芦原伸編集、ちくま書房
サブタイトルが「読み鉄」への招待。
「読み鉄」はテッチャン(鉄道おたく)の変化形です。
「乗り鉄」「撮り鉄」は普通ですが「読み鉄」は知らなかった。でも「駅弁鉄」「時刻表鉄」も私には初めて聞いたテッチャン仲間だった。
「蒸気機関車」「夜行列車」「駅弁」など鉄道旅をあらゆる角度から味わい尽くすエッセイ/短編20篇を「旅と鉄道」総括編集長・芦原伸の解説と共に贈るアンソロジー。
新旧いろんな文壇の方々が登場しています。面白い話も合ったり、だらだらと抑揚のない文だったり、キラッと鋭さが見える文だったり、、、いろいろです。
収録作家
種村直樹、立松和平、川本三郎、竹島紀元、関沢新一、芦原伸、内田百聞、酒井順子、森みどり、太宰治、井上靖、岡田喜秋、吉田健一、五木博之、小林しのぶ、阿川弘之、宮脇俊三、西村京太郎、檀上完爾、にわあつし
各駅停車
1 種村直樹 三陸で国鉄全線完乗した私小説
2 立松和平 東海道各駅停車の旅の状況描写が、さすがに作家だと思った
3 川本三郎 中央沿線の鉄道話を描いた小説について評論
蒸気機関車
1 竹島紀元 北海道の急行ニセコの重連について
2 関沢新一 映画に登場する蒸気機関車について
3 芦沢伸 最後まで残った蒸気機関車を求めて北海道への旅
夜行列車
1 内田百聞 奥羽本線の夜行列車の私小説
2 酒井順子 ブルートレインに乗って余部鉄橋を見に行く
3 森みどり 寝台列車、北斗星に乗って
駅
1 太宰治 夜行列車の見送り すごく短いエッセイですが切れが良い
2 井上靖 姨捨山は月の名所、空想が飛躍していて作家だなーーー
3 岡田喜秋 駅の表情について
駅弁
1 吉田健一 駅弁のうまさは庶民的であるに尽きる
2 五木寛之 時代が変われば駅弁の存在が変わる さらば青春の釜飯駅弁よ
3 小林しのぶ 四国駅弁食べ歩き
時刻表
1 阿川弘之 マニアにはとんでもなく暗記をしている人がいる
2 宮脇俊三 戦時の疎開先の列車で行った街で病になり朝鮮人労働者に担がれた
3 西村京太郎 トラベルミステリーで時刻表とにらめっこして不思議を発見
鉄道に興味がないとつまらないエッセイ集だろう。といっても純テッチャンにしては、反対にもどかしくて面白くないかもしれない。不純テッチャンにぴったりなエッセイです。
それにしても、相当なメンバーですね。五木寛之は元々旅好きだからいいとしても、あの太宰治や井上靖が鉄道に詳しいとは意外です。
戦時の炭鉱では朝鮮人が働いていたが、面従腹背で不気味だったという事実が興味深い。全体に有名作家のエッセイは言いたいことが端的に簡略に書かれていて読みやすい。それに描写が生き生きしているのはさすがです。国鉄上がりの作家さんは数字がやたらと細かく正確です。鉄道雑誌の方は描写がまどろっこしい所があった。
好き者と、物書きの違いだろう。
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