羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

ハタキ

2009年11月21日 08時07分25秒 | Weblog
 十数年前に、母が作ったハタキ二本が、使いづらくなって久しい。
 しばらく前から、作り替えたいと思っていたが、億劫で出来なかった。
 いよいよ年末。
 いくらなんでもこのままでは掃除がしにくい。
 そこで、母が元気なうちに、作り方を教えてもらおうと思いたった。

 というのも建替えた我が家は、一室だけフローリングで、あとはすべて畳の部屋ばかり。
 当然、襖や障子に加えて、長押(なげし)があって、ハタキがなくては始まらない。
 つまり、あっちこっちに横桟が多い。

 まず、《和服ハギレ たち落とし》と書かれている洋服箱から、適当な布端を探す。その中にある布は、すべて絹布。それがごっそり詰め込まれている箱が二箱あった。赤、朱、白、紫が主で、他にも絞りの入ったものや、柄物のハギレなど、選り取りみどり状態だ。

 薄くて軽い赤い絹布を二本分、目分量で測って選び出す。
 幅は4センチ五ミリほど、長さは四十センチくらいを目安にして、二十本を用意した。
 それからこれまで使っていたハタキから、残っている布をはずし、棒だけにする。
 この棒には、布をまとめるために、一本の釘が棒の先に打ちこまれている。竹の棒に対して垂直で、片方は釘の頭、もう一方は釘の先が、ほんの少しだけ出ている状態だ。
 そこに十本の絹布を均等に分け、棒に対して並行にまとめて、釘の近くでキリッと結ぶ。
 次に絹布の向きを棒からはずれた方向に換えて、縛った紐の近くを持って、外側から縛り付けると出来上がりである。
 その作業を二回行った。
 新たに二本のハタキの完成だ。

 簡単なことだか、長さや太さや色合いや結び方にちょっとした気遣いが求められた。
 母さんと夜なべをした、て感じ。

 作り終えて、二箱に詰め込まれているハギレを、改めて見ながら
「これだけあれば、何十本もつくれそうね。でも丁度いい太さの竹を見つけるのが大変そうね」
 母に話しかける。
「誰が使うの?」
「確かに……」

 今の家のつくりでは、ハタキ+箒+塵取りを使って掃除をすることは、むしろ出来ない。
「掃除道具ひとつとっても、昭和は遠くなりにけりヨッ……」
 母は呟く。

 昨晩の夜なべの収穫は、二本のハタキと少し若返った母。
 今朝になって、さっそく座敷を掃除してみた。
 実に使い勝手がよい。
 これでまた十年はたっぷり持つだろう。
 
 実は、使い始める前に、朝日に向けてお祓いをした。
 すると真っ赤な薄絹が、より鮮やかな色に染まって美しく舞った。
 これぞハタキだ、といわんばかりに……。
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