殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

指輪

2010年02月22日 12時09分37秒 | みりこんぐらし
先日、うちに生命保険のセールスレディが回って来た。

地味で真面目そうな若い女性である。


ここらへんで生命保険のセールスといえば

そのまま夜のお店のカウンターへ入れそうなおかたか

見るからにしっかり者のおばさまが主流であるが

その人は、本社勤務から地方の営業に回された元総合職の香りがした。

いっぱい勉強して大人になった人の目だ。

今はちょっと不本意だけど、頑張ってます!という感じが伝わってくる。

もちろん、いつもの妄想。


なんたらプランナーの資格も持っているんです…

なんたらかんたらも勉強しているので、ご相談に乗れます…

    ほ~、立派な資格をお持ちなんですねぇ…

パンフレットをもらって玄関でお別れ。


1時間ほどして、また来た。

「この近くで鍵を落としたんです。

 大事な鍵なので、もしあったら連絡していただきたいんですけど」

     「わかりました。もし見つかったらね」

「あれがないと困るんです」

だったら落とすなよっ!…と言いたいが、我慢。


そして今度は、ポケットから指輪を取り出してのたまう。

「鍵を探していて、この指輪を見つけてしまったんです。

 それで、持ち主を捜して、返していただきたいんですけど」

さも本物らしく地味めに作られたファッションリングだ。


今どきは、金持ちが旅行に持って行く盗難回避のための

トラベルジュエリーなんてのもあるそうだが

そういう水準のものではない。

推定千円。


このチャチい指輪の持ち主を捜して、私に寒空をさまよえとっ?!

…と言いたいが、我慢。

    「元の所へ置いとけば?」

「でも、別の人が拾ったら…」

    「いいじゃん、別に」

「でも、ダイヤですよ」

    「ガラスよ。おもちゃに毛が生えたようなもんよ」

「でも、落とした人は探してらっしゃるかもしれませんし…」

    「しかたがないわよ。

     安物は指からはずれやすいのよ」

「でも…」

    「何?」

「私、もう帰らなきゃいけなくて、元の場所へ戻しに行く時間が無いんです」

    「私に行けと?」

「はい。すみませんがお願いします」


冗談かと思えば、真剣な顔をしている。

なんでそういう面倒なモンをうちへ持って来るんじゃい…

玄関にぶら下がった組長のフダを呪う。

なんて要領の悪いデモデモ女…そんなだから田舎へ飛ばされるのよっ…

すでに彼女の身の上を勝手に決め

とぼとぼと、聞いた場所へ指輪を置きに行く私さ。


それからしばらくして

「おばちゃ~ん!みりこんおばちゃ~ん!」

近所の子供が呼んでいる。

「指輪拾った~!」

…ギャ~!

さっき私が寒さに耐えながら、はるばる?50メートル歩いて

せっかく置いて来た指輪ではないか。


    「よっちゃんにあげる…持ってお帰り…」

「いらない!ママに怒られるもん」

ちっ…子供に見つかったからには、もう置きに行く手は使えない。

黙って捨てるわけにもいかなくなった。

「おばちゃん、おまわりさんのとこに行く?」

自分の親に言えよ…。

しかし、よっちゃんは燃えている。 

しかたなく二人で近所を聞いて回った。


私とて、いい年のオバサン…善意でそこら中を手当たり次第…

なんて面倒なことはしない。

まずサイズ。

私の薬指に、少しきつい…12くらいか。

ということは、小柄で細身というわけでもなさそう。


さらに推理は進む。

本物のふりして偽物をしそうな人…

外に出る生活をして、この偽物を人にちらつかせる必要のある人…

宝石を色々持ってると人に思わせたい人…


しかし推理のしかたが不純だったためか、徒労に終わる。

あれから2週間…該当者は今のところ判明していない。

指輪はうちの玄関に置いてある。

どさくさにまぎれて無くならないかな~と願っているが、やっぱりある。

同じことなら、本物で悩みたかったと思う。 
コメント (27)
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