殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

現場はいま…新たな展開なのか?・2

2022年02月25日 09時38分23秒 | シリーズ・現場はいま…
シゲちゃんにトトロ、そして佐藤君とヒロミの近況をお話ししたので

昨年の春に入社して秋には退職したシゲちゃんの前任

スガッちのこともお話しさせていただこう。

彼は正社員で雇用してもらえるということで、隣の市にある三交代制の工場へ転職したが

またいつの間にか転職して、やはり隣の市の山奥にある産業廃棄物処理場で働いていた。


その彼が先日、ふらりと会社に現れ

産廃処理場を辞めて、ここへ戻りたいと夫に言ったそうだ。

そこは家から遠く、10時と3時の休憩も無く

夕方5時までビッチリ働かされるので、とてもしんどいのだそう。

そして仕事のひとつに、墓じまいをした墓石の粉砕があり

毎日、それが怖くてしょうがないと言う。

仕事は変えるたびに、自分の理想とはかけ離れていくものだ。

いい仕事なんて、あるわけないじゃないか。

夫が丁重に断ったのは言うまでもない。



さて、本題へと移らせていただこう。

今の慌ただしさの原因だ。

我々一家が何を考えているかというと、転職さ。

まだはっきり決めているわけではない。

だって、仕事は変えるたびに、自分の理想とはかけ離れていくものだと

さっき言ったばかりじゃないか。

考える時間はたっぷりあるので、ゆっくり考えるつもりだ。


息子たちはともかく、我々夫婦はこのまま可もなく不可もなく夫の定年を迎え

ありがとうございました、と穏やかに去る予定だった。

4年前、夫は還暦を迎えた時点で、当面は70才までの勤続を保証され

その後の進退や待遇は本人の体調を考慮した上で

本社と話し合って決めることになった。

当時の我々は、それで十分だと思った。

今年に入り、ひとまずのターニングポイントと定めた70才まで

残すところ5年となったが、やはりそう思っていた。


とはいえ私は一方で、夫がしんどくなったら

いつ退職したってかまわない気持ちでいた。

夫個人に対する本社の配慮はありがたいが、会社に対しては違う。

変なヤツを送り込んではゴタゴタを引き起こす繰り返しに

しぶとい私がうんざりしているのだから、単純な夫の精神的苦痛は相当なものだ。

夫の社会人生活の最後がこれでいいのか…とも思うようになった。

年を取って残された日々が目減りしてくると

そのわずかな年月が、ことさら貴重に思えてくる。

人生の晩秋を迎えても、いまだ姑仕えを続ける我が身のザンネンを痛感するにつれ

夫の無念をも感じられるようになったのだ。


若い頃から父親に押さえつけられ、五十を過ぎたら

その父親が作った借金が原因で合併を余儀なくされ

今度は合併先に押さえつけられる身の上になって、はや10年。

夫は本社に巣食うゲスどもに陥れられ、足を引っ張られ、罪を着せられてきたが

そのゲスどもはさんざんひどいことをしておきながら、危なくなると夫に泣きついた。

そして問題がおさまると、自分の手柄にする。

ゲスとは、そういう生き物だ。


それでも夫が耐えたのは、親を養っているからである。

私が「親を扶養してござい」と威張ったところで

彼の稼ぎ出す現ナマが無ければ日干しじゃ。

その彼をそばで見てきて、このまま終わるのが何だか気の毒になってきたのだ。


そんな心境になり始めた、このところ…

我々の守護神だった本社の河野常務の衰弱が目立ってきた。

数年前に癌の手術したので仕方がないが、70才を過ぎてめっきり年老いた。

引退時期が近づいているのは、誰の目にも明らかだ。


そうなると急に強気になったのが常務の子分、永井営業部長。

50代半ばの彼は、得意の嘘と芝居を駆使して取締役に成り上がった

卑怯が服を着ているような男だ。


常務の引退後、その仕事を受け継ぐことが決まっている彼は

当然、我が社も担当することになる。

彼は自発的にその準備段階に入ったらしく、何やかんやと仕事に口を出し始めた。

仕事を理解して口を出すならいいが、何も知らないまま見当違いの指示をするので

夫や息子たちは辟易している。


中でもうるさいのは、チャーターの配車。

チャーターとは、うちのダンプだけでは回らない時

よその同業者から応援に来てもらうことだ。


このチャーターに、地元を使えとうるさいのなんの。

だけど地元の業者は規模が小さいので、台数が揃わない。

特に同じ市内だと、うちが忙しい時はよそも忙しいため、頼んだって来られないのだ。

しかも市内の同業者といえば、反社会勢力の企業舎弟なので付き合いをしていない所か

あの藤村と癒着して我が社の乗っ取りを企んだM社。

M社は藤村と癒着しながら、神田さんのパワハラ、セクハラ問題の時には

裏で彼女をたきつけ、問題がさらに大きくなるよう立ち回っていたことがわかっている。

精神科の診断書を取った上で労基へ駆け込め…などのアドバイスを行ったり

藤村の発言や無線の会話を録音するボイスレコーダーを彼女に貸したのはM社の社員だ。


つまり藤村はM社にチヤホヤされてヨコシマな野心を膨張させながら

一方ではしっかり陥れられていたピエロである。

かたや反社、かたや盗っ人以下。

究極の選択にもほどがあるというものだ。



とはいえ永井部長が異常に地元にこだわる理由を、我々は知っていた。

彼の大嫌いなF工業を使いたくないからだ。

F工業は、記事で何度か触れたことがある。

市外の会社だが、規模が大きいので急な要請にも対応でき

ドライバーの技術と運転マナーが良いため、安心して任せられる所だ。

我々もF工業の社長を始め社員と親しく

知り合ってからここ数年は、お互いに助け合いながら仲良くやってきた。


しかし昨年秋、永井部長はこのF工業とトラブルを起こした。

我々の業界においては、けっこう大きなトラブルだ。

F工業の社長からは、その内容をすでに聞いていたが

永井部長は誰にも知られてないと思っている。

かなりカッコ悪いので、誰も知らないと思い込みたいのだろう。


ともあれ河野常務の引退後、彼がうちを担当するようになったら

こちらへも嬉しげに顔を出し、上司風を吹かすようになるのは明白。

すると、どうしてもF工業と顔を合わせる機会が出てくる。

だから彼は今のうちに、F工業を切っておきたいのだ。


けれどもF工業を名指しで排除するわけにはいかない。

切りたい理由を説明する必要が出てくるからだ。

そこで「地元を使え」と強行に主張。

地域密着、地元貢献は、古来より本社のモットーである。

「そのモットーをないがしろにして、市外の業者を使っている」

彼は言い出し、我々は本社の方針にたてつく違反者ということになった。

《続く》
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