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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

現場はいま…期待の新人くん・1

2021年01月26日 08時56分10秒 | シリーズ・現場はいま…
前回、この“現場はいま…”シリーズで、新しい人が入るとお話しした。

その人、園田君は42才。

年明けから入社したフレッシュさんである。


話は昨年の11月末に遡る。

藤村のオンナという認識が定着してしまった神田さんが

辞めると言い出し、某機関への訴えをほのめかしていたので

本社の永井営業部長が訪れて

神田さん、藤村、我が夫と長男から事情を聞いた。


上役として、一方的な都合を押し付ける永井部長や

パワハラ、セクハラの事実をのらりくらりとかわす藤村にキレた神田さんは

「私、もう辞めます!」と言って事務所を飛び出した。

そのことをまだ部外者に知られていない翌日

ふらりと会社に現れ、雇って欲しいと言った彼を誰もが怪しんだ。

このタイミングを偶然と呼ぶには、無理があるからだ。


というのもこの業界、空いているダンプが存在しなければ

就職話も存在しない。

バスやタクシーのような交代制ではなく

一人の運転手と1台のダンプはセットになっているため

乗る車が無ければ運転手の仕事は成立しないからだ。


神田さんは興奮して、辞めると口走っただけかもしれず

時間が経って落ち着けば、また出勤する可能性だってある。

しかし園田君は、神田さんの決心が堅いもので

昨日ダンプが空いたのを知っていたような現れ方をした。

神田さんとは、かなり親しい間柄と判断するのが普通だろう。


藤村は、園田君が神田さんの彼氏ではないかと心配し

仕返しに来たのかもしれないと怯えた。

一方、夫はそんな裏のある子ではなく、むしろ人懐こくていい子だと言った。

しかし、いい子がいい運転手だという保証は無い。

夫が気になっていたのは、彼の軽自動車のナンバープレートが

履歴書の現住所とは異なる地域のものだったことである。

長い経験から、ここに小さな違和感を感じた様子だ。


いずれにしても園田君には待ってもらい

取り急ぎハローワークにも求人を出すことになったが

時を同じくして、神田さんが某機関への訴えを起こす。

会社はてんやわんやの騒ぎとなり、人を雇うどころではないため

園田君の件は一旦、立ち消えた。


それから約1ヶ月。

ハローワークからは、誰も来なかった。

その理由は、藤村の悪名がとどろいているのも確かにあったが

不況にコロナ禍というダブルパンチのご時世に

のんびりと仕事を探している運転手はいないという現実もあった。


毎日お金を稼ぐはずのダンプを立往生させる…

それは河野常務が最も嫌う行為である。

園田君の怪しさより、常務の叱責を恐れた藤村は

園田君を採用することに決めた。


園田君は年明けの1月6日から、出勤することになった。

しかし、いきなり正社員で採用したら

パワハラとセクハラで某機関へ訴えたという神田さんの前例があるので

今回はすぐ本採用にはせず、4ヶ月の試用期間を設けた。


それはともかく、6日はまだ正月休みで始業は7日からだ。

しかし藤村と園田君はその日、本社へ挨拶に行くことになった。

ほとんど誰も出勤していない本社へなぜ?…我々はいぶかしんだが

藤村のほうは、園田君に本社を見せて

自分の会社でもないのに自慢するつもりだった。


本社と同じ市内在住の藤村と、こちらの隣市在住の園田君は

現地集合で本社の扉をくぐる。

するとパワハラホットラインの責任者、石原部長が待ち構えていた。

石原部長は、2人にパワハラ教育を施すという。

聞き取り調査で次男が言った言葉を、彼は忘れていなかったのだ。

「俺はパワハラ教育、受けてないから何を言ってもいい」

藤村の、この発言である。

藤村と園田君は2時間に渡って、みっちりと講習を受けた。


パワハラ講習の翌日から、園田君は出社。

彼の入社にあたり、ダンプの乗り換えが行われていた。

前にこの会社に居て、別の支社に転勤していた佐藤君が呼び戻され

神田さんが乗っていたオートマチックのダンプに乗ることになった。

50代半ばの佐藤君は、持病の頭痛を理由に

仕事をドタキャンすることが多かったため

一昨年、別の支社に飛ばされた。

そっちは向いていたようで、持病の頭痛も出ず

順調に働いていた様子だったが、ここでカムバックだ。


佐藤君はオートマチックに乗る羽目になったことや

神田さんがぶつけまくってズタズタになったダンプを

最初はかなり不服に思い、口にも出していた。

しかし、じきにオートマチックは彼にとって便利な乗り物だと気づく。

馬力不足を理由に、彼の嫌いな出仕事や難所に行かなくて済むからだ。

味をしめた佐藤君は、機嫌良く働いている。


それからもう1台、藤村がハーレム計画を構想していた頃

神田さんの友達を入社させるつもりで新調したダンプがある。

藤村に新車購入の権限は無いが

河野常務が腰の手術で入院中、彼の名代として全権を委ねられた永井部長が

藤村におだてられて購入許可を出した。


結局、神田さんの友達は来ず

乗り手が不在のままディーラーに預けていた新車には

72才のシュウちゃんが乗ることになった。

「この年で新車に乗れるとは思わんかった」

シュウちゃんは素直に喜んでいる。


そして園田君には、シュウちゃんが乗っていたダンプが与えられた。

このダンプは、佐藤君が転勤するまで乗っていたものだ。

購入して6年余りだったと思うが

綺麗好きの佐藤君からメカ好きのシュウちゃんを経由しているので

コンディションが良くピカピカである。


さて、明るくて礼儀正しい園田君は、一人一人に挨拶。

「色々教えてください!よろしくお願いします!」

神田さんの時には挨拶すら無く、ひたすら藤村にくっつき歩くだけだったので

皆は園田君の態度に好印象を持った。


2日目、3日目…

夫や息子たちの話によると

園田君は異様に思えるほどのハイテンションで元気に働いていたが

運転技術が神田さん並みであることはわかったそうだ。

単純なことを何回教えても習得できないところも似ている。

しかし、ハイ!ハイ!と返事だけは良い。

返事は良いが、頭には入らないタイプらしい。


このタイプは、どんな職場にも現れる。

私も過去、自分の働いた職場で何度か出会ったことがある。

明るくて屈託が無いように見えるが

たいてい最後は「自分は頑張っているのに周りが悪い」

と言って早々に辞めていったものだ。

私はこのことを家族に伝え、退職理由の標的にされると損だから

彼に優しくしなさいと言った。


ちなみに神田さんの件は、未だ解決を見ず闘争中。

神田さんが、体調を理由に示談の話し合いを避け続けているからだ。

彼女には毎月、休業補償が入り続けている。

たいした金額ではないものの、先へ伸ばせば伸ばすだけ

働かずしてお得になるからだと思われる。

《続く》
コメント (4)
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