めて、輸出できる農作物を作るべきとする国会答弁する国である。
気候環境の近い台湾では収量はかなり高い。台湾は食糧自給を本気で考えていて、台湾に適合する稲の品種をどんどん作出している。インディカ種とジャポニカ種の交配品種などである。これは日本の稲作研究者磯博士が台湾で始めた品種改良を受け継いだものだ。
ただし、コシヒカリの味が良いと言うことで、台湾でもコシヒカリがかなり作られている。つまり、なかなかコシヒカリを越える新しい品種の作出に苦労していると言うことらしい。しかし、コシヒカリの味覚を越えたと言われる品種も現われている。
台中9号、台中194号、台南16号、台南11号、高雄147号。などがある。台梗9号は寒くても乾燥して硬くならず、白米に適し、また寿司にも適しています。台農71号益香米はタロイモの香りを帯びた、米のコンテストの常勝軍です。台梗2号はふっくらとして大粒で、粘り気があり弾力もあるためチャーハンに最適。
調べると様々なお米があるようだ。長い間20年間コシヒカリが作られていて、コシヒカリが作りやすくなっていると言うことは無いのだろうか。最近の記事では台湾で、コシヒカリの変種「いのちの壱」を作っている人が居るらしい。どういう苦労をしているのだろうか。これが一番知りたいところだ。
台湾では普通に日本のお米を栽培している人が居る。日本で種籾を手に入れて、持ち帰るようだ。台湾生産コシヒカリも日本産コシヒカリもスーパーで販売されていて、一番高いお米である。やはり他のお米よりも美味しいので、高くても売れるのだと思われる。作れるのか、作りにくいのか。どんな工夫をしているのか。そんなことが知りたい。
興味があるのは、台湾の美味しいと言われるお米を食べてみたいと言うことだ。日本人にも美味しいのであれば、そのお米を石垣島で作ることが出来れば、生産量も上がるし、石垣島の稲作の特徴になるはずだ。そのためには台湾政府の許可が必要になるのだろう。
石垣島は台湾と姉妹都市関係であるし、担当職員もいるらしい。そういう人が手続きをしてくれれば可能なのではないだろうか。今どういうルートで西表島で作られるようになったのかは分からないが、「台光」という台湾稲を作っている。栽培はしやすいようだが、味はまだ分からない。
大豆の品種や栽培方法も知りたい。小麦もどんな品種が作りやすいのか、興味がある。一体何時蒔くのが適切なのかも石垣島ではよく分からない。台湾では大豆を8月に蒔くとあるので驚いたのだが、実際の所を知りたい。
今回行くのは宜蘭県の南澳自然田と言う農家さんである。黄さんという方の所だ。民宿もやられているので、2泊お願いをした。上手く連絡が出来たのはWWWOOFの事務局で仲介をしてくれたからだ。やはり入会して良かったのだ。そして、またまた台湾の方の新設を痛感することになった。