このところ、コンビニへ行く回数が
「たまに」から「月数回」に上昇。
ある食品を探すためなのじゃ。
その食品の存在を昨年11月に知った。
選挙で一緒にウグイスをやった、あの懐かしきナミ様に
もらって食べたのじゃ。
それは噛んだらスッとする
フリスクやミンティアの仲間と思ってもらいたい。
5センチぐらいの楕円形のケースに入っていて
中身は直径3ミリぐらいの丸くて黄色い
昆虫のタマゴみたいなグミなのじゃ。
決しておいしいわけではない。
噛んだらプチッと裂けて、ひえ~っと叫びたくなるような
ミントの味がはじけるのじゃ。
口や鼻だけでなく、目までチカチカするのじゃ。
「セブンイレブンにありますよ」
刺激に衝撃感激の私から入手先を問われ
ナミ様はこともなげにおっしゃった。
あれをまたプチッとやりたい。
家族に食べさせて驚かれたい。
特に、病院で寝たきりの義父アツシに与えて反応を見たい。
寝たきり老人の虐待ではない。
アツシは七味や胡椒などの刺激物が好きだ。
健康法も、危険と隣り合わせの刺激的なタイプを好む。
スタミナがつくと聞き、生のニンニクを食べたり
痔にいいと聞き、ナメクジを飲んだりしていた。
最も刺激的だったのは「おおやいと」と呼ばれる激しいお灸だった。
遊び仲間と月に1回のペースで山陰地方へ赴き
腰に2つの大きなお灸をすえてもらう。
当然火傷を負い、直径2センチ、深さ5ミリ程度の穴があく。
そこへ秘伝の吸い出し軟膏を塗ると
1ヶ月間、黄色いウミが出続ける。
これでどんな病気もたちどころに改善するという。
どこの県にあるんだか、飲むと激しい下痢を起こす温泉水を
泊りがけで飲みにも通っていた。
トイレと温泉水の蛇口がセットでずらりと並んでおり
これで体内の毒素を一掃するという。
ウミを出し、毒も出したが徒労に終わり、今じゃ寝たきりのアツシ。
刺激を求めて西へ東へウロチョロしているうちに、会社は傾いた。
いくら刺激が好きでも、不渡り手形や借金取りは
ちょっと刺激的過ぎたみたい。
でもこのグミの適度な刺激なら、きっと喜ぶと思うの。
だってスキッとし過ぎる目薬をさしてあげた時も
「ヒー!」って喜んだもん。
多分、あれは喜んだのよ…?
というわけで、この口腔清涼剤を探す私よ。
商品名を忘れ、パッケージもうろ覚えなので自力で探すしかない。
ナミ様にたずねればいいようなもんだけど
わかる?過ぎ去ってみればウザいだけのこの気持ち。
私は探索の対象をセブンイレブンからローソンにも拡大し
我が町にあるローソンへ赴く。
やはり見当たらないのでパンなんぞ買い、レジへ。
清算してもらう間に、唐揚げやウィンナーの焼いたのが並ぶ
ケースを眺める。
こんがりと焼けた鳥の脚が1本ある。
「家じゃあ、こんなにこんがり焼けないわねぇ」
つぶやくと、レジのおネエちゃんが言う。
「ここまで焼くと、普通焦げますよね」
「でしょ?」
店の客は私だけだったため、鳥の話で盛り上がる。
そう、田舎の昼下がりのローソンはそんなもんなのよ。
「いかがですか?」
こういうものを買ったことも食べたこともない私は
勧められて心が揺れる。
「うちには息子が2人いるから、1本じゃあねえ」
「私は息子が1人います」
「何才?」
「今8ヶ月です」
「あら~!可愛いでしょうね!」
「はい」
でも…とおネエちゃんはつぶやいた。
「別々に暮らしているんです…」
「あらそうなの?」
「色々あって…子供に会えないんです…私…」
厄介なことになったと思ったが
ここでひるんでいては、みりこんがすたる。
「大丈夫よ!絶対一緒に暮らせるようになるわよ!」
「本当ですか?」
「そうよ~、母親と子供の絆ってね、そう簡単に切れるもんじゃないわ。
血が呼び合って引き寄せるんだから」
「じゃあ、辛抱していたら会えるようになりますか?」
「血は運命より強いんだから、血を信じて待つのよ」
「はい!ありがとうございます!」
おネエちゃんは涙を浮かべた。
30才ぐらいのおネエちゃんは、暗く寂しげな印象で
見るからにサチ薄そうな感じ。
そのサチ薄度の心理的要因は、色々あるという生活に起因している様子だが
物理的要因はスッピンにあると思われる。
スッピンはけっこうだけど、ある程度年のいった女には不利に働くことが多い。
多少は自分に手間をかけないと、人からぞんざいに扱われやすいのだ。
客商売なんだから、せめて口紅のひと塗りでもして武装し
サチ薄を吹き飛ばしたらいいのだが
こういう人はわりと意固地なので、言わない。
ところであなた…私は言った。
「これこれこういうグミ、知らない?」
オバタリアンは切り替えが早いのだ。
「見たことありませんねえ」
おネエちゃんも切り替えが早いタイプらしく
鼻をすすりながら首をかしげる。
「もし見つかったら、うちの旦那にことづけてちょうだい。
毎朝ここへスポーツ新聞買いに来る大男よ。
ローソンのカードでポイント貯めちゃあ肉まん買うヤツよ」
「スポーツ新聞…あっ!わかりました!」
「じゃ、よろしく!」
店から出た私は、外で待っていた夫の車に乗る。
「今度、グミを出されたら買っといて」
ポイントで肉まん買う男は、了解とうなづくのであった。
