つむぎ舞 「雑賀乱る 反骨の兵たち」読了
時代小説というのは年間どれくらいの数が出版されるのかは知らないけれども、今年も雑賀衆を取り上げた本を1冊見つけた。
舞台は同じく、石山寺の合戦と雑賀攻めである。
著者は裏表紙の紹介欄でも情報が乏しく、昭和43年生まれで広島出身、写真からは男性であることがわかるだけだ。前に読んだ本もそうであったが、ネットで調べても作家のプロフィールやほかの著作がわからない。時代小説の業界というのはよくわからないが、単発で小説を書いているような小説家というよりもライターみたいな人がたくさんいるのだろうか。
池波正太郎や佐伯泰英といった有名な人はごく少数なのかもしれない。
そして、連続して主人公は女性だ。これも時代小説のトレンドだったりするのだろうか。
雑賀といえば鉄砲だからこれもまた射撃の名手という設定で、おまけに名前も「蛍」と同じ名前だ。そして飛びきりの美人なのである。孫一と雑賀郷の棟梁である土橋重治もその器量と性格に魅了される。
これも伝説なのだろうけれども、夜目が効く射撃の名手はそういうあだ名で呼ばれていたということなのでそこから名前を取るのだろうけれどもせめて過去の作品を調べてもう少しひねりを聞かせてほしいとも思うのだ。(ひょっとしたら作家の名前は違うけれども同じ人だったりして・・)
物語は石山寺の合戦から始まる。
天正4年5月7日(1576年6月3日)、織田軍が石山寺と対峙するために建設した天王寺砦を本願寺軍が取り囲む。陥落寸前に織田信長自身がわずか3000の兵を引き連れて援軍として本願寺軍を急襲。その勢いを駆って石山寺に迫るが主人公が放った銃弾が信長の足に命中。
戦いは小康状態となる。
その後、翌5年2月22日(1577年3月11日)織田軍は雑賀攻めを行うのであるが、雑賀五郷のうち、東側、中郷、宮郷、南郷が織田側に寝返る。
雑賀郷と十カ郷は交易が盛んなのに対し、他の3地域は主な産業が農業だけというなかで財力に格差が出てきた。現実では、もともと信仰している宗教も違ったようだが、そういたことが発端で五郷での合議制を引いていた体制に亀裂が入る。
三郷で暮らす主人公は孫一たちと親交がありその危機を救うべく、4人の鉄砲組の仲間とともに風吹峠で織田軍の先陣を迎え撃つのだが、それから先が奇想天外というか、総大将の羽柴秀吉は主人公の女性に誘拐され、今度はその羽柴秀吉が配下の裏切りに会い命を狙われる。それを助けたのがその女性鉄砲撃ちなのだが、そこには秀吉が約束した雑賀を救うという言葉があった。主人公でありながらその女性鉄砲撃ちは刺客に命を奪われるが秀吉はその約束通りに雑賀の郷を焼き尽くすことなく降伏を受け入れさせることによって救う。
その後、孫一は織田の配下となって各地を転戦してゆくのだが、織田の配下として雑賀を存続させようとする孫一に対してあくまでも独立を維持しようとする土橋重治は対立することになる。
そこがタイトルの、“乱る”という言葉に表現されているようだ。
しかし、その孫一もこの対立に乗じて完全支配をもくろみはじめた織田軍に裏切られ再び紀州に攻め込まれるが本能寺の変で信長が討たれることにより織田軍は退却。ここでも紀州は救われた。
雑賀孫一という人は複数人いたとされている。それは歴代の当主がその名を世襲したからと言われている。それでも石山合戦から本能寺の変までの間、わずか6年ほどだからこの時期に雑賀孫一を名乗ったひとはおそらく一人くらいのものだろうが、このひとのことは謎のようである。
この小説では石山合戦で名をあげた孫一はその名前を利用し、敵を圧倒するため、各砦にいる配下に孫一を名乗らせたという設定になっている。こういう設定を利用して孫一がどうして歴史の中で人物が特定されず謎に満ちているのかということを暗に説明しているように思う。
また、史実では、本能寺の変の直後、孫一は雑賀の地から忽然と消えたそうだ。このエピソードも、織田軍の裏切りに怒った孫一が織田信長を討ち取るために紀州を出たのだということにしている。
いつも思うのだが、時代小説を書く人というのは史実と史実の間をうまい具合に空想でつないで面白い物語を創り出すものだ。
ほぼ嘘とわかりながらもそんなこともあったのと違うだろうかと思わせてしまう。語り手が一人称になったり三人称になったりとこれは小説の作法としてはありなのかとちょっと読みにくい部分もあったけれども、ストーリーとして誰も傷つける嘘でもなくたまにはこういう小説を読むのもよかろうというものだ。
