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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

現場はいま…新たな展開なのか?・1

2022年02月19日 11時09分25秒 | シリーズ・現場はいま…
寒さのため、唯一の持病である五十肩…いや、すでに六十肩か…

が悪化したのと、会社のことで少々慌ただしかったため

ご無沙汰してしまった。

肩の方は治療に通ってずいぶん回復したが、会社の慌ただしさは現在も継続中。

徐々に落ち着いていくのか、これからもっと騒がしくなるのかは今のところ不明。


その件に触れる前に、1月から入社した五十代半ばの重機オペレーター

シゲちゃんのことをお話しさせていただこう。

彼は、正月休みの明けた1月7日から初出勤することになっていた。

しかし前日の1月6日に急な仕事が入り、夫が一人で対応。

明日から出勤する会社の様子を見に来たシゲちゃんは…

そう、このように意味不明な行動をするのが彼…

とにかくその光景を目撃して、次男に連絡してきた。

「専務(シゲちゃんは夫のことを昔の肩書きで呼ぶ)が重機に乗ってる。

僕は行かなくてよかったんだろうか?」

次男が言うには、泣きそうな声だったそう。


「大丈夫、今日は親父だけ出てるから。

シゲちゃんは明日からお願いしますね」

そう言ったら、彼は落ち着いたという。

我々はそれを聞いて、シゲちゃんのこれまでの苦労をしのぶのだった。


彼は職場でからかわれたり、のけものにされることが多く

皆に連絡が回っても彼だけ知らされないことがよくあったと聞いている。

休みのはずの会社で夫が働いているのを見て、彼は悲しくも驚愕したのだ。

「シゲちゃんが入ったら、安心して働けるように気を配ろう」

我々は、そう誓い合った。


こうしてシゲちゃんは会社の一員になったが

ブランクが長かったのと、コンピュータ制御の重機が初めてなのとで

期待通りの即戦力とはいかず、夫が密かにイラッとしているのは見て取れた。

また、社員一同の反応もあまり良いものではなかった。

滅多に口を開かないシゲちゃんだが、必要にかられてその滅多が訪れた際に

言い方が上から目線でムッとするらしい。


それもそのはず、彼の最初の職歴は国土交通省の役人。

お役所系の前歴を好む本社が飛びつき

前任のスガッちより好待遇で迎えたのが当然だったのはともかく

職を転々としてきたシゲちゃんが、おとなしいにもかかわらず

あちこちでいじめられてきた原因はこういう所かもしれなかった。


ともあれシゲちゃんには気長に練習してもらうことにして、現在に至っている。

スピードさえ望まなければ、どうにかやれるまでに成長し

「たまに物を言うと憎たらしい」との評判も、社員に役人の前歴を話すと納得した。

満点の人間なんて、いない。

そんな人は、どこか素晴らしい職場で高給を取っているだろう。

うちに、そんな人は来ない。



さて、力士並みに大きな女子事務員、旗野さん…通称トトロも続いている。

仕事はあんまりやらないが、次男は彼女を諜報部員として活用するようになった。

事務所で小耳に挟んだ本社サイドの密談や

これはと思った電話の内容を次男に伝える役目である。


本社に巣食う月給泥棒たちに寝首をかかれないように、情報収集は必要だ。

夫婦共に事業主の子供として育った我々は

転職を繰り返して今の仕事に流れ着いた人々の気持ちに疎いところがある。

一例を挙げれば、我々が最も大切にしているのは商道における義理やスジだが

彼らが最も大切なのは自分の手柄、自分の保身、自分の利益。

我々の視線は主に安全と顧客に注がれるが、彼らの視線は上司一本。

見解の相違がはなはだしいため、こちらが気にも留めない些細な事柄が

彼らにとっては一大事だったり、また、その逆もあるというものだ。


ずいぶん慣れたとはいえ、このような価値観の相違から生じる問題は多く

それが大きくなって禍根が残ることは未だにある。

そのため、まず彼らが何を企だてているのかを把握する。

その企だてがたいてい失敗するのは、経験でわかっている。

だから失敗した時、勝手にこちらのせいにされないよう

複数の対応を考えておいて、無駄な消耗を防ぐのが目的である。


トトロは平素の怠惰な仕事ぶりに似合わず、実に的を得た情報を的確に流す。

皆、彼女を巨大なオブジェと認識しているのか、ノーマークでしゃべるため

トトロの暗躍には気づいてない。

仕事では使えないが、スパイとしてはなかなかのもの。

人間、何かの取り柄はあるものだ。


仮病大王の佐藤君と、天然アサハカのヒロミも相変わらず働いている。

ヒロミは働くうちに、佐藤君が本社からも我々からも嫌われていることを認識したらしく

中でも我々のボスである河野常務が夫に漏らした一言に、強い衝撃を受けたようだ。

「佐藤は口が二つあるけんのぅ」。


事務所に入って来て、これをたまたま聞いてしまったヒロミは

「ニコイチと思われたら私も危ない」

自分からそう言いだして、少しばかり距離を置き始めた。

調子のいいヒロミのことだから信用には値しないが

それでも彼女は時々、息子たちにくっついて慣れないチャーター…

つまり出仕事に行くようになった。


拘束時間の長い出仕事が嫌いな佐藤君にあれこれ吹き込まれ

心底嫌がっていたヒロミだが、コツさえつかめば体力的に楽だと知り

「早く行けばよかった」と言う。

配車係の次男が、楽で技術のいらない現場を厳選してヒロミに振っているとは

永遠に気づかないだろう。

《続く》
コメント (4)
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