goo blog サービス終了のお知らせ 

蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

きみの瞳が問いかけている

2021年11月24日 | 映画の感想
きみの瞳が問いかけている

柏木明香里(吉高由里子)は事故で視力を失い、コールセンターに勤めながら一人暮らし。駐車場の管理人のバイトをしていた篠崎塁(横浜流星)と知り合う。篠崎はキックボクシングのホープだったが、賭け格闘技?の駒だったことがあり、当時の胴元に付きまとわられていた・・・という話。

美人だがハンディがある女の子と暗い過去を隠しているイケメンの天才アスリートの恋物語、という梗概から予想される通りの筋立てで、海外ドラマからのリメイクということもあってかつての大映ドラマを彷彿とさせる映画だった。
主役二人のファンだったら十分に満足できる内容だとは思うが、多少なりともヒネリというか工夫が欲しいなあ、というところ。

護られなかった者たちへ(小説)

2021年11月22日 | 本の感想
護られなかった者たちへ(小説) (中山七里 宝島文庫)

仙台市内で、被害者を拘束したまま廃屋に放置して餓死させるという手口の殺人事件が連続しておきる。被害者二人には同一時期に同じ福祉保険事務所に勤務していたという経歴があり、当時その事務所でトラブルを起こして懲役刑となり最近出所した利根が容疑者として浮かびあがる、という話。

生活保護の申請者に対して簡単には受給させない役所の方針?を「水際作戦」というらしい。本書はその方針から生じた悲劇を描いているが、本書で描かれている事案はちょっと誇張があるのかな?と思えた。
ここまでひどいと受給できる人がほとんどいなくなりそうだけど。
一方で、行政書士にでも頼まないと素人が完璧な書類作成することは難しいだろうから、書式不備だけで容赦なくハネてしまいそうな気もする。民生委員とか運動家の人とかが同伴していなくて本人だけだとマトモにとりあってもらえない、とかもありそう??

読みやすさに配慮されていて、テーマへの訴求もあるのだけど、登場人物のキャラ(特に警察側)がちょっと薄いかな?と思えた。巻末の対談を読むとそれも意識的なのかもしれないが。

銃・病原菌・鉄

2021年11月19日 | 本の感想
銃・病原菌・鉄 (ジャレド・ダイアモンド 草思社文庫)

東南アジアで研究活動をしていた著者が、助手の現地人から、地域によって文明の発達度合いが全く異なるのはなぜなのか?と素朴に問いかけられて、その原因を考察したのが本書。

貯蔵可能で短期間に育成できる栽培植物があったか否か、家畜にできる動物がいたか否かがその大きな要因という。栽培植物の収穫・貯蔵により人口密度があがり、家畜動物から感染症をもらうことでいろいろな病原菌に抗体を持てたことも重要としている。

確かに最も多くのヒトを死亡させてきたのは、戦争でも飢餓でも自然災害でもなくて病原菌かもしれないなあ、と昨今の状況を見ると考えざるをえない。ヨーロッパ人も意識して感染症を新大陸とかに持ち込んだわけではないし、(アジアの熱帯雨林地域などで)抗体を持たない感染症が彼らの進出を拒んだことも知らなかっただろう。

ユーラシア大陸は東西に長く、同緯度の地域が多い(=気候が似ている)ことから栽培や牧畜その他の技術の伝搬スピードが早かったのではないか(逆に南北に長いアメリカ・アフリカ大陸は遅い)という説は単純だが、「言われてみれば」という納得感があって興味深かった。

それにしても本書における(人類や文明の)タイムスパンは恐ろしく長い。○○が伝わるのにたった千年しかかからなかった、的な記述がやたらに多くて気が遠くなる思いがした。

461個のおべんとう

2021年11月18日 | 映画の感想
461個のおべんとう

ミュージシャンの鈴本一樹(井ノ原快彦)は、妻と離婚し、一人息子の虹輝(道枝駿佑)と二人暮し。一浪して高校進学した虹花輝は、一樹に昼食の弁当を作ってほしいという。一樹はバンドの活動などの合間をぬって3年間弁当を作り続ける、という話。

一樹が作る弁当が豪華すぎて現実離れしているのでは?と思わされたが、どうも実話に基づいているということで、映画の中で何回も流される弁当の写真はホンモノのそれを使っているみたい。

料理をやったことがない父親が一念発起して弁当を作るうち、だんだん上手になってきて、最後にはすばらしい弁当を作り、息子が感激する・・・というストーリーを予想していたので、最初から一樹が手前よく作れてしまうのは予想外だったが、これも実話ならでは、なのかも。

そもそも離婚時に「どっちについてくる?」と聞かれた息子が父親を選ぶというのもフィクションの筋立てとして見ると不自然な感じがしてしまうが、これも実話だといわれると、そうなのかーとなってしまう。

すばらしき世界

2021年11月16日 | 映画の感想
すばらしき世界

三上(役所広司)は、殺人罪で長年服役した旭川刑務所を満期で出所する。身元引受人の庄司(橋爪功)の紹介で東京のアパートで一人暮しを始める。極度の高血圧症で働くことが難しく生活保護を受けるが本人は不満でなんとか仕事を見つけようとするが、うまくいかない。
放送作家?の津乃田(仲野太賀)はディレクターの吉澤(長澤まさみ)にそそのかされて三上を取材し始めるが・・・という話。

佐木隆三さんの「身分帳」を底本としているが、細部にはかなり異なる点がある。

終盤で三上は介護施設に就職する。ここは原作にないシーン。これまで一本気な侠客気質で何度も失敗してきた三上は、なんとか周囲に合わせようと苦労する。
しかし、ついに耐えきれないようなシチュエーションが訪れる。
この場面における役所さんの演技、表情が特に素晴らしい。DVDで見たので何度か見返してしまった。

原作(ほぼノンフィクションと思われる)を読んだ時に感じたのは、佐木さんをふくめ主人公の周囲の人が、かなりの問題児?の主人公に対してとても親身になって接していたことだった。映画でも庄司夫妻やスーパーの店長(六角精児)の人情が身にしみた。