広島新四国八十八ヶ所めぐりの次の目的地は第36番の蓮華寺である。交通機関の最寄りでいえば山陽線の安芸中野から徒歩数分のところにある。その次からは東広島市に入るので、ここまで長かった広島市の札所とはいったんお別れとなる。
蓮華寺に行くだけなら駅からも近いしどうということはないが、この寺について事前に調べる中で、ここについては本堂に行って終わりとはいかないな・・という思いになった。寺の背後に蓮華寺山というのがあり、元々は山頂から山麓にかけて伽藍が建ち並んでいたという。現在は麓のお堂から山頂まで四国八十八ヶ所のお砂踏み霊場があり、札所めぐりもこの日1ヶ所だけなので山頂まで往復することにした。4月17日、朝から出れば午前中には帰宅できるだろう。午後からはお楽しみがあるので・・。
9時すぎに安芸中野に到着する。駅の改札を出るのは初めてである。以前の広島勤務時は五日市から広島まで山陽線で通勤していたが、朝の時間帯に「安芸中野・坂行き」という2本併設の列車に乗ることもしばしばあった。今はそうした列車は運転されていないが、安芸中野は折り返しが可能なホームの造りであり、また瀬野川沿いのベッドタウンの駅である。
瀬野川の南には国道2号線があり、沿道にはさまざまな商店も並ぶが、こちら駅前はかつての西国街道に面しているものの、道も細い。山もすぐ近くまで迫っている。
途中から階段となり、上りきったところに本堂がある。本尊は弘法大師ということでまずはお勤めとする。
弘法大師が唐から帰国する際、日本で伽藍を開くのにふさわしい地を求めようと、三鈷杵と数珠の2品を投げた。このうち三鈷杵が到達したのが現在の高野山で、数珠が到達したのが安芸の姫髪山とされる。この姫髪山にお堂を建てたのが蓮華寺の始まりとされている。弘法大師が投げた法具が到達したのが寺の縁起だというところは他にもあり、弘法大師はいろんなものを投げたもんやな・・と思うが、それは伝説としても修行の地としてふさわしいとされたことは確かだろう。
後に覚賢が伽藍を整備し、山頂から麓まで多くのお堂があったという。しかし安芸の領主となった福島正則により寺領を没収され、廃寺となった。
昭和になり、真教という人が蓮華寺の由緒、歴史を惜しみ、現在の場所にお堂を建てて蓮華寺を再興した。そしてかつての山頂の本堂跡まで八十八ヶ所の石仏を設け、奥の院への参道として整備した。後に奥の院のお堂は焼失して、現在は蓮華寺山の憩いの森としてハイキングの人たちの休憩場所として親しまれている。
札所めぐりではそれほど奥の院まで意識しないのだが、何だか今回は石仏の参道を上ったほうがよいように思えた。体を動かしたくなったのもあるだろう。
本堂の裏手には弁財天や白髭稲荷が並ぶ。白髭稲荷は高野山の奥の院からの分霊で、弘法大師の働きを助けるとされる。
そして八十八ヶ所の参道へ向かう。山頂までは2キロ弱とある。まずは1番、2番と間隔が近いところを上る。それぞれに南無大師遍照金剛と唱えながら上るとご利益があるとか。まずは石仏ごとに手を合わせ、遍照金剛を唱えながら歩く。
12番のところに首塚がある。薬師堂建立のためにこの辺りを整地した時に見つかったもので、福島正則が蓮華寺を焼き討ちした際に斬られた僧侶の首を葬ったところとされる。
16番に並ぶのは白龍社。昔からこの辺りにはマムシが出たそうで、マムシ除け、山内の安全のために建てられたとされる。
進むうちに急な上りに出る。以前に四国で歩いた「遍路ころがし」を思い出す。金剛杖とはいかないまでも、登山用のステッキを持って来ればよかったかなと思う。その途中の石仏の写真を撮ることで息を整えながら先に進む。40番台になると再び穏やかな道となった。それぞれ、実際に四国を(さまざまな手段で)回った時のことも思い出しながら歩く。
