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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

施設ジプシー・7

2025年02月25日 08時19分45秒 | みりこんぐらし
第一条件の近距離を捨ててリストアップしたはいいけど

隣の市にある有料老人ホームは、どれもドングリの背比べ。

空き部屋有りと表示してある所は山奥だったり

第三条件の低階層の方はというと、4階建て以上の所ばっかりだ。


ショウタキやグループホームは少人数が対象だから

小ぶりな平屋が多いけど

有料老人ホームは収容人数が多いので、たいていビル。

その中で2階を希望したところで、部屋が空いていなければ

どうにもならんじゃないの。


やっぱり初めにパンフレットを送ってもらった所も含め

一から検討し直して、ピックアップした施設へ電話するしかなさそう。

とはいえ

「電話か〜…」

私の心は早くも萎える。


電話も、面談とほぼ同じことを一から十まで話すんだよ。

しかも面談と違って、顔も見たことない相手にだよ。

で、判で押したように見学に来いと言われ

のこのこ行ったらまた面談じゃ。

めんどくせ〜!


ゲンナリしていたら、次男が施設の名前を書いた紙に目を留めた。

彼は近年、サチコ関連の話をよく聞きたがる。

生まれてこのかた、父の通夜葬儀を含めて

数回しか会ったことのないサチコに興味を持っているのだ。


しかしその興味は、義理の祖母に対するものでは決して無い。

20年前、急死した父の葬儀が終わった時のこと。

「これで、私らとあんたらは関係無いけんね。

もう私ら親子には近づかんといてちょうだい」

サチコは私と一つ下の妹に、そう言い渡したものだ。


女優のように朗々と決意を述べるのは、昔から彼女の好みであり

述べた決意をいとも簡単にひっくり返すのは彼女の癖なので

我々姉妹はいつものように聞き流した。

しかしその瞬間、たまたまその場にいた次男は

細い目を見開いて、そりゃもう驚いていた。


「あそこまで言うておきながら、今になって頼りまくる神経はすごい」

私がサチコに翻弄されるのを見るにつけ、次男はしきりに感心する。

彼にとってサチコは、観察に値する珍しい生物らしいのだ。


それはさておき、台所のテーブルに置かれたリストを眺めながら

次男は言った。

「ウフ!いよいよ施設にぶち込むんじゃね!」

「そのつもりじゃけど、どこに電話したらええかわからんし

電話自体が面倒なけん、タラタラしとるところ」


すると彼は少し考えてから

「ティーチャーに電話して、聞いてみようか」

と言った。

ティーチャーとは、彼の釣り仲間のニックネーム。

この子は数年前の一時期、ヘラブナ釣りに凝って

県内各地の池に通っていた。

そのヘラブナ釣りで知り合った男性から

色々と極意を教えてもらっているうちに

その人をティーチャーと呼ぶようになった。


ティーチャーは、リストアップした施設と同じ市内に住む

食品卸問屋の社長。

70代半ばで愛車のポルシェを乗り回す、セレブなお爺ちゃんだ。

彼と知り合って以降、我が家は毎年、肉やエビなど正月用の食品を

彼の問屋で安く回してもらうようになった。

次男はそれを受け取りに行きがてら

猫の手も借りたい年の瀬の問屋を手伝う習慣が

ここ何年も続いている。


「同じ市内の住人に聞いてみるのが確実じゃん。

手広い商売しとるけん、何か情報を持っとるかもしれんし」

そう言いながら、次男はティーチャーに電話をかけた。

「もしもし、ティーチャー?

そっちにある老人ホームのこと聞きたいんですけど。

うん、オカンの継母をぶち込みたいんよ。

◯◯の里とか◯◯の園とか、知ってる?」


「はあ〜?◯◯の里〜?わしゃ知らんで〜?」

という野太い声が聞こえてくる。

それから少し話して、次男は電話を差し出し

直接話せと言って私に代わった。


「奥さん、ワシの母親が入っとる所へ入れんさい」

挨拶もそこそこにティーチャーは言った。

「社長さんのお母様が?」

70代半ばで、母親がまだ生存していることに驚く私。


「104才じゃが、要介護1のまんま、ずっと入っとるんよ」

「ひゃくよん…さい…」

「有料老人ホームじゃけん、看取りもしてくれるよ」

看取りを口にするあたり、さすが経験者。

いざ親を施設に入れるとなったら

この看取りが最重要条件になるのをちゃんと知っているのだ。


「街の中にあって行きやすいし、ええ所よ。

これから連絡してあげるけん、また後で電話しますぅ」

ティーチャーはそう言い、電話は一旦切られた。


やがて彼から、再び電話が。

「今、ひと部屋、空いとるんだって。

ワシの紹介じゃ言うて、すぐ電話してみんさい。

ほんまにええ所じゃけん」

毎年、正月の食品を注文するためにやり取りする時とは

熱心さが全然違う。


彼に教えてもらった施設の名前は、初めて聞くものだ。

穴が開くほど見つめたはずの“みんなの介護”には

チラリとも出てこなかった。

何だかキツネにつままれたみたいな気分。


さっそく電話すると、入居者の家族からの紹介だからか

あるいはティーチャーが、およそのことを伝えてくれたからか

プライバシーをあれこれ聞かれることもなく、短い電話で済んだ。

その電話で決まったのは、翌々日の19日の見学。

急転直下とは、このことだ。

《続く》
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施設ジプシー・6

2025年02月24日 10時39分35秒 | みりこんぐらし
①近距離、②姥捨感薄口、③低階層…

探す条件を明確にし、優先順位を付けた上で

再び有料老人ホームの検索を始めた私。

今度は“みんなの介護”で施設の名前を知ったら

そこのホームページを熟読して

ピンときた施設へ直接電話をしてみるもんね。


みんなの介護を経由したらもらえるという

最大10万円の入居祝い金はいらないわ。

もうね、そんなこと言ってる段階じゃないのよ…

と思いながら探すけど、やっぱり思わしい施設は無い。

だってまず、第一条件の“近距離”で撃沈さ。

初めにパンフレットを送ってもらった、小一時間かかる所が一番近い。

ダメじゃん。


小一時間の運転ぐらい、若い人なら何でもないかもしれない。

私も若い頃は平気だった。

でも年を取ると臆病になるし、疲れやすくなって

昔はバンバン行っていた所が地の果てのように感じてしまう。


何しろサチコが、この先何年生存するかは未知数だ。

めでたく施設入居となっても、それで終了ではない。

何につけ用事ができて呼び出されるのは

老人ホームで30年近く生活した夫の祖母で知っている。


夫の祖母は病院と市外にある複数の施設を転々とした後

町内の外れにある特養に落ち着き

義父アツシとその兄が交代で対応していた。

欲しい物がある、墓参りに行きたい、小遣いが足りない…

そんな本人の希望で面会がてら行ったり

親戚が面会したいと言えば送迎したりもあったが

施設からの呼び出しもよくあった。

「置いていたお金が無いとおっしゃっています」

たいてい“物盗られ妄想”と呼ばれる、認知症あるある。

「職員が盗ったと興奮しておられるので、来てください」

近いというのもあって、施設はトラブル回避のために気軽に呼び出す。


最初はこれらの要請に、アツシとその兄が交代で対応していたが

兄が60代で他界した後の20年ほどは、アツシが一人で引き受けていた。

彼は週5でゴルフに興じる生活だったが

呼び出しがあると、いつも帰りに施設へ立ち寄っていた。


そして兄亡き後は施設の対応に加え

兄と折半していた入居費も、アツシが一人で支払うようになった。

母親がビタ一文、払わないからだ。

彼女の年金は全額、生活力の無い娘…つまりアツシの妹に注がれていた。


子供が複数いる場合

親が搾取子(さくしゅし)と愛玩子(あいがんし)に区別するのは

珍しいことではない。

お金と時間を奪って貢がせる搾取子と、ひたすら与え可愛がる愛玩子だ。

アツシは明らかに搾取子であった。


私はサチコの子供ではないものの、搾取子という立場においては

哀れなアツシに共感を持っている。

しかし、子供を区別する姑に憤慨していた義母ヨシコも

姉を愛玩子、弟の夫を搾取子で区別している。

よって私は、我が子に搾取子と愛玩子を作るまいと日々

自分を戒めているわけだが、認知症になったあかつきには自信が無い。


祖母は101才の長寿を全うし、特養で亡くなった。

アツシの会社が危なくなったのは

もちろん商売のやり方がまずかったからだ。

しかし、なかなか終わりが来ない母親のために

月々十数万円の入居費を払い続けたことも大きな原因だと思っている。



それはさておき、私が高齢になってもサチコが生存していたら

免許を返納して車に乗れなくなるから、遠くは無理だ。

それよか、私の方が先に◯ぬことだってある。

明日のことは誰にもわからない。

このままサチコに自宅生活を続けさせたら

こっちが息絶える可能性は大きい。


サチコの世話は、本人のことだけでなく

家事その他、多くの雑用が付いて回る。

自分の家のことだけでも疲れるお年頃なのに

もう一軒、実家まで引き受けると、マジでしんどい。


だが施設に入れても、全面解決にはならない。

何につけ呼び出されては通うようになる。

なぜって施設は、精神病院と違って携帯電話がフリー。

寂しい、帰りたい、あれが欲しい、どこそこへ行きたい…

思いつくままに電話がかかり、こっちが従うまで容赦ない生活は

サチコの生命が尽きるまで続く長丁場。


どっちにしてもしんどいのだから

もう諦めて、今のショウタキのデイサービスに通わせながら

頼み込んで宿泊を増やしてもらい

時々、また精神病院へ入院させてもらって綱渡りの日々を送ろうか…

いよいよ立ち退きとなったら、その時にはその時の風が吹くかも…

そんな思いも駆け巡る。


しかしその端から

「いや!そうはいかん!」という思いが湧いてくる。

考えてみろ、みりこん!

