先日、同級生のマミちゃん、モンちゃんとイチゴ狩りに出かけた。
子供がまだ小さい頃、リンゴ狩りとサクランボ狩りには行ったことはあるけど
イチゴ狩りは初めて。
リンゴ狩りはそんなにバクバク食べられるもんじゃないし
サクランボ狩りは監視の人が付きまとい
「1本の木で一粒か二粒、味を見る程度にしてくださいね」
とうるさかった。
そんなに惜しいんなら客を呼ぶな…と思ったものである。
ブドウ狩りは高校の夏休みに妹とバイトをしたので
お金を出してまで行く気は起きない。
電車でふた駅の、今住んでいるこの町にあるブドウ園だ。
普段は地元のおばさんが10人ほど働いているが
お中元シーズンにはブドウを買いに来る人が増えて人手が足りないため
お盆までの2週間弱、数人の高校生バイトを雇っていたのである。
ブドウ園の持ち主夫婦は、ケチで意地が悪かった。
大人になったら、ああはなるまいと誓ったものだ。
雇い主がそんなだから、働いているおばちゃんたちも萎縮して
卑屈な人が多かったが、中には優しい人もいた。
大人になったら、ああいう人になろうと誓ったものだ。
私と妹をバイトに誘った2人の同級生は過酷な労働に音をあげ
一日で来なくなった。
私たちも辞めてしまおうかと思ったが、二人いなくなったので辞めにくくなり
そのままシーズンが終わるまで通った。
そこで学んだ知識?により、ブドウの品質にはうるさくなった私である。
いずれにしても私と“狩り”は相性が良くないと思っていたので
長い年月、狩りと名のつくものに手を出す気は無かった。
が、急きょ行くことになったのは中学と高校の同級生トシ君が
イチゴ園の管理人をしていると聞いたからである。
中高で野球部だったトシ君とは、わりと仲が良かった。
彼は野球部の主将、私はブラスバンドの副部長だったため
試合の応援で接触があったからだ。
が、我々の地元には小学校の同窓会しか無いので
大人になってから接触したことは無い。
知っている消息は勤務先と、私と同じ町に家を建てたことぐらい。
もっとも彼は長年、とある市議の選挙ドライバーをしていて
4年に1回、選挙カーですれ違っていたので顔は見ている。
「定年間際に色々あって、遠い島にある系列会社のイチゴ園に飛ばされた。
桃より甘いイチゴだから、ヤツが退職する前に行った方がいい」
高校の野球部だった子に言われ、その気になった私は
トシ君と小学校から一緒のリッくん(ここに時々出てくるお茶の師範)
に電話して、連絡してもらう。
しかしリッくんが伝えてきたのはトシ君の携帯番号だけで
あとは本人同士でよろしくということだった。
そうだった…この子、人の世話が苦手なのだ。
チッ!役に立たない男、いやゲイだ。
トシ君の声を聞いたのは、実に46年ぶり。
思わず「トシ君?」と名前を呼んでしまった。
「おお!みりこんちゃん!」
向こうもすっかり高校生に戻っとる。
彼の話によるとイチゴ園は予約でいっぱいだそうだけど
曜日と人数によっては調整できるということで
急きょ、この日曜日に行くことになった。
リッくんも行きたがり、バイトを休める3月まで待ってくれと言ったが
見捨てた。
だってこの人、経済的理由で車を出したがらない。
そのためかどうかは知らないが、日頃から極度の方向音痴を主張している。
イチゴ狩りの世話もしてくれなかったし
彼が我々に混じるメリットは、彼にあっても我々には無いからだ。
こうして25日の日曜日、マミちゃんの運転でイチゴ園に向かった。
それにしても島は遠く、1時間半近くかかった。
橋が通っているので地続きではあるが
トシ君はほぼ毎日、この道のりを通勤しているのだ。
彼の性格だと、この通勤を楽しんでいるだろうし
職場の人たちとも仲良くやっていると確信しているが
