まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第7回四国八十八所めぐり~奈半利にて一泊

2017年02月08日 | 四国八十八ヶ所
室戸からローカルバスに乗って、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の終点である奈半利駅に到着した。時刻は16時前で、ここから宿泊地であるホテルなはりまでは1キロ弱戻る形になる。その途中で町歩きをしようというのである。

奈半利は、奈良時代には早くも野根山街道というのが整備されている。室戸岬を経由せずに山越えで野根(東洋町)を結ぶルートで、現在でこそ国道55号線が海沿いを走っているが、当時の室戸岬は最果てで波も荒く、人の通るところではなかったそうだ(だから、弘法大師が厳しい自然の中での修行の修行の地に選んだのだろう)。また奈半利は、紀貫之の『土佐日記』にも、那波の泊として登場する。古くから港町であっただろう。

また産業では製材、製糸業、捕鯨で栄えたという。今、伝統的な建物として残っているのは主に製糸業で財をなした家だそうだ。町のところどころに土佐漆喰、水切り瓦のある建物があり、それらを見て回ったが、パンフレットも何もない状態だったので、有名とされる建物を見逃しているかもしれない。家が点在しているのは、伝統的な町並みで知られる吉良川に比べるとマイナーである要因かと思う。

水切り瓦の建物も目につくが、やはり津波に対する意識のあるところと感じさせるのは避難所。国道沿い、そして商店街の中にも避難所がある。そのうちの一つに上がってみる。途中に扉があり、非常時はこれを突き破って上がるようにとある。屋上は家屋の4階くらいの高さだろうか。また、国道沿いには津波のハザードマップが看板で掲げられており、避難所の位置も明示されている。

ホテルなはりに到着。国道から少し山側に入ったところにある。部活の合宿だろうか、ジャージ姿の高校生らしいのが目立つ。玄関前には、遍路の菅笠をかぶったまぐろのモニュメントがある。歩き遍路の利用が多いことはあるが、まぐろとは。実は奈半利はまぐろの遠洋漁業の基地でもあり、カツオや鯨が土佐の名物と言われる中にあって、まぐろが名物である。このホテルなはりも、まぐろ漁船の修理業者である株式会社カゴオというところが、元々は船員向けの宿舎だったのをホテルに改装して営業している。

部屋は3階で、ごく普通のビジネスホテルである。この高さなら多少の津波なら大丈夫とは思うが、室内のしおりでは、万が一の時にはホテルの裏手にある山に避難するようにとある。

ビジネスホテルに泊まった時の楽しみとして夜の居酒屋を探すことがあるが、このホテルなはりではわざわざ外に出る必要はない。レストランがあり、奈半利名物のまぐろをメインとした料理が楽しめる。また、温泉ではないそうだが檜の内風呂と露天風呂を楽しめる。大浴場は離れになっていて、浴衣にスリッパで向かう。合宿の生徒たちで賑やかだが、私も湯船に浸かる。前の日は発熱で風呂をパスしていたので、余計に気持ちよく感じる。もう、大丈夫だ。

そして食事。合宿の生徒たちは広間で別に夕食が出されていて、レストランはゆったりしていた。ここでは奈半利まぐろ定食をいただく。まぐろの刺身をメインとしつつ、珍しいものに「皮酢」と「わた天」というのがある。皮酢はまぐろの皮の部分の湯引きを酢の物にしたもので、わた天は内臓をナゲット風に揚げたもの。いずれもなかなか一般に出回るものではなく、地元ならではのものである。

箸袋の裏に何やら歌詞があった。「おいらの船は300トン」。最初にこれを見た時には、ホテルなはり、またはホテルを経営している株式会社カゴオのPR曲か何かかと思った。ただ検索したところでは、奈半利や室戸のご当地ソングなのだという。部屋に戻って動画サイトで見ると、漁師歌というか、演歌のような曲が流れてきた。特に誰のヒット曲というよりは、いろいろな人が唄っているようだ。

  奈半利出たなら 鮪を追って
  燃える赤道 南方航路
  おいらの船は300トン 
  昔親父も 来て働いた
  海はみどりのインド洋
  アーエンヤコラセ エンヤコラセ

注・歌詞の最初の「奈半利出たなら」の部分は、場所によっていろいろアレンジされるようだ。

・・・まぐろ漁船というといろいろなイメージがあるだろう。この歌詞のように男のロマンを感じさせるものもあれば、借金を返済するためにあえて厳しいまぐろ漁船に乗り込んで・・・という後ろ向きのイメージもある。また最近では、重労働の割には収入につながらないとして日本人の成り手がおらず、遠洋漁業のまぐろ漁船の船員の多くが低賃金ですむ東南アジアの人たちで、それで何とか賄っているという現状もあるそうだ。その一方では、まぐろの乱獲で資源の減少に対する危機感があるとか、「近大マグロ」のような養殖技術が進むということもあり、果たしてこれから「まぐろを食べる」ということについてはどのようなことになっていくのだろうか。これまでまぐろで支えられた奈半利の人たちにとっても他人事ではないだろう。

・・・ということを考える私の相手をするのは、奈半利にも近い安田の酒である土佐鶴。カツオの酒盗を加えると、もうこれで十分だ。ともかくこの瞬間については、上に書いたようなことなど深く考えず、美味しくいただけたことに感謝である。ちなみにまぐろ関連のメニューは他にもあるし、値段は張るがまぐろづくしのコースや会席料理もある。一方で、まぐろ以外の普通の定食もいろいろあるので、さまざまな使い方ができる。

この日はとりあえず出発して、奈半利までたどり着いて体調も回復した。明日はまた早朝からの出発ということもあり、部屋でテレビでも見ながらゆっくりする。途中、ローカル枠のCMで、キリンビール高知支社の「たっすいがは、いかん!」というセリフを耳にして「高知に来たのう・・・」と感慨にふけったりしながら・・・・。
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