蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

一路

2015年03月08日 | 本の感想
一路(浅田次郎 中央公論新社)

西美濃の旗本:蒔坂家の供頭(参勤交代時のロジ担当の役人)小野寺家の当主は自宅の火事で急死する。息子の一路は江戸詰めだったため全く何の申し送りもなく参勤交代(江戸行)のコーディネイトを迫られるが・・・という話。

著者はもともと「プリズンホテル」シリーズなどのユーモア?ミステリが出世作なので、現代モノでは、おふざけも交えながらストーリーが進む、みたいな作品が多いような気がする。
一方、時代モノでは、シリアス一辺倒(「蒼穹の昴」を初めて読んだ時は、それまでの作品との段差に驚いた)な作品が多いと思う。

本作は時代モノながら、ユーモア系な雰囲気の作品。
もっとも、序盤は参勤交代をテーマにした小組織内の暗闘とそれに対抗した下っ端役人の活躍を描く、みたいな感じでシリアス系だったのに、連載を重ねていくうち(多分、途中馬が会話するあたりから)ユーモア系になっちゃった、というのが本当のところではないかとも思えた。

小野寺一路は(なにしろタイトルが「一路」なのだから)当然主人公のはず、と思って読んでいると、中盤あたりから明らかに殿様の蒔坂左京太夫が主人公に変貌してしまう。これも長期にわたって連載を書くうち気が変わったんだろうなあ、と見える。

いつも同じことを書いてしまうのだが、本書が浅田作品でなければ「楽しく読み終えることができた」と締めくくれるのだが、ファンが浅田さんの作品に期待するレベルはもう少し高いと思うので・・・まあ、常に「蒼穹の昴」級を要求するのは無理としても、本作はちょっと肩の力が抜けすぎカモ。

蛇足:山口晃さん画の装丁が素晴らしいです。中身と表紙を見比べると趣きが高まります。装丁の費用って出版社もちですよね・・・山口さんを起用するなんて、相当な売上を見込んでないと無理なはずで、そういう意味では、さすが浅田さん、なんですよね。

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