ブログで知り合った、ジャズドラマー「太鼓叩き」氏に絶品トンカツを教わった。
そのトンカツは霧の摩周湖のように澄んだ油で揚げたものらしい。
いつか体験しようと思っていたが、その日がやってきた。
JR大森駅近くの「丸一」。
その日は横浜へ出張。早朝高速に乗りこむ。運転手はI先輩(歩くGPSと呼ばれる彼の道案内は完璧だ!)である。
20数年前・まだ学生で只ただ「たらふく食べたかった」僕がいた。
そんなある日、友人がトンカツに誘ってきた。
友人・日大の学食のトンカツ定食は大きいぞ!
O・大きいってどのくらいよ?
友人・そりゃーお前、わらじのような大きさだ!
って、訳で「日大」水道橋に向かった。
出てきたトンカツたは只ただ大きく、「外観は」垂涎状態だった。
しかし、その衣に隠れた肉は厚さ5ミリ、しかも「黄金狂時代」でチャップリンが食べた靴の底のような固さであった。ここに僕のトンカツの原風景がある。
そのご自分で稼ぐようになって、大きく・厚く・ジューシーなトンカツも色々食べた。
が、この「太鼓」氏のトンカツ話は何か違う印象を僕に与えていた。(太鼓氏は時々白昼夢を見ることもあってあやしいが、この記事には女の子と「チュッ」なんてのが無いので信用した)
仕事を午前中やっつけて、午後大森駅周辺に到着。
店はJPS氏がすぐ見つける。
店構えは・・・・・・流行とは無縁のものだった。
以下太鼓氏の作法に従ってトンカツを体験する。
まずビールを注文する。おまけのおしんこをつまみながら、トンカツ定食を待つ。
カツの半分はビールの御供に、ソースは甘口、キャベツには辛口である。
ビールが午前中の疲れをそっと包む。程なく霧の摩周湖とんかつが運ばれた。
僕は端から3切れ辺りを口に入れる。
・・・・・・??????!!!!!(印象派的表現)
そのトンカツは衣と渾然一体となって口の中でとろけたではないか。
僕の頭の中にEドルフィーの「MISS ANN」が流れ、只ただむさぼり食った。
*この霧の摩周湖の油なべを撮ったが、霧で画像がボケているのが残念!
油は霧の摩周湖だった。
ご飯はガスで昔ながらの御釜を使って炊かれ、おひつに移される。
トン汁は肉・にんじんが惜しげもなく入っている。
主人は揚げたてのカツをまな板に載せ、一呼吸置く。そして、Mローチのブラッシュワークさながらの、正確なリズムで程よい大きさに切り分けられる。
館林にも「福よし」「美延」と名店はある。しかし違うのである。肉の芯に火が通るのを見極め、肉の甘さ・肉の柔らかさを極限まで引き出す技が凝集されて、このトンカツは存在していた。
あの「黄金狂」の原風景は、新しい風景を僕に与えて、僕らは大森を後にした。