時代小説というのは年間どれくらいの数が出版されるのかは知らないけれども、今年も雑賀衆を取り上げた本を1冊見つけた。
舞台は同じく、石山寺の合戦と雑賀攻めである。
著者は裏表紙の紹介欄でも情報が乏しく、昭和43年生まれで広島出身、写真からは男性であることがわかるだけだ。前に読んだ本もそうであったが、ネットで調べても作家のプロフィールやほかの著作がわからない。時代小説の業界というのはよくわからないが、単発で小説を書いているような小説家というよりもライターみたいな人がたくさんいるのだろうか。
池波正太郎や佐伯泰英といった有名な人はごく少数なのかもしれない。
そして、連続して主人公は女性だ。これも時代小説のトレンドだったりするのだろうか。
雑賀といえば鉄砲だからこれもまた射撃の名手という設定で、おまけに名前も「蛍」と同じ名前だ。そして飛びきりの美人なのである。孫一と雑賀郷の棟梁である土橋重治もその器量と性格に魅了される。
これも伝説なのだろうけれども、夜目が効く射撃の名手はそういうあだ名で呼ばれていたということなのでそこから名前を取るのだろうけれどもせめて過去の作品を調べてもう少しひねりを聞かせてほしいとも思うのだ。(ひょっとしたら作家の名前は違うけれども同じ人だったりして・・)
物語は石山寺の合戦から始まる。
天正4年5月7日(1576年6月3日)、織田軍が石山寺と対峙するために建設した天王寺砦を本願寺軍が取り囲む。陥落寸前に織田信長自身がわずか3000の兵を引き連れて援軍として本願寺軍を急襲。その勢いを駆って石山寺に迫るが主人公が放った銃弾が信長の足に命中。
戦いは小康状態となる。
その後、翌5年2月22日(1577年3月11日)織田軍は雑賀攻めを行うのであるが、雑賀五郷のうち、東側、中郷、宮郷、南郷が織田側に寝返る。
雑賀郷と十カ郷は交易が盛んなのに対し、他の3地域は主な産業が農業だけというなかで財力に格差が出てきた。現実では、もともと信仰している宗教も違ったようだが、そういたことが発端で五郷での合議制を引いていた体制に亀裂が入る。
三郷で暮らす主人公は孫一たちと親交がありその危機を救うべく、4人の鉄砲組の仲間とともに風吹峠で織田軍の先陣を迎え撃つのだが、それから先が奇想天外というか、総大将の羽柴秀吉は主人公の女性に誘拐され、今度はその羽柴秀吉が配下の裏切りに会い命を狙われる。それを助けたのがその女性鉄砲撃ちなのだが、そこには秀吉が約束した雑賀を救うという言葉があった。主人公でありながらその女性鉄砲撃ちは刺客に命を奪われるが秀吉はその約束通りに雑賀の郷を焼き尽くすことなく降伏を受け入れさせることによって救う。
その後、孫一は織田の配下となって各地を転戦してゆくのだが、織田の配下として雑賀を存続させようとする孫一に対してあくまでも独立を維持しようとする土橋重治は対立することになる。
そこがタイトルの、“乱る”という言葉に表現されているようだ。
しかし、その孫一もこの対立に乗じて完全支配をもくろみはじめた織田軍に裏切られ再び紀州に攻め込まれるが本能寺の変で信長が討たれることにより織田軍は退却。ここでも紀州は救われた。
雑賀孫一という人は複数人いたとされている。それは歴代の当主がその名を世襲したからと言われている。それでも石山合戦から本能寺の変までの間、わずか6年ほどだからこの時期に雑賀孫一を名乗ったひとはおそらく一人くらいのものだろうが、このひとのことは謎のようである。
この小説では石山合戦で名をあげた孫一はその名前を利用し、敵を圧倒するため、各砦にいる配下に孫一を名乗らせたという設定になっている。こういう設定を利用して孫一がどうして歴史の中で人物が特定されず謎に満ちているのかということを暗に説明しているように思う。
また、史実では、本能寺の変の直後、孫一は雑賀の地から忽然と消えたそうだ。このエピソードも、織田軍の裏切りに怒った孫一が織田信長を討ち取るために紀州を出たのだということにしている。
いつも思うのだが、時代小説を書く人というのは史実と史実の間をうまい具合に空想でつないで面白い物語を創り出すものだ。
ほぼ嘘とわかりながらもそんなこともあったのと違うだろうかと思わせてしまう。語り手が一人称になったり三人称になったりとこれは小説の作法としてはありなのかとちょっと読みにくい部分もあったけれども、ストーリーとして誰も傷つける嘘でもなくたまにはこういう小説を読むのもよかろうというものだ。
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