イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「不滅のヒーロー 仮面ライダー伝説」読了

2021年10月18日 | 2021読書
岡謙二 「不滅のヒーロー 仮面ライダー伝説」読了

今年は仮面ライダーが放送を開始して50周年の年に当たるそうだ。第1回の放送は1971年4月3日。僕が7歳になった直後、小学2年生の新学期が始まったときのことである。
その日は鮮明に覚えている。すごい番組が始まるという情報は友達同士でも話題になっていて、姉に懇願してこの時間は僕がテレビを見る時間にしてもらった。
しかし、期待とは裏腹に、ちょっと不気味な雰囲気のドラマが始まり最初の頃はあまりなじむことができなかった。
しかし、2号ライダーが登場した頃からだっただろか、ストーリーは断然面白くなってきた。
そして変身ポーズというのが革新的だった。ベータカプセルもウルトラアイも必要ないので金持ちも貧乏も一緒に変身できる。学校ではお前の左腕の角度が悪いなんて評価しあいながら品評会をする。仮面ライダーはそれほど当時の少年にとっては憧れであり神様といってもよい存在であった。

子供の頃からコスチュームやユニフォームといった類が大嫌いで集団活動になじめない性格であったので変身ベルトは欲しいとは思わなかったが、御多分に漏れず仮面ライダーカードは一生懸命集めた。これはおまけのカード欲しさに本体のスナックのほうを食べずに捨ててしまうというので社会問題にもなったけれども、僕はそれほどのお小遣いをもらえるわけもなく、たまにもらえる50円玉を握りしめて行っても二袋しか買えなかった。捨てずに食べようとは思うのだが、どうしてこんなに不味いのかと思うほど美味しくはなかった。
そんなに熱中していた仮面ライダーだが、V3が終わると興味も醒めてきた。結局、その期間はたった3年間であったが永遠のように長く感じられる期間でもあった。

この本は仮面ライダーを演じた俳優のインタビューや、当時の時代背景を分析し仮面ライダーとは一体何者であったか、そんなことを論じている。
数多あるヒーローの中で、どうして仮面ライダーだけがこれほど人々の中で印象に残っているのだろうか。それまでにも実写のヒーローはたくさんいた。僕がテレビで見ていたものだけでも光速エスパーであったりジャイアントロボであったりマグマ大使がいた。仮面ライダーの後にもキカイダーがいて、イナズマンがいた。しかし、現在、仮面ライダーほど人口に膾炙しているとも思えない。
著者はその要因を仮面ライダーの制作にかかわった人たちの言葉を引用しながらこう分析する。
俳優のインタビューは苦労話や主役に選ばれたきっかけというのが、これは相当盛られているなという部分はあったが、脚本家や原作の石森章太郎の言葉には的を射ているというものがある。
脚本家の市川森一は、「仮面は人類とともに発生し、それをつけることによって、ひとつの人格が別の人格に生まれ変わる。別の人間が仮面の下に誕生し、その人間が日常性を脱し、我々の悩みを解決してくれるとしたら、それに勝る快事はない。」と語り、
石森章太郎は、「異形のものでなければヒーローになれない。ヒーローは不気味なおもしろさが必要」という信念からあのキャラクターを作った。
著者は異形であることの必要性をこう書いている。
『異業とは異端と同義である。それは”正形”、”正常”という概念があるからこそ生まれるものである。だが”正形”、”正常”とは、一つの社会や集団によってみとめられた大多数の共通項、いわゆるその社会集団でのみ通用する常識や規範に合致したものにすぎない。だからこそ、そこから大きく外れたものを”異形”として攻撃するのだ。なぜなら”異形”の存在を認めた瞬間から彼らが依って立つ常識や規範が崩れていくからである。
異形のものを排除するのは”彼”が自分たちをはるかに超えた能力を持っているのではないかと恐れたことにもよるだろう。
常識によってとらえることができず、規範にも収まらない“彼”の姿は理解不能であることによって、恐れられたのだ。つまり、人々は“異形”の中に、自分たちを超えた未知の能力や才能を空想したのである。』
一種の異様さがこの人気の秘密だったのだろうか・・。そして、仮面の中の正体を明かせないということも異様さにつながるプロットだったのかもしれない。そういえば、ウルトラマンや名探偵コナンも同じく正体を明かせないという共通点があり長く放送されている。
それと、仮面=異形と考えるなら、この作品に携わった人たちは、当時もっともステイタスがあった映画界からあぶれ、さらにテレビ番組の中では「ジャリ番」と蔑まされた異形な状況から這い上がるための反骨精神、そういったものが作品の中に強い迫力を生み出したのかもしれない。
それが、東映のテレビ部長が語った、『今までになかったものをやろう』という掛け声に現れているのだ。
オイルショックや公害問題、70年安保などの社会不安が物語の異様さとリンクしたというのも人気が爆発した理由であるというが、それらは全部大人の理由付けで、子供にとっては、異形だろうが異端だろうが関係ない。とにかくかっこよかった。それだけだ。
この本の扉の写真がそれをものがたっている。



もう、それだけでいいのだ。
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