札所番号が後半になると勾配も急になる。自然の石、自然の土の道が続く。思わぬ形で難儀したのが冬から残っているとおぼしき枯れ葉。履いてきた靴のせいもあるが、これが結構すべる。上りは耐えられても下りが大変だろうなと心配になる。
60番台からはそんな感じで修行の道を彷彿とさせ、思わずヒヤリとするところもあったが、88番に向けて一つずつ進み、ようやくたどり着いた。
さらにそのまま進むと休憩所がある。ここにも蓮華寺の石碑があり、奥の院はここにあったのだろうか。ただそれにしては狭い。
もう少し上ると中央広場と呼ばれるスポットに到着した。蓮華寺の本堂を出てから40分あまり。広さからして奥の院があったのはこちらだろう。昔の名残とおぼしき石仏の祠もあり、ここでも手を合わせる。
もう少し進めば蓮華寺山の山頂に着くそうだが、別に山頂に到達することが目的ではなく、むしろ別方向にある大五輪塔への案内板にひかれる。上ってきたのとは反対側の畑賀地区の方向にあるそうだが、そちらへの道を進む。
数分ほどで大五輪塔に到着。ここからは畑賀~海田市方面の景色を眺めることができる。この前に訪ねた第35番の大師寺もあの辺りで、そういえば大師寺にも四国八十八ヶ所のお砂踏み霊場があったなと思い出す。
このまま畑賀に下りてバスに乗ることもできるが、あいにくバスの本数が少なく、また災害復旧のために運転区間も短縮されているそうで、待ちぼうけをくらうのもどうかと思うのでそのまま安芸中野方面に戻る。上りよりもむしろ下りのほうが難儀した。岩が露出しているところではどのように足をかけるか、そのうえ枯れ葉が坂道をすべりやすくしている。上りより気をつかったし、後半になると膝の後ろにピリッとしたものが走った。単なる運動不足と言えばそれまでなのだが・・・。
結局下りも上りと同じ40分ほどかけ、石仏がカウントダウンするのに力をもらって境内に戻った。ともかくこれで蓮華寺を回り終える。駅に戻ったのは11時すぎ。
安芸中野から山陽線に乗る。この日はマツダスタジアムでドラゴンズとのデーゲームがあるため、車内にもカープのユニフォーム姿の人が目立つ。その人たちも含めてほとんどの客が広島で下車したが、私はそのまま西広島まで乗り通し、広電経由で帰宅した。
記事の始めに「午後からはお楽しみがあるので・・」としたのだが、それは地上波、BS、CSでの「野球中継3試合ハシゴ観戦」。その中で大きいのが、前週にバファローズ相手に完全試合を達成したマリーンズ・佐々木朗希の登板。ファイターズ相手に、BSジャパン(のサブチャンネル)での急遽中継である。それにCS(JSPORTS)でのバファローズ対ライオンズ、ついでに地上波(広島ホームテレビ)でのカープ対ドラゴンズ・・・。
バファローズファンといえども、この3試合の中では佐々木登板のBSジャパンが中心で、CSはその合間に見ることになった(地上波は、カープが序盤から大量失点したことで早々と脱落・・)。
テレビ東京ならではの中継画面を見る中、佐々木が相変わらずの見事な投球でファイターズを完全に抑え込む。その一方、ファイターズも先発上沢の好投でマリーンズに得点を許さず、0対0のまま8回裏を終えた。ここで佐々木は交代。ここでの降板についてはさまざまな声もあったが、致し方ないところだろう。
試合はそのまま延長に入ったところで、ファイターズが万波の本塁打で1安打勝利。佐々木相手に一人のランナーも出せなかったが、投手陣も点を許さなかったことで最後には試合に勝った。ファイターズとそのファンの方は大喜び、マリーンズとすればまさに「相撲に勝って勝負に敗けた」ところか。こういうのも勝負のアヤである。
・・・後半は話が広島新四国から大きく脱線したが、佐々木自身は「パーフェクト状態」が続いている。順当に行けば次の登板は24日のバファローズ戦ということで、私としては今から楽しみ・・・。
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