立ち退きになったら、どうせどこかへ入れることになるんだ。

しかもショウタキは、また年末年始を休業するぞ。

盆休みだって、やらない保証は無い。

その時、病院の3ヶ月ルールで入院できなかったらどうする。

(3ヶ月ルールとは、一旦入院したら最長3ヶ月までしか入院できず

退院後の3ヶ月間は、再び入院することができないルールのこと)

鬱病が悪化するのは、木の芽どきの春と落ち葉どきの秋だけではない。

暑い真夏と寒い真冬は、春と秋以上に悪化するんだぞ。

3ヶ月ルールをうまくすり抜けられるのか。


やっぱり同じしんどいなら、施設の方がマシ…

この結論に達した私は、検索した有料老人ホームの名称と

施設に直接繋がる本来の電話番号を紙に書いてリストアップ。

◯◯の里、◯◯の園、ナントカ苑にナントカ荘…

どれも同じ隣市の郊外にあって、距離は似たり寄ったり。

もはや①の近距離にこだわる意味は無いため

私は②の姥捨感薄口と③の低階層を重視して、絞り込むことにした。

《続く》
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施設ジプシー・5

2025年02月23日 09時04分33秒 | みりこんぐらし
施設を手当たり次第に探すのではなく

サチコが居着きそうな確実な所を一発で決めたい…

そんな野望を抱くようになった私。

そう、これは野望よ。

一発で決めるなんて、ほぼ無理だとわかってるわよ。


が、一発で決めたいのには理由があった。

だって数打ちゃ当たるの方針だと、その度に見学がついて回る。

いや正確に言うと、見学という名の長い面談だ。

私は、できればこの面談をしたくない。

くたびれるからだ。

去年の秋、サチコが通うことになったショウタキから呼ばれて

最初に面談をした時も、2時間ぐらいかかって頭が痛くなったもんね。


ショウタキだけではない。

入院の時も、長い面談があって辟易した。

最初は私だけ、次はサチコを交え

相手は変わったり変わらなかったりの面談に継ぐ面談で

ヘトヘトになった。


年を取ると、初めての人に会うって疲れるのよ。

しかも面談では、かなり突っ込んだ話をする。

まず家族構成…うちは複雑だもんで長くかかるんじゃ…

それからサチコの経歴や性格、ライフスタイル、お金のこと…

プライバシーも何も、ありゃせんのじゃ。

だけど黙秘権は使えない。

問われるままに話さないと、申し込みのスタートラインに立てないもん。

知らない人と長時間、ほじくった話をするのは疲れるのよ。


とはいえ老人の家族にあれこれ話させて

胸の内を吐き出させるのは介護界の常識。

他人には簡単に言えないことを優しく聞いてあげると

何もかも知られた家族は従順になる。

そしたらその後の交渉が、スムーズに行くというわけ。

物品のセールスも同じで、顧客の話を存分に聞いてあげたら 

信頼関係ができるので、物が売れやすいってもんよ。


が、はっきり言って私は面談アレルギー。

長話でくたびれても、帰宅したら家事が待っている。

外で何があっても、家に帰ったら平常運転なのじゃ。

「疲れたから、ちょっと横になるわ…あとよろ」

なんて芸当はできないのじゃ。

疲れるわけにはいかない、特にあのサチコのことなんかでっ!

よって面談の回数はできるだけ少なくしたいのが、私の本音。

だからできれば、一発で決めたい。


さりとて当ては無し、介護界初心者の私が考えたって

名案が浮かぶはずもないまま数日…

やがてみんなの介護で電話をした隣市の有料老人ホームから

パンフレットが届いた。

近頃は郵便の体制が変わって、週末を挟むと郵送が何日もかかるのだ。


懇切丁寧なパンフレットを眺めつつ、また考える。

車で小一時間は遠いよな〜。

まず私が行って面談と見学、次に退院したサチコを連れて面談と見学

万一、それで決まったとして

今度は体験宿泊に連れて行って、連れて帰って…。


そうよ、体験宿泊!あなどれん!

本人が体験したいと言えば、家族は断れない。

同級生モンちゃんの姑さんも、体験宿泊をした。

暴力を振るう息子のキンテンから引き離すために施設入りとなったが

まずは体験ということで二泊三日、山の中の施設に泊まった。

その際、嫁のモンちゃんも一緒に泊まることを施設から促され

同じ部屋で寝起きしたという。

ひ〜!私には無理無理無理!


で、余談だけどキンテンのやつ、認知症の母親に苛立ち

殴る蹴るで何度も警察沙汰になりながら

その母親が施設に入ると、毎日面会に通ったそうだ。

ほら、無職で暇だからさ。

近くに居る時はいじめ、離れると恋い慕う…危ないヤツだ。


さらに余談だけどキンテンのやつ、毎日施設には通うものの

洗濯物を持って行ったり帰ったりは絶対にしない。

だからモンちゃんは仕事帰りに通って、洗濯物を届けたそうだ。

ほんと、役に立たない男!捨てて正解だ。


話は戻って、サチコが納得したら本格的に引っ越しとなる。

入居すれば、初めて入院した時と同じように

「あの服がいる、これが無い」と言ってジャンジャン電話がかかり

毎日のように実家と老人ホームを往復することになる。

距離があるだけに、大変だぞ。

もっと近くの方がいいかも。


そこで再び、“みんなの介護”を検索。

見切ったはずのサイトでも、施設の名前はたくさん出ている。

名前がわからないと、調べることもできんじゃないの。

そういう面で、みんなの介護はみんなの役に立っていると思う。


今度は私は、サチコを入れたい施設の条件を明確にしてみた。

第一条件は看取りがある所だけど

有料老人ホームは基本的に看取りがあるので、それ以外の条件だ。


①比較的近くにあり、運転が苦にならない所

遠いと時間がかかるし、車が多い所や道が細い所は怖いので

できるだけ近く、道中に難所の無い所が望ましい。


②姥捨感(うばすてかん)の少ない所

老人ホームは広い敷地が必要なので、山奥にあることが多い。

車が少ないので通うにはいいけど

サチコは「捨てられた」と反感を持つに違いない。

出るの帰るのと騒がれたら困る。


③低階層の所

マンションやアパートで暮らしたことの無いサチコは

エレベーターと高い所にある部屋を忌み嫌う。

今の病院へおとなしく入院しているのは、病棟が2階にあるからだ。

老人ホームの建物がビル様式で

部屋が高層階であれば、帰ると言い出すのは明らか。

というより高いのを帰る理由にしてゴネるのは目に見えているため

願わくば2階までが望ましい。


私の考えた条件は、以上の三つ。

スタッフの人柄なんて問わない。

介護の仕事をする人たちは、基本的に善良である。

善良でない私から見ると、よくわかる。

その善良が仕事上の上辺だけだとしても、仕事で善良ならば十分だ。

この条件のもと、私は再度、有料老人ホームを探すことにした。

《続く》
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施設ジプシー・4

2025年02月22日 09時16分13秒 | みりこんぐらし
市外にある病院経営の有料老人ホームに電話をかけ

ここからもパンフレットを送ってもらうことにした私。

その電話を切ってからほどなく、“みんなの介護”を名乗る男性から 

うちへ電話があった。

優しい話し方の若い男性だ。


まだ慣れていないらしく、たどたどしいが

どうやら彼が私に聞きたいのは

「見学に行くことを決めたのかどうか」

らしい。

「まだそこまでは決めていません。

とりあえずパンフレットを送ってもらうことにしただけです」

そう答えると、今度は

「みんなの介護に電話をされたのは、どうしてですか?」

とたずねる。

「ハハ…年寄りがいるからに決まっとるじゃないの」

そう答えると彼は絶句して、質問は終わった。


しかし後で思い返してみると、もしや二つ目の質問は

「みんなの介護の存在をどうやって知ったか」

それを聞きたかったのではなかろうか。

ほら、よくあるだろう。

「この商品を何でお知りになりましたか?

