殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ぷくぷくちゃん

2015年01月19日 08時52分21秒 | みりこん童話のやかた
わたしはきんぎょです。

いちばん下にいるのがわたしです。

からだがさかさまになってしまう「てんぷくびょう」にかかっています。

およげないので、下にいるしかありません。

なまえは「てん・ぷくぷく」といいます。

お兄ちゃんがつけてくれました。


わたしはきょねんの春まで、みんなといっしょに

よそのおうちでくらしていました。

お兄ちゃんがみんなをもらうことになったとき

びょうきのわたしもいっしょにつれてかえりました。


わたしは生まれつき、お口のかたちがゆがんでいるので

ごはんをうまくたべられません。

お兄ちゃんはわたしのために、やわらかいごはんをかって

「ぷくぷくちゃん、ごはんだよ」

と言いながらたべさせてくれます。

お兄ちゃんはわたしのごはんを

「てんぷくスペシャル」とよんでいます。


おばあちゃんと小さいお兄ちゃんは

上を向いてうごけないわたしを見て

ときどき「死んだ」とさわぎます。

死んだとおもわれたらこまるので

わたしはいそいでヒレをうごかします。


お父さんはわたしのことをしりません。

お母さんはいつもはしらんかおなのに

きゅうにプログにのせると言いだして

わたしのしゃしんをとりました。

「もっと前にでろ」とか「わらえ」とめいれいするので

ちょっとはらがたちました。

犬のパピ兄ちゃんが

「あの女にはきをつけろ」とおしえてくれたいみが

よくわかりました。


わたしのいるおだいどころで、かぞくのみなさんがよくはなすのは

おばあちゃんのことです。

お父さんもお兄ちゃんたちも「ばあちゃんはボケた」と言います。

でもお母さんは「ちがう」と言います。

「むかしからおかしいんだ。

あんたたちは家にいないから、しらなかっただけだ」

といばります。


「にんちしょうかもしれない」

だれかが言うと

「40すぎからずっとあのまんまだから、にんちしょうではない。

せいかくがくさっているだけだ」

と言います。

かばっているのか、わるくちを言っているのか、よくわかりません。


わたしはかぞくの中で、お兄ちゃんがいちばんすきです。

「てんぷくスペシャル」をたくさんたべて

はやくげんきになりたいとおもいます。
コメント (10)
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