「たまに」から「月数回」に上昇。
ある食品を探すためなのじゃ。
その食品の存在を昨年11月に知った。
選挙で一緒にウグイスをやった、あの懐かしきナミ様に
もらって食べたのじゃ。
それは噛んだらスッとする
フリスクやミンティアの仲間と思ってもらいたい。
5センチぐらいの楕円形のケースに入っていて
中身は直径3ミリぐらいの丸くて黄色い
昆虫のタマゴみたいなグミなのじゃ。
決しておいしいわけではない。
噛んだらプチッと裂けて、ひえ~っと叫びたくなるような
ミントの味がはじけるのじゃ。
口や鼻だけでなく、目までチカチカするのじゃ。
「セブンイレブンにありますよ」
刺激に衝撃感激の私から入手先を問われ
ナミ様はこともなげにおっしゃった。
あれをまたプチッとやりたい。
家族に食べさせて驚かれたい。
特に、病院で寝たきりの義父アツシに与えて反応を見たい。
寝たきり老人の虐待ではない。
アツシは七味や胡椒などの刺激物が好きだ。
健康法も、危険と隣り合わせの刺激的なタイプを好む。
スタミナがつくと聞き、生のニンニクを食べたり
痔にいいと聞き、ナメクジを飲んだりしていた。
最も刺激的だったのは「おおやいと」と呼ばれる激しいお灸だった。
遊び仲間と月に1回のペースで山陰地方へ赴き
腰に2つの大きなお灸をすえてもらう。
当然火傷を負い、直径2センチ、深さ5ミリ程度の穴があく。
そこへ秘伝の吸い出し軟膏を塗ると
1ヶ月間、黄色いウミが出続ける。
これでどんな病気もたちどころに改善するという。
どこの県にあるんだか、飲むと激しい下痢を起こす温泉水を
泊りがけで飲みにも通っていた。
トイレと温泉水の蛇口がセットでずらりと並んでおり
これで体内の毒素を一掃するという。
ウミを出し、毒も出したが徒労に終わり、今じゃ寝たきりのアツシ。
刺激を求めて西へ東へウロチョロしているうちに、会社は傾いた。
いくら刺激が好きでも、不渡り手形や借金取りは
ちょっと刺激的過ぎたみたい。
でもこのグミの適度な刺激なら、きっと喜ぶと思うの。
だってスキッとし過ぎる目薬をさしてあげた時も
「ヒー!」って喜んだもん。
多分、あれは喜んだのよ…?
というわけで、この口腔清涼剤を探す私よ。
商品名を忘れ、パッケージもうろ覚えなので自力で探すしかない。
ナミ様にたずねればいいようなもんだけど
わかる?過ぎ去ってみればウザいだけのこの気持ち。
私は探索の対象をセブンイレブンからローソンにも拡大し
我が町にあるローソンへ赴く。
やはり見当たらないのでパンなんぞ買い、レジへ。
清算してもらう間に、唐揚げやウィンナーの焼いたのが並ぶ
ケースを眺める。
こんがりと焼けた鳥の脚が1本ある。
「家じゃあ、こんなにこんがり焼けないわねぇ」
つぶやくと、レジのおネエちゃんが言う。
「ここまで焼くと、普通焦げますよね」
「でしょ?」
店の客は私だけだったため、鳥の話で盛り上がる。
そう、田舎の昼下がりのローソンはそんなもんなのよ。
「いかがですか?」
こういうものを買ったことも食べたこともない私は
勧められて心が揺れる。
「うちには息子が2人いるから、1本じゃあねえ」
「私は息子が1人います」
「何才?」
「今8ヶ月です」
「あら~!可愛いでしょうね!」
「はい」
でも…とおネエちゃんはつぶやいた。
「別々に暮らしているんです…」
「あらそうなの?」
「色々あって…子供に会えないんです…私…」
厄介なことになったと思ったが
ここでひるんでいては、みりこんがすたる。
「大丈夫よ!絶対一緒に暮らせるようになるわよ!」
「本当ですか?」
「そうよ~、母親と子供の絆ってね、そう簡単に切れるもんじゃないわ。
血が呼び合って引き寄せるんだから」
「じゃあ、辛抱していたら会えるようになりますか?」
「血は運命より強いんだから、血を信じて待つのよ」
「はい!ありがとうございます!」
おネエちゃんは涙を浮かべた。
30才ぐらいのおネエちゃんは、暗く寂しげな印象で
見るからにサチ薄そうな感じ。
そのサチ薄度の心理的要因は、色々あるという生活に起因している様子だが
物理的要因はスッピンにあると思われる。
スッピンはけっこうだけど、ある程度年のいった女には不利に働くことが多い。
多少は自分に手間をかけないと、人からぞんざいに扱われやすいのだ。
客商売なんだから、せめて口紅のひと塗りでもして武装し
サチ薄を吹き飛ばしたらいいのだが
こういう人はわりと意固地なので、言わない。
ところであなた…私は言った。
「これこれこういうグミ、知らない?」
オバタリアンは切り替えが早いのだ。
「見たことありませんねえ」
おネエちゃんも切り替えが早いタイプらしく
鼻をすすりながら首をかしげる。
「もし見つかったら、うちの旦那にことづけてちょうだい。
毎朝ここへスポーツ新聞買いに来る大男よ。
ローソンのカードでポイント貯めちゃあ肉まん買うヤツよ」
「スポーツ新聞…あっ!わかりました!」
「じゃ、よろしく!」
店から出た私は、外で待っていた夫の車に乗る。
「今度、グミを出されたら買っといて」
ポイントで肉まん買う男は、了解とうなづくのであった。