以下の一つにマルをつけてください。

店頭・口コミ・インターネット・その他」

なんてアンケートが…あれじゃないのか。

「友だちから聞いた」と言えばよかった。

年寄りがいるからじゃあ、身も蓋も無いわな…

そう思ったけど、後の祭りさ。


ともあれ、みんなの介護に掲載されている施設の電話番号は

どれも050で始まっていて、下の番号は施設によって違う。

みんなの介護のサイトを見て、かけた電話は

みんなの介護のコールセンターへ繋がっているらしい。

施設は、電話の受付業務を委託しているのだ。

なるほど、合理的である。


なぜなら電話の切り際に、彼は言った。

「何かご質問やご相談などありましたら、いつでもお電話ください」

「どこへ電話するんですか?」

「先ほどおかけになった施設の番号です」


電話に出るのは施設の人ではなく、みんなの介護の人。

だからパンフレットを送ってもらうために伝えたのは

こちらの住所氏名だけで、電話番号を言わなかったにもかかわらず

みんなの介護から折り返しの電話があったのだと思う。


それは構わないけど、何しろ私は疑り深くてひねくれてるじゃん。

このまま、みんなの介護のサイトであちこちに電話しまくっていたら

その度に折り返しの電話で見学を決めたかどうか聞かれ

そのうちに「こいつ、よっぽど困ってんじゃね?」と思われて

どうでもこうでも入居先を見つけられ

型にはめられるような気がしてくるじゃあないの。


しかしそれは私の勝手な印象であって、梶田さんは違う。

「みんなの介護のお陰で、母親がグループホームに入れて本当に助かった」

と、今でも喜んでいる。

元看護師の彼女だって、そうなのだ。

みんなの介護で入居を決めた人はおそらく

皆さんがそう思っておられることだろう。


さらに、みんなの介護のサイトやテレビCMでは

「今なら入居祝い金最大10万円がもらえる!」 

と謳っていて、梶田さんも入居を決めた時に10万円をもらったそうだ。


年寄りに関わると、細々したお金が出ていくものよ。

誰でも最初は、親と自分のお金をきっちり分けようと誓って臨むが

年寄りを引き受けると忙しいので、そのうち買い物のついでに

入れ歯洗浄剤や肌着なんかを自分の財布で買うようになる。

老人は世話をしてもらえるとなったら色々食べたがるし

迷惑をかけたり世話になった人へのお礼も必要になる。

病院などの立ち回り先へ連れて行くガソリン代もバカにならない。

年寄りの行く所といったら、西へ東へと効率が悪いものだ。


が、長く生き残っている年寄りというのはたいていケチだから

人の出費は気にせず我が道を行く。

そんな子世代の言うに言えぬ気持ちに

入居祝い金という形で寄り添うアイデアは、素晴らしいと思う。

反面、そのお金はどこから?入居者を得た施設から?

