数百万部の写経による上納金で復元された、豪華絢爛白鳳伽藍の薬師寺から、徒歩10分ほどで、奈良の代表とも言える落ち着いた風情の唐招提寺へ・・・
唐招提寺南大門の正面に、古色蒼然たる金堂の姿が見えた。
国宝伽藍がかくも近くに存在するとは、さすが奈良の都と感心する。
医師に彫られたこの表示も気に入った。
確か法隆寺も同じようなものだったと思う。
この境内案内図も古都に相応しい。
好きなお寺だと、全てのものが素晴らしく感じてしまう。
これはオイラのエコ贔屓かもしれない。
井上靖が「天平の甍」と称えた国宝金堂の佇まい。
中央部が少し膨らんだ列柱(子供時代にエンタシスと学んだが、現在はそのようには表現しない?)は、ギリシャ建築の流れを汲むと勉強した。
寄棟造で、左右にゆったりと流れる軒の勾配が美しい。
寄棟の妻側から見る屋根が描く複雑な曲線も秀逸。
松を中心とした緑も少なからず多からず、誠に塩梅が良い。
金堂内にはすべて国宝の、釈迦の本地佛である盧舎那仏を中央に、東側(向かって右)に、現生で病の苦しみから救ってくれる薬師如来、西側(向かって左)に千の手と眼で、衆生を救ってくれる十一面千手観音が祀られている。
さらに四面の守りとして国宝の、持国天、増長天、広目天、多聞天が配置されている。
創建時には3棟あったと伝わる僧房。
現存の東室がこちらで、西と北にも僧房が建てられていた。
こちらは当然のことながら、5間すべてに桟唐戸が敷設してある。
この建物は経蔵で、唐招提寺が建立される以前よりこの地にあった建物で、日本最古の校倉造と言われる。
経蔵と対の形に並ぶが一回り大きい、こちらの建物は宝蔵。
どちらも高床式となっている。
緑の植生に囲まれた、珍しい位置にある鐘楼。
建物は数度の火災に遭っているが、梵鐘は平安時代のもので国重文。
撞き座(鐘を撞く位置)が高く、このことから古鐘であることがわかる。
近世の鐘は撞き座がもっと下方に位置している。
南大門、金堂、講堂と縦一直線に並ぶ伽藍配置。
雄大な講堂では、多くの僧が修行したに相違ない。
軒丸瓦には、誇らしげに唐招提寺の文字が刻まれている。