殿は今夜もご乱心

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詐欺電話

2023年12月12日 15時43分53秒 | みりこんぐらし
近頃、誰でも知っている電力会社を名乗り

料金のシステムが変わるだの、お得なプランだのと

ひたすら自動音声を聴かせる電話が増えた。

言われるままにプッシュボタンか何か押したら

とんでもない外国へ繋がって厄介なことになるタイプだ。

他人から金銭をせしめようとしながら、自動音声に任せるとは何と横着な。

詐欺の風上にも置けない。


また数日前には、とある商店を営む知り合いの所へ

年金の還付金詐欺の電話がかかってきたそうだ。

手違いで年金を少なく支払っていたので返す…

年金事務所の職員を名乗る男が言う、その金額は23,850円。

多ければ警戒されるし、少なければ飛びつかないため

微妙な線を突いている。


相手は23,850円を振込むための確認と称して

年金を受け取っている通帳の口座番号をたずねたので

知り合いは受話器を置き、通帳をしまってある部屋へ移動しようとした。

が、そこへたまたまうちの次男が居合わせており

電話機のナンバーディスプレイに表示されている

相手の電話番号をスマホで検索したところ、“詐欺電話”と出たので

通話を打ち切らせた。

今どきは警察や一般人が、怪しい電話番号をネットで公開しているそうで

調べるのは常識なんだと。


これは、そのまま話し続けていたら銀行へ行かされ

うまいこと言いくるめて残高をどこかへ送金させられるという

今ではすでに古典となった手口と思われる。

知り合いは確かに年金受給者ではあるが

頭も身体も私よりずっとしっかりして若々しいのに

急に電話がかかると、うっかりこういうことになるみたい。

他人事ではない。

今どきは怪しげな電話がかかるため、電話を解約したり

自動音声で「この電話は録音されます」とかなんとか

長ったらしい前台詞を流して相手の気力を削ぐ措置を取る家庭が増えているのも

うなづけるというものだ。


一方、うちには電話イノチの義母ヨシコがいるので無防備を続けている。

つい先日の夕方、そんな我が家へ電話がかかり

ヨシコは何やら話していたが、代わってくれと言ってきた。

「◯◯市(うちらの居住する市)から、何か来るんだって。

私じゃようわからんから、聞いてみて」

そう言われて交代したら、生身の女性の声。

「こちらは⬜︎⬜︎⬜︎と申します」

社名らしきカタカナを並べたが、忘れた。


「この度、私どもは◯◯市と提携いたしまして

戦争や災害で被害を受けた方々への支援物資を集めております。

現在、お近くをスタッフが回っておりますので

食品や衣類など、支援に役立ちそうな物がお家にありましたら

ぜひお出しいただきたいと思います」

年の頃は30半ば、しゃべり慣れた美しい声だ。


意地の悪い私は、ここで言う。

「食品や衣類の他に、不要な貴金属なんかもでしょ?」

「はい、それはもう。

現金に換えて支援することができますので」

「支援だったら、うちがしてもらいたいわよっ!」

「えっ?あの、ホホホ…」

向こうがたじろいているうちに電話を切った。


公共機関の名をかたる手法、昔は確かにあった。

「消防署の方から来ました」と言って、高い消火器を売りつけようとしたり

「教育委員会の方から来ました」と言って

高い幼児教育の教材を売りつけようとしたり。

もちろん買わなかったが、このようなセールスに何度か遭遇したものだ。


幼児教育の教材を売りつけようとした女なんて、感じ悪かったぞ。

「文部省(当時)の決定で

来年から教育指導要項がガラリと変わるので

教育委員会の方も急いでいるんです。

この教材は即決された方が優先されるので今、決めてください。

でないとお子さんが小学校に上がられた時、勉強から置いて行かれます」

40過ぎの長男が未就学の頃だから、どんだけ昔かわかるだろう。


教育委員会という名称がお初だったらビビっていたかもしれないが

うちの両親の仲人が市役所の偉いさんだったため

聞いてはいけない内部の話など、わりと耳慣れていた。

あの教育委員会が文部省のお達しに敏感に反応し

取り急ぎ有料の教材を販売して回るなど考えられなかったのだ。

それで断ったら、「親なのに、お子さんの成績に興味が無いんですねっ」

と捨てゼリフ。

心配せんでええ。

教材を買おうが買うまいが、うちの息子はパッパラパーだ。


時代は移ってセールスはネットや電話が主流となり

相手の顔が見えなくなると、使うアイテムが大胆になった。

どこそこの方から来ました…というセリフは

後で都合が悪くなると、「あれは方角のことだった」

と言い逃れをするための伏線だ。

しかし面が割れていなければ、堂々と市役所の名前を出すことができる。

電力会社や年金事務所の件もそうだけど、まずは揺るぎない固有名詞を出すと

カモは信用してしまうのだ。


老人は加齢と共に、公共の名前に弱くなる。

年を取って心細くなると、冷たい身内より公共機関の方が

より身近で頼り甲斐があるように感じるらしい。

ヨシコも“市”と聞いて、強い反応を示した。


そして支援という言葉で、老人の心をくすぐる。

年を取っても人の役に立ちたい老人は多い。

気の毒な人たちに手を差し伸べることができたら…

公共機関と福祉のダブル攻撃で、老人のハートを鷲づかみ。

よく考えたものだ。


広島の息子に引き取られ、老人ホームに入った隣のおばさんが

まだ隣に住んでいたら、絶対に騙されていると思う。

貴金属などの金めな物を売るのは本人の自由だけど

市の名前をかたって嘘を言うヤツに騙されて売るのはシャクじゃないか。


それにしても電話をかけてきた女性は

張りがあって滑舌が良く、それでいながらソフトな

本当に美しい声だった。

ちょっとジャブを撃ったら狼狽えるところなど

人柄もそこまで悪質ではないと思われる。

これだけしゃべれるのなら、人を騙すバイトをするより

衆議院の解散も近いことだし、ウグイスをやったらどうだ。

もったいない。
コメント (2)
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