という疑問も湧くが、いずれにしても

介護ビジネスが儲かるらしいのは確かだ。


私はたった一軒、電話をかけただけで

みんなの介護を検索して電話をかける作業を中断した。

介護ビジネスの現実を目の当たりにして

何だかシラケちゃったのよ。


そして手当たり次第でなく、もっとじっくり検討して

確実な所を一発で決めたい…そう思うようになった。

確実な所とは、ひとたび入居したら二度と生きて出て来ない所さ。

そのためには、何でも不満タラタラの本人が

多少なりとも気に入って、居着く可能性のある所でなければ。


出るだの帰るだのと家族を困らせ

施設を点々とする本当の施設ジプシー、いるんですよ。

例えば同級生マミちゃんのお父さん。

彼も要介護度が2だったので特養に入れず

最初はサチコと同じショウタキのデイサービスに通っていたが

男性なので大きいし暴れるしで退所勧告を受けた。


その後は特養に併設されたショートステイ、その次はサ高住

それから2ヶ所の有料老人ホームを経て

最後はサチコの入院している精神病院で亡くなった。

聞くだけでウンザリじゃないか。


お父さんは、暴れたら施設を出られると学習したのだ。

マミちゃんは親が可愛いから一生懸命だったというが

わたしゃ、そんな地獄はゴメンだね。


そうは言っても、サチコの退院は刻々と近づいている。

立ち退きの方も、工事が家から見える位置まで迫ってきた。

「そろそろ出て行って」と言われてから

引っ越し作業と並行して施設を探すのは、ものすごく大変そう。

近い将来、サチコが家なき子になるのは決定事項なので

早めに施設に入れて慣れさせた方がいいとも思う。

さりとて当てがあるわけじゃなし、さてどうしたものか。

私は天井を見上げて考えるのだった。

《続く》
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施設ジプシー・3

2025年02月21日 07時54分30秒 | みりこんぐらし
市内の施設を見限り、検索の範囲を市外に拡げて

有料老人ホームの検索をするようになった私。

入居費用が特養より高額と言われる有料老人ホームなら

要介護2でも1でも入れるのだ。

もう施設内に売店がある所がいいなどと、贅沢は言いまへん。

探す条件はただ一つ…最期の旅立ちの看取りをしてくれる施設じゃ。


考えればサチコは、施設入居者としてポイントが高い方だと思う。

元公務員なので、支払い能力に幾分安心感があるのもだが

何より肝心なのは小学生並みの小柄という点。

大柄や肥満の老人は重いので介護士の負担が大きいため

敬遠される傾向にある。

介護界で、小柄は人気物件なのだ。


それに、うるさい家族がいないのも高得点だと思う。

粘着質なクレーマーなど、施設にストレスをかける家族には

永遠に順番が回ってこないらしいではないか。

その点、うちは大丈夫。

サチコの待遇を気にかけて、あれこれ口を出す愛は無い。


さらに立ち退きが迫っているという、同情案件の切り札もあるので

比較的入居しやすいのではなかろうか。

難点は本人の悪質な性格だが、それは黙っておく所存。


有料老人ホームを探すとは言いながら

実は最初に電話をかけたのは、県境の山奥にある療養型病院。

うちから車で2時間と遠方なので、おいそれと面会に行けず

冬は雪深いのでなおさら行けない…

その距離に魅せられ、以前から気になっていた。

いっそ県外でもかまわないが、最初に連れて行くのと

亡くなった時の搬送が大変になるので、とりあえずギリギリ県内からだ。


ここを知ったのは、テレビのCM。

やっぱりCMを何度も見ていると、親しみが湧くものねぇ。

テレビ通販に電話をかけてしまう年寄りの心境がわかるわ。

宣伝しているからには募集しているのかもしれず

話だけでも聞いてみようと思い

ウォーミングアップのつもりでかけてみた。


相談員らしき若い女性が出て、ひとまず親切に話は聞いてくれたが

「CMは流していますが、募集しているわけではないんです。

ここは寝たきりの人が対象で、今は満床です」

だそうな。


「元気な人には、デイサービスを受けながら

ずっと泊まれる施設があるのでは?」

ホームページで知った、お泊まりデイサービスのことを言うと

「そちらなら、空きがあります」

ということで、パンフレットを送ってくれることになったが

「とにかく一回、見学に来るように、話も入居申請もそれから」

徹頭徹尾、このスタンス。

山奥でも海底でも、まず足を運ぶことが先決らしい。

となると、やっぱり遠過ぎるかな…と思ってしまった。


やがて、パンフレットが届く。

サチコが入れそうなお泊まりデイサービスの料金は

今のショウタキとほぼ同じ。

しかしサチコが行ったこともない土地で

山を眺めて暮らせるかは疑問なので

立ち退きが近づいて崖っぷちになる時まで保留することにした。



ウォーミングアップが終わったので

ユリ寺の料理番仲間、梶田さんお薦めのサイト… 

“みんなの介護”で、市外にある有料老人ホームを本格的に検索。

前回の電話で、あんまり遠くだと見学に行く時に困ると学習したので

今度は市外でも近場に焦点を当てるのだ。


“みんなの介護”は、老人ホーム入居の仲介業者。

土地やアパートを仲介する不動産屋の施設版で

入れる施設を紹介してくれる会社だ。

もちろん親切ではなく、れっきとした商売。

入居者を募集する施設が、“みんなの介護”に登録し

老人の処遇に悩む人がそのサイトを見て、入居が決まったら

“みんなの介護”に幾ばくかの礼金を支払うシステムらしい。

老人が増えると、こんな商売が出てくるのね。


有料老人ホームは入居費用が高額というイメージを持っていたため

「あまりにも高いと、サチコの年金でも無理かも」

そう思いながらサイトを見たが、田舎のことなので

都会みたいにべらぼうな料金ではない。

月々支払う入居費の表示は、たいてい20万円前後。


ただしこれは基本料金で、紙オムツや日用品などは別途徴収なので

実際の支払いは23〜4万円ほど。

特養の1.5倍から2倍というところか。

入居する際に利用者が施設に支払う敷金のような入居一時金も

ほんのお印程度の6〜7万円。

施設によっては、一時金が無料の所もある。


その中に、車で小一時間かかるけど病院が経営する所があった。

さっそく電話したら、今度も若い女性が出て親切に話を聞いてくれたが

ここもやっぱり、まず見学ありき。

「ご家族、またはご本人とご家族に来ていただいて

見学とお話を聞かせていただいて

それから申込書を書いていただく手順になります」


施設って、見学が大事なのね。

表向きは本人や家族が施設を見学し、納得したら申し込む体裁。

一方、施設の方も本人や家族を見学して

入居させるか否かを決める判断材料にする…

それが“見学”というイベントらしい。

《続く》
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施設ジプシー・2

2025年02月20日 08時14分35秒 | みりこんぐらし
年末から2ヶ月間、入院している実家の母サチコ。

月末に退院したら、再び寂しい一人暮らしに戻れるだろうか。

それも心配だったが、問題は私の方である。

2ヶ月間の自由を満喫してしまった後で

再び彼女に翻弄される日常へ戻れるだろうか。


サチコの不満げな顔を見ず

一方的にキーキーと窮状を訴える声を聞かない日々は天国だった。

数年ぶりに訪れた穏やかな生活を捨てて

また戦場に戻る自信が無い。

ぶっちゃけ私は、サチコに付き合わされる母娘ごっこに飽きたのだ。


だから施設探し。

サチコは、施設入りを拒否しているわけではない。

一人で寝て、一人で起きて、一人で食事をすることが

身を切られるようにつらいそうで

「一人でないなら、どこでもいい…もう頑張る気力が無い」

とまで言う。

コロコロ変わるので本心がどうかは不明だが

病院では落ち着いているのだから

常に人がいて移動の無い場所の方が向いていることは

立証されたように思う。


そしてはっきりわかっているのは

デイサービスという介護形態がサチコに合わないということ。

「朝、眠たいのに連れて行かれて、芋みたいに風呂へ入れられて

子供だましの工作やゲームさせられて

また一人ぼっちの家へ放り込まれる、この繰り返しがしんどい」

デイサービスのある一日おきに、一人から大勢の所へ行き

大勢からまたポツンと一人に戻る…

鬱病は、この落差がしんどいのだ。


そして鬱病は、朝がつらいのが特徴の病気。

そのつらい朝、無理に起きて食事をし、着替えをし

その上、外に出るのは槍で刺されるようにつらいと聞く。

お互いに無理な母娘ごっこを続けながら

つらいデイサービスに通わせるより

一ヶ所にずっと居られる完全入居の施設の方が

サチコには向いているのかもしれない。


とはいえ、つい数日前まで私はこう考えていた。

「6月の介護認定で要介護3になったら

市内の特養(特別養護老人ホーム)に申し込んで 

今のデイサービスに通わせながら入居の順番を気長に待とう」


2の次は3…誰だってそう思うだろう。

しかし先日、介護界は違うというのを

同級生テルちゃんのお母さんで知った。

今年の介護認定で、要介護2から要支援2になったのだ。


数字が増えたから良い、減ったから悪いということではない。

数字が減れば、介護保険を使える範囲は狭まることがあるし

要介護3以上でなければ特養に申し込めないのも事実だけど

デイサービスなど、すでに介護保険を使ったサービスを受けている人は

施設に支払う“基本サービス利用料金”が多少安くなるので

いちがいに良い悪いとは決めつけられない。


ちなみに、ひと月分の基本サービス利用料金は現行で

要支援1が3,450円、2が6,972円

要介護1になると10,458円、2は15,370円、3は22,359円

4は24,677円、5は27,209円だ。

ここに初期加算、総合マネジメント加算、認知症加算

サービス提供体制強化加算など100円単位の細かい追加加算があり

さらに食費、おやつ、洗濯料金、宿泊料金などの実費が加算されて

要介護2のサチコの場合は月に7万5千円前後が引き落とされるのである。


ともあれ日本は老人が溢れているが、老人ホームの数は追いついてない。

そこで考えるのは、要介護度をなかなか進めない策。

期待を裏切る女サチコだって、3に進むどころか

1や要支援になることだってあるかも。


そして運良く要介護3をゲットし、特養に申し込んだとしても

すぐ入れるわけではない。

何十人、地域によっては何百人もの長い順番待ちが始まるだけだ。

そして順番が来る頃には生命が尽きていることも、珍しい話ではない。

同級生けいちゃんは、お母さんの施設入居を12年前に申し込んでいたが

「順番が来ました」と施設から電話があったのは、去年。

お母さんが亡くなってから、4年後だ。

そんなこともあって、私は要介護3を待つ計画を白紙に戻した。


要介護3待ちを諦めると、市内の特養は全滅だ。

要介護2から入れるグループホームも

9人ひと組で集団生活をする所なので

認知症だけでなく鬱病があるサチコは入居が難しい。

身体的な病気が無いので、ケアハウスや老人保健施設も無理。

介護サービス付き高齢者向け住宅…サ高住だけは選択肢として残るが

個室で一人暮らしをするのと同じなので

月々20万円近い入居費用を払っても何の解決にもならない。


探す特養を市外に拡げても、結果は同じだ。

日本中、要介護3以上でなければ

特養には申し込めないという決まりである。


が、市外には有料老人ホームがある。

うちらの市内には無いけど、人口の多い市外にはあちこちあって

検索してみると要介護1や2でも入れるらしいではないか。

月々の費用は特養より高いが、その分、特養より入居しやすいみたい。

私は市外の有料老人ホームに照準を合わせた。

《続く》
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施設ジプシー・1

2025年02月18日 10時03分06秒 | みりこんぐらし
実家の母サチコの退院が近づいている。

年末年始にデイサービスと日に2回の弁当配達が休みになるため

かかりつけの精神病院に頼んで一時的に入院させてもらったものの

本人が「まだ入院していたい」と言うので

今月末まで延長してもらっていた。


この約2ヶ月、デイサービスの送り出しに通うこともなく

頻繁な電話や呼び出しからも解放されて

数年ぶりにのんびり過ごせた私は、体重が少し増えて元気を取り戻した。


だが退院の日が近づくにつれて

「こうしてはいられないのではないか…」

そんな焦りにも似た気持ちが湧き起こる。

91才、認知症と鬱病で要介護2のサチコが

2ヶ月も病院で暮らした後で、急にまた一人暮らしに戻れるだろうか。


…無理のような気がする。

「一人だと不安で安眠できない」

「昼と夜の弁当は届くが、朝ご飯は自力なのが億劫」

「デイサービスに行ったり来たりするのはしんどい」

