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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

現場はいま…冬の陣・1

2021年11月20日 14時12分42秒 | シリーズ・現場はいま…
先月の15日、スガッちが退職した。

この春、夫のサポート役として入社したものの

重機の操縦をマスターしないまま終わった、私と同い年のパート社員である。

9月末で辞めるという話だったが、次の職場の初給料日が遠いため

うちの給料の締め日である15日まで来たいと言い出して、半月ほど日延べになった。


しかしワガママを聞いて、日延べに応じたのは間違いだった。

スガッちは辞める直前、彼が唯一乗れる3トンダンプのフロントガラスを割った。

近くへ配達に行った帰り道、道路を走行中に突然亀裂が入って

割れたというのが彼の主張だ。

けれども、ダンプのフロントガラスは頑丈にできている。

ただ走っているだけで割れたなら、リコール問題に発展するか

あるいはオカルトだ。


社内では車載カメラで確認するべきという意見も出たが、夫は不問にした。

その措置に、うちの息子たちは「甘い」とボヤく。

しかし私は「あんたらこそ甘い」と反論した。

「学校で窓ガラスを割ったお友だちが、廊下に立たされるのとは違うんよ」


事実を明らかにしようとしまいと、割れたフロントガラスは交換しなければならない。

もしもスガッちに非があったとして、数日後に退職する者を責めて何になる。

夫にとって重要なのは、スガッちが円満退社してくれることと

彼や周りの人に怪我が無かったことの二つだけである。

その安堵に比べれば、ガラスの一枚や二枚が何であろう。

責任者とは、そういうものだ。



さて、スガッちが退職の意思を表明した9月

彼の代わりになる人を募集することになった。

とはいえ今回は重機オペレーターでなく、名目は事務員。

本社は、夫に代わって重機を操縦する人材を

パートで安く雇おうとしたのは間違いだったと、ようやく気がついたのだ。

そこで夫の負担を減らすため、出勤簿や整備点検簿の書類管理など

彼が重機に乗るかたわらで行う、軽くて面倒な作業を代行する人を

やっぱりパートで安く雇うことになった。


本社は、藤村が引き起こしたセクハラの一件があるため

女性でなく年金生活の男性を望んでいた。

事務職は人気があるので応募者に不自由しないと思っていたが

時給が最低水準、出勤が週4日、1日6時間という稼げない条件だからか

出足好調とはいかなかった。


10月に入り、ハローワークからの紹介だと言って二人連れが来る。

夫はそのうちの一人、年配の男性と知り合いだった。

てっきりその人が入社希望だと思ったが、その男性は付き添いで

入社を希望しているのは黙って後ろに立っているもう一人の方だと判明。

付き添いの説明によれば、親戚の子だそう。


この時、一緒に面接をするはずの松木氏は肺の手術で入院中。

よって夫は本社の誰かを呼び、後日改めて面接を行うことにした。

相手がすぐに辞めたり問題を起こすと、いつも夫のせいにされるので

責任回避のためである。

夫も少しは学習したようだ。


数日後、本社から永井営業部長が訪れて面接の運びとなった。

今回も、前回と同じ付き添いが同行。

一人で来られない時点で、もはや尋常ではないとわかりそうなものだ。

しかしセクハラ対象外という第一条件を満たしていれば

もう誰でもいいという点において、永井部長と夫の意見は一致したため

入社はすんなりと決まった。



こうして10月から入社した新人、旗野さんは33才。

身長170センチ、体重110キロと、スガッちに似た体型だ。

顔もどことなく似ている。

というより、ひどく太ったら顔の部品が肉に埋まって

同じような顔立ちになると思われる。

何だかデジャヴのよう。


ただし、スガッちと大きく違う所が一つ。

旗野さんは女性である。

夫も永井部長も、履歴書に記載された性別を確認するまで

目の前にいるのは太った若い男性と思い込んでいたというから笑える。


特に夫は二回も会っていながら、それでも女とは気づかなかったそうだ。

フィーリング先行の彼にとっては男女の区別よりも

体型のインパクトの方が強烈だったらしい。

ともあれ、これでは夫に巣食う恋の虫が騒ぎそうにないじゃないか。

なにげに残念だ。



余談になるが、この時の松木氏は最初の入院で内視鏡手術をしたものの

病巣が取りきれなかったということで、切開手術を受けるために再入院していた。

旗野さんの入社後に退院して、何日か出社したが

抗癌剤治療のために三たび入院。

彼がひた隠していた病名は、やはり癌だった。


松木氏は今月の始めに退院し、自宅療養を経て

最近また出社するようになった。

ゲッソリと痩せ細って、元々色黒だったのがますます黒くなり

座っているだけでもしんどそうだ。

もはや嘘をつく気力も、野心を燃やす元気も無さそう。


松木氏の場合…

誤解があるといけないので、そう特定してからお話しするが

彼は10年前の入社以来、実に多くの嘘をついてきた。

仕事でもそうだが、ことに嫌な所へ行かなければならない時には

必ず身内の危篤や葬式を持ち出す。

いったいどれだけ親戚がいるのかと、不思議に思うほどだ。

一方で各種の協会が催す野球観戦、ゴルフコンペなど楽しいことがある時

彼の身内は絶対に死なない。


危篤や葬式ばかりでは不自然なので、時には仮病も使う。

深刻な顔つきで具合が悪いだの、ちょうど検査日とブッキングするだの

何回聞いたかわからない。

嘘ばかり言っていると、身体に悪そうだ。

はなはだ低レベルの比較ではあるが、あの藤村と比べれば

松木氏は口のきき方だけでも紳士的なので、長生きしてもらいたいと思っている。

《続く》
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