先日、うちに生命保険のセールスレディが回って来た。
地味で真面目そうな若い女性である。
ここらへんで生命保険のセールスといえば
そのまま夜のお店のカウンターへ入れそうなおかたか
見るからにしっかり者のおばさまが主流であるが
その人は、本社勤務から地方の営業に回された元総合職の香りがした。
いっぱい勉強して大人になった人の目だ。
今はちょっと不本意だけど、頑張ってます!という感じが伝わってくる。
もちろん、いつもの妄想。
なんたらプランナーの資格も持っているんです…
なんたらかんたらも勉強しているので、ご相談に乗れます…
ほ~、立派な資格をお持ちなんですねぇ…
パンフレットをもらって玄関でお別れ。
1時間ほどして、また来た。
「この近くで鍵を落としたんです。
大事な鍵なので、もしあったら連絡していただきたいんですけど」
「わかりました。もし見つかったらね」
「あれがないと困るんです」
だったら落とすなよっ!…と言いたいが、我慢。
そして今度は、ポケットから指輪を取り出してのたまう。
「鍵を探していて、この指輪を見つけてしまったんです。
それで、持ち主を捜して、返していただきたいんですけど」
さも本物らしく地味めに作られたファッションリングだ。
今どきは、金持ちが旅行に持って行く盗難回避のための
トラベルジュエリーなんてのもあるそうだが
そういう水準のものではない。
推定千円。
このチャチい指輪の持ち主を捜して、私に寒空をさまよえとっ?!
…と言いたいが、我慢。
「元の所へ置いとけば?」
「でも、別の人が拾ったら…」
「いいじゃん、別に」
「でも、ダイヤですよ」
「ガラスよ。おもちゃに毛が生えたようなもんよ」
「でも、落とした人は探してらっしゃるかもしれませんし…」
「しかたがないわよ。
安物は指からはずれやすいのよ」
「でも…」
「何?」
「私、もう帰らなきゃいけなくて、元の場所へ戻しに行く時間が無いんです」
「私に行けと?」
「はい。すみませんがお願いします」
冗談かと思えば、真剣な顔をしている。
なんでそういう面倒なモンをうちへ持って来るんじゃい…
玄関にぶら下がった組長のフダを呪う。
なんて要領の悪いデモデモ女…そんなだから田舎へ飛ばされるのよっ…
すでに彼女の身の上を勝手に決め
とぼとぼと、聞いた場所へ指輪を置きに行く私さ。
それからしばらくして
「おばちゃ~ん!みりこんおばちゃ~ん!」
近所の子供が呼んでいる。
「指輪拾った~!」
…ギャ~!
さっき私が寒さに耐えながら、はるばる?50メートル歩いて
せっかく置いて来た指輪ではないか。
「よっちゃんにあげる…持ってお帰り…」
「いらない!ママに怒られるもん」
ちっ…子供に見つかったからには、もう置きに行く手は使えない。
黙って捨てるわけにもいかなくなった。
「おばちゃん、おまわりさんのとこに行く?」
自分の親に言えよ…。
しかし、よっちゃんは燃えている。
しかたなく二人で近所を聞いて回った。
私とて、いい年のオバサン…善意でそこら中を手当たり次第…
なんて面倒なことはしない。
まずサイズ。
私の薬指に、少しきつい…12くらいか。
ということは、小柄で細身というわけでもなさそう。
さらに推理は進む。
本物のふりして偽物をしそうな人…
外に出る生活をして、この偽物を人にちらつかせる必要のある人…
宝石を色々持ってると人に思わせたい人…
しかし推理のしかたが不純だったためか、徒労に終わる。
あれから2週間…該当者は今のところ判明していない。
指輪はうちの玄関に置いてある。
どさくさにまぎれて無くならないかな~と願っているが、やっぱりある。
同じことなら、本物で悩みたかったと思う。
地味で真面目そうな若い女性である。
ここらへんで生命保険のセールスといえば
そのまま夜のお店のカウンターへ入れそうなおかたか
見るからにしっかり者のおばさまが主流であるが
その人は、本社勤務から地方の営業に回された元総合職の香りがした。
いっぱい勉強して大人になった人の目だ。
今はちょっと不本意だけど、頑張ってます!という感じが伝わってくる。
もちろん、いつもの妄想。
なんたらプランナーの資格も持っているんです…
なんたらかんたらも勉強しているので、ご相談に乗れます…
ほ~、立派な資格をお持ちなんですねぇ…
パンフレットをもらって玄関でお別れ。
1時間ほどして、また来た。
「この近くで鍵を落としたんです。
大事な鍵なので、もしあったら連絡していただきたいんですけど」
「わかりました。もし見つかったらね」
「あれがないと困るんです」
だったら落とすなよっ!…と言いたいが、我慢。
そして今度は、ポケットから指輪を取り出してのたまう。
「鍵を探していて、この指輪を見つけてしまったんです。
それで、持ち主を捜して、返していただきたいんですけど」
さも本物らしく地味めに作られたファッションリングだ。
今どきは、金持ちが旅行に持って行く盗難回避のための
トラベルジュエリーなんてのもあるそうだが
そういう水準のものではない。
推定千円。
このチャチい指輪の持ち主を捜して、私に寒空をさまよえとっ?!
…と言いたいが、我慢。
「元の所へ置いとけば?」
「でも、別の人が拾ったら…」
「いいじゃん、別に」
「でも、ダイヤですよ」
「ガラスよ。おもちゃに毛が生えたようなもんよ」
「でも、落とした人は探してらっしゃるかもしれませんし…」
「しかたがないわよ。
安物は指からはずれやすいのよ」
「でも…」
「何?」
「私、もう帰らなきゃいけなくて、元の場所へ戻しに行く時間が無いんです」
「私に行けと?」
「はい。すみませんがお願いします」
冗談かと思えば、真剣な顔をしている。
なんでそういう面倒なモンをうちへ持って来るんじゃい…
玄関にぶら下がった組長のフダを呪う。
なんて要領の悪いデモデモ女…そんなだから田舎へ飛ばされるのよっ…
すでに彼女の身の上を勝手に決め
とぼとぼと、聞いた場所へ指輪を置きに行く私さ。
それからしばらくして
「おばちゃ~ん!みりこんおばちゃ~ん!」
近所の子供が呼んでいる。
「指輪拾った~!」
…ギャ~!
さっき私が寒さに耐えながら、はるばる?50メートル歩いて
せっかく置いて来た指輪ではないか。
「よっちゃんにあげる…持ってお帰り…」
「いらない!ママに怒られるもん」
ちっ…子供に見つかったからには、もう置きに行く手は使えない。
黙って捨てるわけにもいかなくなった。
「おばちゃん、おまわりさんのとこに行く?」
自分の親に言えよ…。
しかし、よっちゃんは燃えている。
しかたなく二人で近所を聞いて回った。
私とて、いい年のオバサン…善意でそこら中を手当たり次第…
なんて面倒なことはしない。
まずサイズ。
私の薬指に、少しきつい…12くらいか。
ということは、小柄で細身というわけでもなさそう。
さらに推理は進む。
本物のふりして偽物をしそうな人…
外に出る生活をして、この偽物を人にちらつかせる必要のある人…
宝石を色々持ってると人に思わせたい人…
しかし推理のしかたが不純だったためか、徒労に終わる。
あれから2週間…該当者は今のところ判明していない。
指輪はうちの玄関に置いてある。
どさくさにまぎれて無くならないかな~と願っているが、やっぱりある。
同じことなら、本物で悩みたかったと思う。