日頃、そう主張するサチコがおとなしいのは

その三大問題を入院生活が解決しているからだ。


サチコと離れて暇ができると

私はしきりに隣のおばさんを思い出すようになった。

前回の記事でお話ししたが、90才を迎えて一人暮らしがつらくなり

3年前に広島市内の息子さんの所へ引き取られたおばさんだ。


引き取られる1〜2年前は、忙しかった。

家電が動かない、虫が出た、気分が悪いなど

様々な理由で呼び出されては、ほぼ毎日通っていた。

行けば一人ぼっちの我が身をとめどなく嘆き

クスン、クスンと幼児のように甘えた泣き真似をする。

幼児なら可愛いけど、何しろ相手は当時90の婆さんだ。

それを聞くたびに寒気を感じたものだが、今思えばサチコとそっくり。


あの頃、私は確かに思っていた。

ひょっとしたら、おばさんは隣の私をわざとこき使って

息子さんに苦情を言わせたいのでは…。


「いくら隣でも、こう毎日世話をさせられたんじゃあ困ります。

何とかしてくださいっ!」

私が息子さんに抗議すれば、彼は動かざるを得ない。

広島の家を処分して、自分の元へ帰ってくれるはず…

おばさんは、そう考えていたのではないだろうか。


「隣の若奥さんが怒ったから、息子が帰るしかなくなった」

彼女は、この状況を目指していたような気がする。

悪者は私で、息子さんは被害者。

そしておばさんは、年寄りだから何も知らないという立ち位置。


なぜこんなに手の込んだことをするかというと

息子さんと自分の仲だけは、良い状態に保ちたいから。

帰れ帰れとうるさくせがんでも息子さんに嫌われるだけなので

第三者の口から言わせる魂胆だ。

実際、彼女の言動は時々芝居がかっていて

こちらを思い通りに動かそうと画策する計算高さを感じたものである。


おばさんには、鬱病の入院歴があった。

そしてあの頃の彼女は、認知症が始まっていた。

つまり、今のサチコと似たようなものだ。


認知症と鬱病が重なると、皆がそうなるわけではないと思うが

よく考えたら、おばさんとサチコの言動には共通した部分が多い。

ボンヤリしていたかと思えば泣き、泣いたかと思えば

ニタリと笑ってギョッとするようなことを口走る…

物腰が柔らかくナヨナヨしたおばさんと

歩く凶器サチコとは全くの別物と認識していたが

症状は同じと言えるかもしれない。


だとすると、サチコが私を無料の召使いとして

無体に扱う理由もわかるというもの。

誰だって他人より我が子の方がいいので当然だが

サチコは実子のマーヤを実家に呼び戻して、そばに置きたいのである。


あまりのワガママに私がサジを投げ

「もう手を引く!」

そうマーヤに宣言したら思うツボ。

「継子が逃げたので、娘が関西から帰ってくれました」

この状況に持ち込めるというわけ。

この際、マーヤが仕事を辞めようが家族と別居しようが

サチコの知ったことではない。

サチコ自身は決して悪者にならないまま、悲願は叶うというわけだ。


こんな悪質な老婆の面倒を、この先見続けることができるのだろうか…

サチコも、再び始まる一人暮らしに耐えられるのだろうか…

そう思い始めた私は、施設探しに着手した。

《続く》
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不穏な空気

2025年02月15日 13時24分02秒 | みりこんぐらし
うちの左隣の家は以前、90才のおばさんが住んでいた。

彼女はご主人を亡くして7〜8年の間、一人暮らしをしていたが

だんだんおかしくなって広島市内の息子さんに引き取られた。

が、お嫁さんと折り合いが悪いため

ほどなく老人ホームへ入居して、一度電話があったきりだ。


おばさんが老人ホームへ入ると、築38年の大きな家は

すぐに売りに出された。

新聞に挟まれていた広告を見たら、2千万超え円の高値。

敷地が広いのと駐車場が大きいのが、セールスポイントらしい。


広告が出ると、何人かが見学に訪れていた。

「誰が買うんだろう?」

隣に住む我々は、興味しんしん。

だって、隣人って大事じゃないの。

変わり者や怪しげな人は嫌だし、前の住人みたいな高齢者も困る。

生前のおじさんは認知症になって包丁を振り回したし

おじさん亡き後のおばさんとは、近所付き合いというより介護だった。

夫婦が同時に亡くなることは無いため、残された年寄りには手がかかる…

おばさんや近所の実例でそのことを知り

実家の母サチコで身に沁みた私である。


隣の家は広告が出るたびに少しずつ値を下げ、やがて買い手がついた。

うちと同じシルバーストリートに住む80才の女性Sさんの

姪一家だそう。


引っ越しに先駆けて、そのSさんから挨拶があった。

「30代半ばの若い夫婦と幼、小、中の子供が3人いるから

うるさいだろうけど、よろしくね。

子供が騒ぐからアパートを出ることになったんだけど

広い庭が欲しいと言って、あの家に決めたのよ」


そして一昨年の4月、一家は隣へ引っ越してきた。

市内にある三交代の工場に勤めるご主人は

少々ヤカラ臭が漂うが、話すと柔らかい人物。

病院で受付のパートをしている奥さんは、しっかり者という印象だ。

Sさんの姪一家という安心感に加え、願ってもなかった若いファミリーに

我々は胸をなでおろした。


しかしその一方で我々は、住宅ローンよりも家の維持費を案じた。

車を2台持って育ち盛りの子供3人を育てながら

あの大きな家を維持できるだろうか… 。


なにせ隣は、華道教室だった。

教室用の大広間をメインに設計され

間取りに難が多いため電気代がハンパない。

敷地が広いので固定資産税も高く

生徒の増加を見越して作った特大の浄化槽は清掃代金が十万超え。

しかし生徒は増えず、華道教室は早晩、開店休業となったのはともかく

それらの維持費が年金生活を圧迫すると、おばさんはよくこぼしていた。


が、奥さんの父親…つまりSさんの弟が毎日出入りして

共働きの両親に代わって子供たちの面倒を見ているし

Sさんから、奥さんの両親はすでに年金生活だが

ご主人の実家は建設系の自営業だと聞いたので

大丈夫だろうと思い直した。

親がしっかりしていれば、経済援助が受けられると思ったからだ。


隣の夫婦は人懐こくもなく、かといって素っ気ないわけでもなく

隣人としてちょうどいい。

欲しかったという広い庭で、ご主人が小学生の息子に野球を教えたり

夏はビニールプールで遊ばせたり、友だちを呼んでバーベキューをしたり…

「家を持ったらこうしたい」と思っていたであろう夢を

着々と実現する一家に、我々は目を細めるのだった。

賑やかな子供の声が聞こえるって、嬉しいことなのよ。


ともあれ2年近くも隣に住んでいれば、色々なことがわかってくる。

それは奥さんが、次男の同級生の妹だったからだ。

前に住んでいたアパートを出たのは

子供の騒音で隣人と喧嘩が絶えず、何度も警察沙汰になったから…

ご主人の父親は自営業という名のフリーターで

奥さんの両親はパチンカー…

Sさんから聞かされた内容とは、少しズレがあった。


その隣の家が今、大変なことになっている。

先月の半ば、ご主人が仕事を辞めたのだ。

夫婦が大声で喧嘩をしていたのが聞こえて、知った。


その内容によると、ご主人は元々仕事が続かないタイプで

知人の世話で工場に就職し、まだ年月が浅いうちに家を買ったらしい。

「何で黙って辞めたん!紹介してくれた◯◯さんに何て言うんよ!」

「仕事が合わんのじゃけん、しょうがなかろうが!」

「あんたが無職になったら、どうやって払うんよ!」

「仕事探しゃあええんじゃろうが!」

「どうせまた辞めるじゃろ!」

「うるさい!」


子供たちはどんな思いで、この言い争いを聞いていることだろう。

昨年末に働かない旦那を捨てた同級生モンちゃんのこともあって

私の胸は痛んだ。


あれから1ヶ月、ご主人がスーツを着て出かけるのを何度か見た。

おそらく面接だと思われる。

「再就職して欲しい…」

私は切に願った。

だって離婚して一家離散となったら、隣はまた売りに出る。

今度は誰が買うやら。

彼らにはぜひとも、頑張って住み続けてもらいたいではないか。


しかし先日、また大きな喧嘩が勃発。

以後、奥さんと子供たちの声は聞こえなくなった。

実家へ帰ったのだと思う。

一家の行く末を案じている。
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靴下番長

2025年02月12日 08時44分44秒 | みりこんぐらし
何を着ようと、変わり映えのしない65才。

去年の秋から冬にかけて

同級生マミちゃんの洋品店で何枚か買ったものの、どれも今ひとつ。


中でも一番の失敗は、この白シャツか。



キリッとした真っ白のシャツって、一着は持っていたいアイテム。

ちょっと厚手だし、冬に白ってなかなかいいじゃんと思い

久しぶりに買ってみたけど、これは失敗だった。

…似合わんのだわ。

さびれた遊園地で所在なく切符もぎをするおばちゃんって感じ。


おばちゃんに異存は無いけど、制服めいているというのか

馴染まなくて浮いている。

これを“着こなせてない”というのだろう。

おそらく学生風の襟の形と、綿85%という素材の問題。

くすんだ高齢者には、カジュアル過ぎるんだと思う。


マミちゃんの店のマネキンは、このシャツの上に

カーキ色のダボッとしたベストを合わせていた。

私はカーキ色が似合わないのでシャツだけ買ったんだけど

カーキ色より似合わないのは、この襟と綿素材だった。


「私が着たら、何か変なんよ…」

マミちゃんに相談すると

「上のボタンを開けて、中に薄手のハイネックを着たら?

ほら、こないだ買ってくれたオレンジやマゼンダの」

とアドバイス。

おお、そうじゃそうじゃと思ってやってみたが

化繊のハイネックと綿のシャツは相性悪し。

お互いに引っかかって、動きにくいんじゃ。

結局、一度も日の目を見ず。


他に買ったワコールの上衣…あれはプルオーバーと呼ぶのか…

これも失敗だったかも。

素材はポリエステル100%で

高齢者の崩れた体型にテロンと柔らかく沿ってくれる。

が、ポリエステルの生地はひんやりするのが特徴なんじゃ。

秋冬の新作ということで買ったけど、寒くてしゃあない。


他にも買った、やはりワコールのズボン…

あれは何と呼ぶのか、足首までの丈で

裾がタックで縮めてあるモンペみたいな攻めたデザイン…

深緑色のこれも、出番が無いまま終わりそう。


よく考えれば私は、こんな突飛なズボンを

カッコよく着こなせる人物ではなかった。

色は派手好みでも、デザインはオーソドックスな服が多いので

無理にはいたところで、上に着る物も靴もバッグも雰囲気ズレズレ。

“無理してズボンだけ買いました”感が、虚しく漂う。

よって、この秋冬物は全敗に終わった。

もう冒険はすまいと心に誓う。



そんなファッション負け組のダサい私でも

唯一、密かに自信を持つアイテムが。

それは靴下。

笑っちゃうね。


隣市のスーパーの2階に

女性用の小物を色々置いているショップがある。

近年、寒くなってくると、私はそこへ靴下を買いに行くのだ。

可愛くて暖かく、柔らかくて丈夫で厚みもほど良い。

ナンボ暖かいのがいいといっても、あんまりゴツいと

靴が入らなくて困るからね。


しかもカカトがガサガサにならないばかりか

つま先から足首まで、強からず弱からずフィット。

その使用感は何度洗っても変わらない。

ほどよく締まる靴下って、年寄りには大事なのよ。

どんなに素敵なデザインでも

靴下の中で足が泳ぐようなのは疲れるんだわ。
 

そんな申し分ない靴下なのに、何と三足で千円という信じられない安さ。

わざわざ買いに行く価値があるというものよ。


この靴下に出会うまで、私の靴下ライフは微妙なものだった。

冬はマミちゃんの店でカカトガサガサ防止の靴下を買い

あと先は同級生ユリちゃんのお寺で料理をした時に

お礼だかご褒美だかで支給される靴下を消費する暮らし。


ただし靴下は、毎回くれるのではない。

年に2回か3回、お祭りと大きな行事の時だけ

マミちゃんの店で380円で販売されているのを十足ほど並べ

我々料理番と、手伝いをした檀家さんに一足ずつ選ばせてくれる。


だけどマミちゃんの店は年配女性がターゲットなので

グレー、茶、くすんだピンク…どれも見事な婆色。

もう少し高い靴下なら可愛いのがあって、私も時々買うんだけど

店で一番安いのといったら無地の婆色しか無い。

小ましなのは黒だが、黒はお寺の嫁の必須アイテムということで

彼女と兄嫁さんが先に取ってしまい、我々は残った婆色ワールドで彷徨う。


そんな裏悲しい靴下ライフに喜びをもたらしてくれたのが

この子たち。


未使用のが4足あったので、見せびらかしてみた。

美しい花柄のこれを履いていると、幸せな気持ちになる。

願わくば今後も毎年、販売して欲しいと願っている。
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婆ネタ・5