物理的には早く辞めろと言われているのと同じじゃないか。
若い頃は、職場にいる年配者が鬱陶しかったが
いざ自分が年かさになると、このような扱いが身に染みる。
「よう来たのぅ!」
イチゴ園に着いたら、トシ君が出迎えてくれた。
おお、がっしり体型はそのままだけど、頭も眉毛も真っ白になっとる。
が、やっぱり農園ライフを楽しんでいる様子。
景色もいい。
入場料一人あたり1,700円を支払い
トシ君の案内でさっそくイチゴ狩りにいそしむ我ら3人組。
甘くて美味しいわ。
イチゴを食べるために昼を抜き、午後1時の予約にしたけど
そうたくさん食べられるもんじゃないわね。
40分の制限時間より早く、ギブアップ。
マミちゃんは「もう当分、イチゴはいいわ」とつぶやき
モンちゃんは「あと2年、イチゴ無しで生活できる」と言った。
それからトシ君に連れられ、同じ敷地にあるカフェへ。
彼はそのまま仕事に戻ったけど、3人のコーヒー代は払ってくれていた。
こういうところが、トシ君なのよね。
カフェのおばちゃんもトシ君のファンらしく、彼の昔話で盛り上がった。
カフェの隣にあるレストランで食事をし、お土産を買って帰ることになった。
このイチゴ園は狩るだけでイチゴの販売をしてないので、イチゴのお土産は無し。
コーヒーのお礼を言うため、トシ君に声をかけたら
彼はレモンやデコポンを詰めた袋を3つ持って来て
「土産じゃ」
と言いながら我々にくれた。
我々のために用意していたらしい。
そして彼と4人、駐車場で1時間ほど立ち話をしたが
午前中は雨だったし夕方が近づいていたので、ものすごく寒かった。
ビニールハウスだから暖かいと思い込んでいた我々は、軽装だったのだ。
ビニールハウスには間違いないけど、曇っていたし
イチゴが傷むので暖房なんか無いし、そう言えば着いた時からずっと寒かった。
イチゴは寒い時期が美味しいそうだけど、こう寒くっちゃ…。
遭難するかと思った。
子供がまだ小さい頃、リンゴ狩りとサクランボ狩りには行ったことはあるけど
イチゴ狩りは初めて。
リンゴ狩りはそんなにバクバク食べられるもんじゃないし
サクランボ狩りは監視の人が付きまとい
「1本の木で一粒か二粒、味を見る程度にしてくださいね」
とうるさかった。
そんなに惜しいんなら客を呼ぶな…と思ったものである。
ブドウ狩りは高校の夏休みに妹とバイトをしたので
お金を出してまで行く気は起きない。
電車でふた駅の、今住んでいるこの町にあるブドウ園だ。
普段は地元のおばさんが10人ほど働いているが
お中元シーズンにはブドウを買いに来る人が増えて人手が足りないため
お盆までの2週間弱、数人の高校生バイトを雇っていたのである。
ブドウ園の持ち主夫婦は、ケチで意地が悪かった。
大人になったら、ああはなるまいと誓ったものだ。
雇い主がそんなだから、働いているおばちゃんたちも萎縮して
卑屈な人が多かったが、中には優しい人もいた。
大人になったら、ああいう人になろうと誓ったものだ。
私と妹をバイトに誘った2人の同級生は過酷な労働に音をあげ
一日で来なくなった。
私たちも辞めてしまおうかと思ったが、二人いなくなったので辞めにくくなり
そのままシーズンが終わるまで通った。
そこで学んだ知識?により、ブドウの品質にはうるさくなった私である。
いずれにしても私と“狩り”は相性が良くないと思っていたので
長い年月、狩りと名のつくものに手を出す気は無かった。
が、急きょ行くことになったのは中学と高校の同級生トシ君が
イチゴ園の管理人をしていると聞いたからである。
中高で野球部だったトシ君とは、わりと仲が良かった。
彼は野球部の主将、私はブラスバンドの副部長だったため
試合の応援で接触があったからだ。
が、我々の地元には小学校の同窓会しか無いので
