殿は今夜もご乱心

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手抜き料理・冷しゃぶ

2018年06月23日 09時47分07秒 | 手抜き料理
冬‥忙しい主婦は、鍋物を味方に乗り切った。

材料を切って並べるだけで、あとは鍋が何とかしてくれる。

ものすごく忙しい時には、おでんという名の援軍もいた。

シチューと呼ばれる助っ人もいた。


が、夏はどうだ。

四季を問わず頑張ってくれるカレーの他に

思いつくのはそうめんと冷やしうどんぐらい。


しかし、彼らは真の味方ではない。

食べる者は涼しかろうが、作る者は暑い‥

家族はたいして喜ばず、栄養バランスも良いとは言えない‥

払う犠牲に見合った成果が得られないじゃないか。


麺類を茹でると暑いのは

大量の湯を沸かす時に発生する熱が原因である。

電磁調理器ならそうでもないが、ガスだと台所の室温は確実に上がる。

麺類に限らず、調理に使う湯の量を最小限にとどめるのは

夏の料理を楽しく行う基本である。


「野菜は、たっぷりのお湯でサッと茹でて色良くウンヌン‥」

料理本には、すべからくそう書いてあるが

たっぷりでなくても野菜は茹でられるし

よしんば多少色が悪くたって、それが何だというのだ。

煮物だってギリギリの水分で仕上げ、フタをして放置しておけば

材料の持ち味を生かしつつ、味はしっかりつく。



「下手の長糸(へたのながいと)」

裁縫の世界には、そんな言葉がある。

下手な人ほど、針に通した糸が長いという意味だ。


初心者は針穴に糸を通す作業を面倒がり

途中で補充しなくていいように糸を長く取る。

しかし長過ぎると、布の性質によっては糸がもつれたり切れたりして

かえって作業効率が下がる。


それに糸を長く取ると、ひと目縫うたびに

針を持った腕を右側へ大きく上げなければならない。

ひと針ごとに左側、つまり進行方向に向かって

斜め上に針を持ち上げるという裁縫の基本動作では

長い糸が引っ張りきれないのだ。


基本動作の逆を行えば、特に絹織物など上質な布だと

仕上がりに差が出るし、何よりその姿は見苦しい。

昔は皆、着物だった。

女が頻繁に脇を上げ、着物のたもとを揺らして針仕事をするのは

みっともない行為と嘲笑されていたのだ。


料理にも言えるのではなかろうか。

「下手の大鍋」

病院の厨房に勤めていた頃、つくづく感じて思いついたフレーズ。

初心者は適正な湯量がわからないため

大は小を兼ねるとばかりに、やたら大きな鍋で湯を沸かしたがる。

煮物なら、ザブザブのダシに材料を突っ込むところからスタートして

ひたすら煮詰めようとする。

こうして時間をかけ、光熱費を無駄にしながら暑がっているのだ。



前置きが長くなったが

そういうわけで麺類を信頼できない私にとり

夏の味方は冷しゃぶである。

湯を沸かして肉を茹でるのは確かに暑い。

が、湯の量は麺類の比ではない。

家庭なら、インスタントラーメン1個分の湯で十分だ。



『冷しゃぶ』

①鍋に湯を沸かし、すりおろしたショウガの絞り汁を入れる。

ショウガの量は3センチ角程度で十分。

②豚肉のロース、またはモモの薄切りを少量ずつ入れ

色が白く変わったらザルに取る作業を繰り返す。

③ザルに積み上げた肉を冷めるまで放置。

こだわる人は、粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やすといい。

④食べやすい大きさに切り、レタスの千切り、キュウリ、オクラ

トマト、玉ねぎスライス、大葉、ミョウガ、茹でたモヤシ、ワカメなど

好きな野菜サラダの上に置いて、好みのタレでどうぞ。

以上。


「冷しゃぶって、茹でた肉を氷でしめるんじゃないの?」

これを教えた人は、たいてい聞き返す。

料理本で読んだ知識から、冷しゃぶは氷がたくさん必要で

ザルやボールをいくつも使う面倒メニューになっているのだ。


私も以前はそう思っていた。

しかし、病院の厨房で氷が不要なことを知った。

そもそも私の勤めた厨房には、製氷の習慣が無い。


病院のメニューはカロリーと予算の制約から、豚モモだったが

ショウガ汁が柔らかく仕上げてくれるので

「煮え過ぎて硬くなった」ということは無い。

入院患者は入れ歯の年寄りばっかりだ。

その年寄りに食べさせるのだから、柔らかくないわけがない。


牛肉でも大丈夫だが、安物は硬くなるのでロースが望ましい。

茹で時間はごく短めで、ピンク色になるかならないかのうちに

湯から上げる。

また、匂いが強いのでショウガ汁は多めに入れる。

が、そうまでして高い肉を食すより、いっそ別の料理で食べた方が賢明である。


冷しゃぶは、一皿で肉と野菜がたくさん食べられる上

ラップをして冷蔵しておけば、遅れて食べる者にもサッと出せる。

三世代同居で、家族の食事時間がまちまちという環境の私には

暑さという犠牲に見合うどころか、大きく上回る成果が得られる

信頼のメニューである。
コメント (4)
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