2025年02月09日 16時49分17秒 | みりこんぐらし
サチコが入院を今月末まで延長した理由は

同級生のデイサービス仲間メイ子ちゃんについた嘘が

バレないようにするための格好…
 
格好というワードで延長の謎が解明されると

もう一つ残っていた疑問も自然に解消された。

今回、どうしてサチコが素直に入院したか…である。


それは、施設の職員に向けた格好。

延長がメイ子ちゃんに向けた格好なら

入院は施設の職員向けの格好というわけだ。


最初は誰でもそうであるように、サチコは入院を嫌がった。

嫌がるというより、正月に行き場の無い自分をしきりに嘆く。

担当医には「入院します」と言ったものの

例のごとく、心が揺れ続けるヒロイン状態だ。


施設には、「実子が帰省しなければ入院」と伝えてあった。

こういうのも個人情報なので、メイ子ちゃんを始め

デイサービスの利用者に漏れることは無い。

しかしその伝達は職員全員が共有していて

入れ替わり立ち替わり、デイサービスの迎えが来るたびに

「娘さんが帰られるから、いいですね!」

サチコにそう話しかけていた。


けれども12月の半ばになると

実子のマーヤが正月の帰省に消極的だとわかってきた。

帰省の話が出ても電話が無い、かけても留守、リターンも無し。

これが続けば、認知症でもわかる。


その頃から、サチコは精神安定剤とビールを飲み始めて

朝、起きられなくなった。

私はサチコがよくやる、周囲を困らせて気を引くための

パフォーマンスと思っていたが

本人はマーヤが帰らないとわかって絶望したと思われる。


一人娘に対するサチコの思いは、尋常でなく強い。

帰らないとなると、サチコにはやるべきことがあった。

施設の職員に、マーヤが冷たい娘だと思われないよう立ち回ること。

それには入院しかなかった。


「入院するから、帰省はしなくていい」

先にそう断ったという格好にすれば、娘の低体温は問われず

ついでに「娘から嫌われた母」という汚名も払拭できる…

誰もそんなこと思やしないんだけど

いつも他人のそういう部分を見透かして、あざ笑ってきたサチコは

いざ自分にそういう事態が訪れると

人の目や口が気になってしょうがないのだ。

このような面倒くさい性格が

サチコの脳と心を破壊したのかもしれなかった。


ともあれ入院のお陰で穏やかな日々を満喫中の私だが

ひとたび楽をしてしまったら、もう以前には戻れないかも。

そこで今は、入れる余地の無い市内の施設を諦め

遠くの施設に連絡を取ったりパンフレットを取り寄せて

虎視眈々と勉強中。


安く入れることで人気の特別養護老人ホームは

入居資格が要介護3以上なので、要介護2のサチコは入れない。

要介護2でも入れる有料老人ホームは費用が高い所しかなく

元公務員のサチコの年金でも厳しいため、現実性が無い。


サ高住(サービス付き高齢者住宅)であれば

入居条件が要支援からなので、サチコでも入れる。

夜間も当直がいて、希望すれば三食が付き

デイサービスや入浴介助も受けられる賃貸アパートのようなもので

私の住む町にもある。


が、何だかんだの上乗せで毎月の費用が20万近くかかり

生活はアパートで一人暮らしをするのとあまり変わらない。

入院したら部屋を返すか

あるいは借りていたいなら家賃を払い続けなければならず

しかもアパート扱いだから看取りができない。

つまり終の住処にはならないので人気が無く、いつも空き部屋がある。


同級生けいちゃんのお父さんも、マミちゃんのお父さんも

他に数人の知り合いの親が、生前はサ高住を利用したが

皆、数ヶ月で出てしまった。

今は別の知り合いが、施設の順番待ちをする母親を入居させているが

サ高住で順番待ちをしたら、永遠に順番が来ないという黒い噂もある。


サチコに手がかかるようになって以来、私はどこかで思っていた。

入れる施設が無いまま、立ち退きの日が来てしまったら

国土交通省あたりに「おそれながら」と申し出て

何とかしてもらおう…。


しかし甘かった。

悪名高いサ高住の親分は厚生労働省ではなく

国土交通省の管轄らしいではないか。

町内のサ高住を紹介されて、終わりそう。


色々調べてみたが、入居させるのであれば

やはり特別養護老人ホームが一番良さげだ。

だから人気があって、なかなか入れない。


本人の収入に見合った費用で入れるのもそうだけど

民間でなく病院経営なので、病気に対して手厚く

看取りまで確実にやってくれるのはもとより

いちいち外出させて外部の病院へ連れて行く手間が少ない。

母体が大きいので経営不振で倒産したり

経営者が変わって混乱する可能性も少ない。


しかし私が最も注目する点は、施設内の売店の有無。

民間経営の小さい所だと売店が無いので

やれ衣類だティッシュだと、施設や本人から連絡が来たら

いちいち買って届けなければならない。

料金を支払えば買い物を代行してくれる所もあるそうだが

施設によってあったり無かったり、確実でない。

よって医療法人が母体の特養で、売店のある所が私の希望。

要介護3になって申し込み、順番が回ってきたらの儚い夢である。


しかし特養ではないものの、県境に一軒、これはと思う施設がある。

デイサービスを受けながら、永遠に宿泊できる形態の施設だ。

うちからは遠いが、マーヤの住む関西からは少し近くなる立地も魅力。

この際、バトンタッチだ。


さっそく電話をしたら、要介護2のサチコでも可能だそうで

一度、見学に来るよう言われた。

が、何しろ遠いし、今は雪深いので行けそうもない。

春になったら考えようと思っている。

《完》
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婆ネタ・4

2025年02月07日 09時44分44秒 | みりこんぐらし
サチコが自ら進んで入院し

さらに自ら入院期間を延長したのはなぜか。

去年の夏、初めて入院した時は脱走を企て

洋服や大きいマスクを持って来いと私に命じたサチコが…

家もお金も継子に盗られると罵詈雑言を吐いていたサチコが…

今回、滅多に電話をかけてこないのは明らかにおかしい。


思いつくままの電話も迷惑だが、あんまり静かだと

また急に何を言い出すやら、反動が怖いじゃないの。

今はサチコの世話から解放されてパラダイスだけど

いつか突然の電話でそれが終わると思ったら

油断するわけにいかないじゃないの。


しかしやがて、不気味な静寂の理由が明らかになった。

…ショウタキのデイサービスには、メイ子ちゃんという

サチコの同級生も通っている。

二人の実家は近所で、幼馴染みでもあった。


大音響のマシンガントークを炸裂させ

ガハハ!と笑う陽気な彼女は、陰気な気取り屋のサチコと対照的だが

人を人とも思わぬ所や自慢しいの女王体質はサチコと同じなので

二人は仲良しじゃない。

それでも生き残っている同級生は彼女だけだから

お互いに伴侶を亡くして一人暮らしという共通点をよすがに

サチコの方が幾分遠慮する形で付き合っている。


代々米問屋を営んできた裕福な家付き娘のメイ子ちゃんは

数々の自慢案件を持つが、中でも一番の自慢は

私より一つ上の娘さんが岡山の開業医に嫁いでいること。

それをデイサービスでも自慢しまくるので

サチコは大いに気に入らない。

娘自慢はサチコの十八番でも、医者の妻というカードを出されたら

サチコ基準では負けになるらしく、いつも悔しがっている。

デイサービスに行きたがらないのは

メイ子ちゃんも原因の一つだと私は見ているのだ。


この正月が明けた10日過ぎ、実家の様子を見に行くと

メイ子ちゃんから遅い年賀状が届いていた。

それにはこう書いてある。

“前にも話しましたけど岡山の娘が迎えに来てくれたので

デーサービスが休みの間はそちらで厄介になりました。

娘夫婦と孫たちが良くしてくれて楽しい正月でした。

サチコさんも久しぶりに娘さんと会って嬉しかったでしょう。

またデーサービスでたくさん話をしましょうね”


メイ子ちゃんもどっぷり認知症だが、なかなかどうして

しっかりした字と文章だ。

サチコはこの年賀状をまだ見てないが、見たら逆上するのは確定。


ともあれ内容から推測するに、メイ子ちゃんとサチコの間で

施設も弁当も休みになる年末年始の6日間をどう過ごすかが

話題になっていたらしい。

サチコはメイ子ちゃんへのライバル心で

マーヤが帰省すると自慢していたようだ。


入院を延長したのは、そのメイ子ちゃんに会いたくないから。

3月からデイサービスに行けば、ほとぼりは冷めており

正月の話は回避できる寸法だ。


時の流れを利用して、別の結果にすり替えたり

無かったことにする…

これは狡猾なサチコが昔から使う手の一つなので、間違いない。

何が何でも入院を続ける決意だから

どうでもいい継子と接触する必要は無いのだ。

病院でひたすら息を潜め、月日が過ぎ去るのを待つ…

それがサチコの計画である。


「認知症の老人が、そこまで考えられるだろうか?」

認知症を知らない人は思うかもしれない。

しかし認知症はある日突然、急に何もわからなくなるわけではない。

その前に、頭がはっきりしている時とそうでない時を繰り返す

長い助走がある。

“まだら”と呼ばれる時期だ。


まだら期には、ボンヤリしているかと思えば

突如しっかりしたり、こざかしい知恵で何やら画策することがあり

認知症の診断を疑ってしまいそうなことがよくある。

特に、本人が強いこだわりを持つ事柄に関しては

その現象がよく現れる。

が、そこは悲しいかな認知症。

こだわりを通すために子供じみた嘘をついたり

恥ずかしい作り話や小細工をやらかすことも、ままある。


サチコのこだわりは、“格好”。

元々自意識過剰なので、格好をつけるために何でもするさ。

娘が帰省してくれる…

メイ子ちゃんについた嘘を隠し通すためならば

2ヶ月の入院なんざ、へのカッパ。

入院を延長した原因がわかったので、私は退院までの残された日々を

存分に楽しむことができそうだ。

《続く》
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婆ネタ・3

2025年02月05日 10時27分47秒 | みりこんぐらし
寒波が襲っていますが、皆様の所は大丈夫でしょうか?