大人になってから接触したことは無い。
知っている消息は勤務先と、私と同じ町に家を建てたことぐらい。
もっとも彼は長年、とある市議の選挙ドライバーをしていて
4年に1回、選挙カーですれ違っていたので顔は見ている。
「定年間際に色々あって、遠い島にある系列会社のイチゴ園に飛ばされた。
桃より甘いイチゴだから、ヤツが退職する前に行った方がいい」
高校の野球部だった子に言われ、その気になった私は
トシ君と小学校から一緒のリッくん(ここに時々出てくるお茶の師範)
に電話して、連絡してもらう。
しかしリッくんが伝えてきたのはトシ君の携帯番号だけで
あとは本人同士でよろしくということだった。
そうだった…この子、人の世話が苦手なのだ。
チッ!役に立たない男、いやゲイだ。
トシ君の声を聞いたのは、実に46年ぶり。
思わず「トシ君?」と名前を呼んでしまった。
「おお!みりこんちゃん!」
向こうもすっかり高校生に戻っとる。
彼の話によるとイチゴ園は予約でいっぱいだそうだけど
曜日と人数によっては調整できるということで
急きょ、この日曜日に行くことになった。
リッくんも行きたがり、バイトを休める3月まで待ってくれと言ったが
見捨てた。
だってこの人、経済的理由で車を出したがらない。
そのためかどうかは知らないが、日頃から極度の方向音痴を主張している。
イチゴ狩りの世話もしてくれなかったし
彼が我々に混じるメリットは、彼にあっても我々には無いからだ。
こうして25日の日曜日、マミちゃんの運転でイチゴ園に向かった。
それにしても島は遠く、1時間半近くかかった。
橋が通っているので地続きではあるが
トシ君はほぼ毎日、この道のりを通勤しているのだ。
彼の性格だと、この通勤を楽しんでいるだろうし
職場の人たちとも仲良くやっていると確信しているが
物理的には早く辞めろと言われているのと同じじゃないか。
若い頃は、職場にいる年配者が鬱陶しかったが
いざ自分が年かさになると、このような扱いが身に染みる。
「よう来たのぅ!」
イチゴ園に着いたら、トシ君が出迎えてくれた。
おお、がっしり体型はそのままだけど、頭も眉毛も真っ白になっとる。
が、やっぱり農園ライフを楽しんでいる様子。
景色もいい。
入場料一人あたり1,700円を支払い
トシ君の案内でさっそくイチゴ狩りにいそしむ我ら3人組。
甘くて美味しいわ。
イチゴを食べるために昼を抜き、午後1時の予約にしたけど
そうたくさん食べられるもんじゃないわね。
40分の制限時間より早く、ギブアップ。
マミちゃんは「もう当分、イチゴはいいわ」とつぶやき
モンちゃんは「あと2年、イチゴ無しで生活できる」と言った。
それからトシ君に連れられ、同じ敷地にあるカフェへ。
彼はそのまま仕事に戻ったけど、3人のコーヒー代は払ってくれていた。
こういうところが、トシ君なのよね。
カフェのおばちゃんもトシ君のファンらしく、彼の昔話で盛り上がった。
カフェの隣にあるレストランで食事をし、お土産を買って帰ることになった。
このイチゴ園は狩るだけでイチゴの販売をしてないので、イチゴのお土産は無し。
コーヒーのお礼を言うため、トシ君に声をかけたら
彼はレモンやデコポンを詰めた袋を3つ持って来て
「土産じゃ」
と言いながら我々にくれた。
我々のために用意していたらしい。
そして彼と4人、駐車場で1時間ほど立ち話をしたが
午前中は雨だったし夕方が近づいていたので、ものすごく寒かった。
ビニールハウスだから暖かいと思い込んでいた我々は、軽装だったのだ。
ビニールハウスには間違いないけど、曇っていたし
イチゴが傷むので暖房なんか無いし、そう言えば着いた時からずっと寒かった。
イチゴは寒い時期が美味しいそうだけど、こう寒くっちゃ…。
遭難するかと思った。