羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

舌を巻く‘舌のはなし’

2006年04月29日 15時09分57秒 | Weblog
 予定通り本の片づけをしている。
 なかなかはかどらない。なぜって、忘れていた本を手にとって、読み始めてしまうからだ。どなたもこんな経験は、おもちですよね?

 そのなかから、一つ、ご紹介。
 季刊『is 特集:のび・ちぢみの愉しみ』1988年40号 ポーラ文化研究所刊
 「人体における伸縮」と題して養老孟司先生が書いておられる。

 エッセーは「伸びるのと縮むのと、どちらが積極的行為か」という問いかけからはじまる。
 常識的は伸びる方が積極的行為というイメージがある。しかし、養老先生の論法は、その常識をひっくり返してくれるから面白い。
 つまり、「人体の大部分については、じつは縮むのが積極的行為である」という。
 
 野口先生はこのことを、「痛みの感覚」を例に、次のように話されていた。
「‘痛み’と一言で言ってしまっている中身を、もう一度検討してみましょう。
 筋肉が能動的収縮性緊張=筋肉は力を入れると短くなって太くなって固くなります。その状態を頑張り続けたときにおこる感じを‘痛い’といってしまうことがありますよね。逆に、受動的伸展性緊張というのがあります。これは受身の状態で伸ばされることによって、痛みを感じることがあります。往々にして、“痛い”といってしまうときには、どちらの痛みかなんで考えませんよね。野口体操では、一度、その痛みの質を実感しなおしてみたいわけです」
 
 養老先生の話に戻すと、人間の動きは、そのほとんどが筋肉系で行われるので筋肉は「不器用な組織で、縮むしか能がない」という。
 筋肉は縮むときにエネルギーを消費し、伸びるときは弛緩(たるみ・ゆるむ)して他動的に伸ばされるというわけだ。
 野口先生がいわれる「能動的収縮性緊張」と「受動的伸展性緊張」とはそういうことから生まれる感覚なのだ。
 
 で、舌は、なぜ伸びるのかの話だが。
 舌は、そのなかに含まれている筋が収縮することによって伸びるらしい。
 ちょっと試して舌を伸ばしてみると、ある種の緊張感が起こる。
 指先で触ってみると硬く緊張している部分に触れることができる。
 しかし、そこが一体何処なのか、どの筋肉なのかは、分かりにくいというのが正直な私の実感だ。
 
 養老先生曰く、舌の伸長の機構は、ほとんど説明されていないという。自分で書いたもののほかはという但し書きつきであるが。つまり、単に舌を出すということを具体的に記述することは、なかなか難しいらしい。動物の種類によってもやや異なった機構があるという。
 では、養老先生の記述をそのまま、書き写しておこう。

『舌はほとんど筋肉だけを含んだ袋である。この舌の中で、筋肉は前後左右上下方向に走る。たとえば、左右上下方向に走る筋が強く収縮すると、舌は前後方向に伸びる。この場合、前後方向に走る筋も収縮しないわけではない。しかし、異なった方向に走る筋群の相互間の力関係があって、全体として舌は筋肉の収縮により伸長するのである。ゆえに筋肉がただ「縮む」だけであるにもかかわらず、舌は前後に「伸びる」。』
 これでも簡略化した説明だそうだ。
 
 縮まないと伸びない“舌のはなし”、人体の凄さにただ“舌を巻くしかない”
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