くれぐれも気をつけてお過ごしください。



で、私を悩ませている当のサチコだが

昨年末から現在に至るまで、依然として精神病院へ入院中。
 
時間に余裕があるもんで、2日の節分には巻き寿司を作っちゃった。

いつものビンボー寿司と…


エビマヨ巻き

家族で豆まきもして、楽しかった。



サチコは、デイサービスの年末年始の休業が終わる1月6日が

退院予定だった。

しかし実家の玄関その他を修繕する業者の日程が決まったため

私が1月末までの延長を希望。

コロナ禍の遺産で材料が入りにくいのと

儲けにならない工事は後回しにされるのとで

昨年9月に頼んだ工事が1月になったのだ。


サチコは今もって、この工事に納得していない。

「どうせ立ち退きになって壊すのに、もったいない!」

と主張し

「継子が友だちの大工とグルになって、私の金を取ろうとしとる」

とまでほざきおった。


しかしショウタキのケアマネからは

「玄関の修繕はまだですか?」

と催促され続けているし、私も玄関を直すのは

必要なことだと思っている。

人の世話にならなければ生活できなくなったのだから

人が出入りしやすように家を整備するのは要介護者の義務とすら思う。

サチコが家に居たら、業者に暴言を吐きまくるのは明白なので

留守の間にやってしまうもんね。


工事が終わり、1月の末が近づいたので

病院の相談員と電話で話し合った。

「せっかく慣れたデイサービスが振り出しに戻るので

早めに退院された方がいいと思うんです」

相談員は言う。


サチコが退院すると、またデイサービスの送り出しが始まって

慌ただしくなるが、もっともな意見だと私も思った。

デイサービスに通い始めた初期は、施設へ行っても昼には帰ってしまい

午後は私に電話の嵐だった、あの悪夢が再び始まるのはごめんだ。


さらに入院に関しては、3ヶ月ルールというのがある。

最大3ヶ月間は入院できるが、長く入院すると

次に本当に調子が悪くなった時、退院して3ヶ月が経過しなければ

再び入院することはできない。

相談員は、そのことも心配している様子。


そして元気なサチコを引き留めたら

病院が民間施設の商売を邪魔する格好になるので

それを避けたいという都合もあるようだ。

少人数の利用者で運営されるショウタキは

一人が長く休むと減収が大きいのである。


私が退院を承諾したので、相談員は病棟のサチコと面談して

退院の日を決めることになった。

しかしサチコは、「まだ入院していたい」と言う。

説得不可能な性格は相談員もわかっているので

サチコの強い希望が通され、退院は今月末まで延長された。

実家の修繕も終わり、だから私は今、自由の身なのである。



話は遡って昨年11月。

施設が年末年始に休業すると知ったサチコが不安定になった時

私はこう思っていた。

「デイサービスが休みになるから、寂しいのだろう」


そして12月に入ると、サチコは自ら入院したいと言い出した。

その頃にはすでに入院を決めていたので

行く行かないで揉める恐れが無くなり、私は安堵したものだ。

しかし一方、「何でこんなに素直なんじゃ?」
 
と、いぶかしくも思った。

あまのじゃくサチコの素直は、ちょっと怖いじゃないか。


そのまま年末が来て、すんなり入院したが

昨年の夏に初めて入院した時とは違って、今回は異様におとなしい。

インフルエンザの流行で面会が禁止になっているため

私が病院へ呼ばれることはなく、彼女も滅多に電話をしてこない。

「入院も2回目だから、慣れたんだろう」

そう思いながらも

「あのサチコがなぜ…」

違和感は、ずっと拭えないままだった。


エナジーバンパイアは、◯ぬまで治らん。

エナジーバンパイアとは、周囲の人間の時間や労働力を搾取し

愚痴や悪口を聞かせ続けて活力を吸い取る者のことだそうで

つまりサチコそのものじゃん。

そのモンスターが、こんなにもおとなしいのには

きっと何かがあるに違いないのだ。


やがて今頃になって、サチコが自ら進んで入院し

さらに自ら入院期間を延長した理由が判明した。

その真相は、単純なものだった。

《続く》
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婆ネタ・2

2025年02月02日 13時49分59秒 | みりこんぐらし
油断ならない施設…ショウタキ。

サチコに要介護が付くまで、そんな施設が存在することを知らなかった。

デイサービスに宿泊、希望があれば日に2回の弁当配達で安否確認…

施設と最初に面談した時、そのシステムを聞いた私は

「何と素晴らしい施設があるものよ」

と感激したものだ。


「1ヶ月単位、あるいは暑い間や寒い間

本人の希望があって、お部屋が空いていたらいつでも泊まれます」

そう言われたからこそ、喜んで契約したショウタキ。

しかしフタを開けたら泊まりは週一、デイサービスは一日おき。

なかなか入れない老人ホームの代わりに

宿泊という形でしっかり泊まらせてくれ

あと先はデイサービスと弁当でしのぐ所だと思っていたら

違っていた。


「もっと泊まれないのか」とたずねても、答えはすげない。

「本人の希望があれば、です。

お母様は長期宿泊どころか、週一の泊まりも嫌がられますし

9室あるお部屋も、長期となると空けられるかどうか

今はわからないので難しいかもしれません」

“本人の希望があれば”、“お部屋が空いていたら”

事前に提示した伏線が、施設と職員を守る寸法。

プロの話術に、舌を巻いた私である。


誤解の無いよう申し上げておくが、それはあくまで私にとってのこと。

私が何でも裏を見ようとするひねくれた人間であり

サチコとは戸籍上、無関係の他人というイレギュラーな状況だからだ。

ショウタキのシステムが合っていて

助かっている利用者やご家族もおられるはずである。


ともあれサチコが難しい人間で、扱いに困るのは百も承知。

それをうまくやってくれるのがプロであり、施設だと思っていたが

施設では、親の性格も家族の責任になってしまうらしい。

「お母様の症状や気持ちを考えると

ここは娘様に少し頑張っていただいて…」

こればっかりで、私の負担はどんどこ増えていく。

さりげなく子供の孝行心を刺激して

やるべきことを増やすのもまた、プロの技。

孝行心の無い私は、持ち前のひねくれ根性でそう受け取るが

親を大切に思う子供なら、ひとたまりも無いだろう。


その例が、中学の同級生ミッくん。

彼の母親は、サチコと同じショウタキの利用者だ。

ミッくんは単身赴任で長らく海外に居て

奥さんは留守を守りながら、認知症になった彼の母親を

何年も一人で介護していた。

しかし数年前、奥さんが脳出血で倒れたため

ミッくんはすぐさま退職して帰国、母親の世話を引き継いだ。

幸いにも奥さんは生還し、今は無理の無い程度に

母親を介護するミッくんのサポートをしている。


寝坊してデイサービスに遅れたサチコを施設に送ったり

書類や薬のやり取りで施設へ行く時には、いつも彼を見かける。

気のいい子なので、施設から言われるままに母親を送迎しているのだ。


彼らの住まいは町外れで、送迎に時間がかかる。

しかし家族が送迎すれば、施設から送迎車を出さずに済むので

車や人員が浮くではないか…ひねくれた私はそう見ている。

私も一度、自力の送迎を打診されたことがあるからだ。


まずデイサービスの送り出しを提案され、これは飲んだ。

サチコが行きたがらないのと、玄関に外鍵が無いため

裏から出入りするという物理的な問題があったからだ。

が、送り出しに慣れてくると

「同じ遠くから来られるなら、朝だけでも施設まで送っていただくと
 
お母様も安心されると思うんですよ」

そのような意味のことをさりげなく言われた。


ミッくんは母親の近所に住んでいるし、家事をする必要も無く

母親だけに専念できるので支障は無かろうが

JRで3駅離れている私には無理。

「施設までの道が狭いので怖い」

と断ったが、朝の送り出しは

迎えの車と人員を節約するための前触れ… 

私はひねくれた心で、そう思った。


中学の頃から変わらない笑顔で

楽しそうに母親を連れて来るミッくんを見るたび

私の汚れきった心は洗われる。

しかし一方、脳出血で倒れた彼の奥さんは

近未来の私のような気がしてならない。

自分を大事にしよう…改めてそう誓う日々である。


ちなみにショウタキの料金は

要介護2・デイサービス週3・宿泊週1・日に2回の弁当配達

洗濯が施設任せで、1ヵ月約7万5千円。

弁当は昼も夕も、1食600円だ。

これに泊まりが増えると、朝食料金と宿泊料金で

一泊あたり5千円ちょっとが加算される。

このようなことを知るのも糧といえば糧だけど

あんまり役に立ちそうもない。

《続く》
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婆ネタ・1

2025年02月01日 09時15分35秒 | みりこんぐらし
「また婆ネタかよ…」

実家の母サチコ関連の記事をアップすると

お立ち寄りくださる方々の溜め息が聞こえそうだ。

本当に申し訳ない。

いつも我慢してくださって、本当にありがとうございます。


そう言う私だって、よその年寄りの話なんか面白くないもんね。

特にサチコのような人物の話は、胸くそ悪いぞ。

だけど、書くのは面白い。

壊れた年寄りが何を考えているか…

介護関係者が何を求めているのか…

その時は全然わからなくて当惑するんだけど

後で「なるほど」と納得することがよくあるのだ。

これがしゃべらずにおられようか。


自宅の姑に実家のサチコ…

二人の老女にかまける状況でも、唯一の趣味は続けられる。

それは人間観察。

生きとし生けるものの心模様や、世の仕組みを知るという

腹の足しにならないことが好きな私にとって

老人を媒体にもたらされる新しい知識は

厳しい日々の中で与えられる、小さな糧なのかもしれない。



さて91才のサチコが、認知症と鬱病で前後不覚となった現在

安全を確認した地元の人々は、徐々に本音を口にし始めた。

近所、趣味の仲間、商売などでサチコと長く関わってきた人たちが

その激しい気性を恐れ、引き、遠巻きにしてきたのがよくわかる。

皆、優しいのでダイレクトな表現ではないが

表向きではサチコを気遣う言葉の端々から、それを感じる。

「この人たちは何もかも、わかっていたんだな…」


サチコが壊れて以降、実子が寄りつかなくなったのも

存在を消されていた継子が急に現れたのも

「あのサチコさんなら、そうだろう」

と納得され、誰も不審に思わない様子。

説明不要の安堵感は、糧の一つである。


今まで未知の世界だった介護業界のあれこれを知るのも、やはり糧。

昨年、サチコが要介護2と認定されて以来

デイサービスだのケアマネだの、初めてづくしで

何もわからなかった私だが、やっと少しわかってきた。

ケアマネって、ズタズタの年寄りとその家族の救世主じゃないのね。

施設と利用者の間に入って何をするかというと

施設が円滑に運営できるよう

利用者との兼ね合いを調節するお仕事なのね。


老人の世話で疲弊している子世代が

優しく導いてくれるケアマネを信頼するのは無理もない。

しかし地獄に仏とばかりに、ありがたがったり

親孝行な子供と思われたくて

何もかもあの人たちの言う通りにしていたら、えらいことになる。


ケアマネだって人間だから、利用者や家族との相性によって

当たり外れがあるという。

サチコに付いたベテランのケアマネは、誠実でいい人だ。


しかし寂しい寂しいと訴え続け、問題行動を起こすことで

誰でもいいから無給の召使いをゲットしたいサチコとは

一定の距離を取りながら、できる範囲で関わるスタンスを

保ちたい私には手強い相手。

「これこれこういうことがありましたから

今日、様子を見に行ってあげてください」

「これから電話で事情を聞いてあげてください」

うっかりしていると、頻繁な訪問や電話を指導され

サチコとの距離を縮められてしまうため、油断できない。


けれどもそれは、サチコが関わっているのが老人ホームと違い

小規模多機能型居宅介護施設…通称ショウタキだからだ。

“小規模”というからには、少人数の利用者を対象に

少人数の職員で運営する施設。

“居宅介護”というからには、自宅で生活を続ける人のための施設。


日本は凄まじい高齢化に対応できず、完全入居できる老人施設が足りない。

だから政府は、要介護度の認定をなるべく進ませない方針に決め

やたらと自宅での生活を推奨するようになった。

しかしヨレヨレの老人が一人で生活するのは、誰が考えても大変だ。

特に困るのが風呂と食事。

老人を自宅で生活させなければ、商売は成り立たないので

その鬼門である風呂と食事を

デイサービス、宿泊、弁当の配食といった“多機能”でカバーし

自宅生活をサポートするのが、このショウタキという施設らしい。


転倒、ヒートショック、事故、火事などの危険から

老人を守るという建前があるので

施設の目や手が行き届かないところは、家族がカバーすることになる。

多機能によって至れり尽くせり

ありがたい施設であることに異論は無いが、結局のところ何かあるたびに

家族の負担は一つ、また一つと増えていき

確か別居しているはずが、知らず知らず同居と似た状況に近づいていく。

そんなショウタキの現実を知ったのも、やはり糧の一つである。

《続く》
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値上げと戦う

2025年01月24日 10時48分10秒 | みりこんぐらし
このところの物価上昇は、どうしたことだ。

こういうことに疎い私ですら驚くのだから

敏感な人はもっと衝撃を受けておられることだろう。


私が値上げに疎いのは、裕福だからではない。

我が家のエンゲル係数の高さにおいては

そんじょそこらの家庭に負けない自信がある。


しかし大人5人の家族に三度三度 

休みなくごはんを作り続ける身の上だと

「次のごはんは何を食べさせようか」

値段よりも、そっちが優先になってしまう。

贅沢三昧の特別料理を望み、年々食欲旺盛になる姑と

中高年になっても食べ盛りの男3人衆の腹を満たすため

日夜、孤軍奮闘する私には

安い物を探すなんて芸当をする余裕が無いのだ。


それでもさすがに最近は、危機感を覚え始めた。

「このままでは老後資金を貯めるどころか、食べて終わりじゃないか」

世間の値上げラッシュは、そこまでになったということである。


最初にびっくりしたのは、SB食品の瓶入りの七味を買った時だ。

キンピラごぼうにかけたら、真っ赤っかの粉ばっかり。

七つの材料が混じった七味特有の渋い赤ではない上

私の好きな山椒の実やユズが感じられない。


「あれ?一味と間違えた?」

咄嗟に自身の目と頭を疑った私。

でもよく見ると、やっぱり七味と書いてある。

七つの味のうちで一番安価であろう赤唐辛子だけを増量し

あとの六つの味は減らされているのだ。

ショックじゃ。


カラシ、ワサビなどのチューブも然り。

このところ、チューブのシルエットが変わった。

キャップの下が、以前はもっと張っていたはずだが

えらく撫で肩になっとるじゃんか。


ほら、チューブの口の下にある肩のところが

すんなりしてるでしょ。


あんた、着物でも着るつもりか…

一人でカラシやワサビに文句を言う。

チューブの形を変更して撫で肩にすると、内容量が少なくて済むからだ。

その手口がいまいましいではないか。


お菓子も高い。

甘党の我が家では、つまらぬ駄菓子も必要だが

もうスーパーでは買わない。

ドラッグストアで買う。

犬の食べ物を買うのにドラッグストアへは行くので

ついでにお菓子も買うようになったが

お菓子だけでなく乾物なども、スーパーより値段がかなり安いと知った。

こういうことは皆さん、とっくにやっておられるかもしれないが

安い物を求めて店をハシゴする時間が無い私にとっては

新発見だった。


ただし、物によっては安かろう悪かろうのロクでもない物もあるので

よく見極めなければならない。

こないだ、つい買った生麺のうどんなんて、ひどかったね。

昼の焼きうどんにしたら、焼き目が付かずに溶けていったぞ。

私の焼きうどんは、野菜を別に炒めておき

生麺の方はしっかり焼き付けてカリカリした香ばしさを出し

仕上げに炒めた野菜と合わせる。

だけど、このうどんはカリカリにならず

焼けば焼くほど細くなったので気味が悪く、流通の闇を感じた。


さて、野菜が高いのはもう諦めている。

そっちの方の節約は、簡単だ。

肉を減らせばいい。

ナンボ野菜が高いと言ったって肉、特に牛肉の値段にはかなわん。

肉料理を減らせば、野菜は十分買える。

焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶ…

義母ヨシコの三大好物の登場を減らして対応。

物価高を理由に、嫁姑の溜飲を下げる。


あと、私にとっては大発見だった事例がある。

それは電気鍋。

うちは鍋物をする時、土鍋でなく電気式の鍋を使う。

重たい土鍋と、カセットコンロを出すのが面倒だからだ。


長く使っていた、そのパナソニックの電気鍋が

先日、とうとう壊れた。

スイッチを入れてもなかなか温まらないのは前からで

騙し騙し使っていたが、とうとう温度調節のレバーが動かなくなったのだ。


そこで新しいのを買いに行こうとしたら、次男が「待て」と言う。

「俺のアパートにあるけん、取って来るわ」

昨年5月、結婚1年で離婚した元嫁アリサと使っていた電気鍋が

アパートに残されていたのだ。


次男が持ち帰った電気鍋は、うちで使っていた物より小さい二人用。

元新婚家庭では、このサイズで十分だ。

「ちょっと小さいか」

「ちょっとどころか、半分じゃ」

しかし夕食の時間が迫っていたので、その夜はありがたく使うことにした。
 

「おお!もう沸騰した!」

「新しいのは、早いのう」

新型の鍋に感動する次男と私。

よく考えれば鍋自体が小さいので、沸騰が早いのは当たり前だ。

これなら、電気代も半分で済むんじゃないのか。


さらに小さい鍋は、材料を入れてもすぐいっぱいになる。

皆で材料をチビチビと入れては食べるという

上品?な行為を繰り返した食後、肉も野菜もたくさん余った。

これなら、食材も半分で済むんじゃないのか。


値上げと戦うには、安い物を探したり献立の習慣を変える手もあるが

家族が多いから大きい鍋…という固定観念を捨てて

いっそ鍋やホットプレートを小さくするのも

一つの手段だと思った次第である。
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