まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

観戦記・北信越BCリーグ 富山サンダーバーズ

2007年09月11日 | プロ野球(独立リーグほか)

P9083388_1富山アルペンスタジアムでの富山サンダーバーズ対信濃グランセローズ。北信越BCリーグの生観戦は、7月に上越で行われた新潟対信濃戦があるが、いわゆるメイン球場での観戦は初めて。アルペンスタジアムは全面人工芝の球場ではあるが開放感がある。これまで訪れた「地方球場」では松山坊っちゃんスタジアムと倉敷マスカットスタジアムが「立派な球場やのう」と感心したものだが、その二つとも優劣つけがたい本格的球場である。

入場料1000円でどこの席に座ってもいいということだが、ネット裏の最前列に空席があったので、こちらに陣取る。選手の動きがバッチリと捕えられるポイントで、少し中央寄りにはスピードガンを構えた色黒の男性の姿も見える。NPBのスカウトだろうか。

P9083389ちょうどグラウンドでは打撃練習の後の守備練習の最中で、富山サンダーバーズ率いる鈴木康友監督(元巨人、西武の内野手、名バイプレーヤー)がノックバットを構えての練習中である。

リーグも4分の3を過ぎたところで富山サンダーバーズは2位石川に若干のゲーム差をつけての首位。一方の信濃は勝率5割ラインを行ったり来たりの3位(ということは、リーグの借金のほぼすべてを新潟が背負っている・・・)。試合前、そして試合中のアナウンスでも、「初代チャンピオンに向けて皆さんの熱いご声援をお願いします!!」ということで、スタジアムをチームカラーの緑で染めようとか、優勝を争う石川とのビジター戦でもサンダーバーズのレプリカユニフォーム着用者には入場料割引のサービスを行うとか、NPBにも引けを取らないイベント・特典が用意されているようだ。この後、北信越BCリーグの優勝チームと、四国アイランドリーグの優勝チームとのチャンピオンシップが開かれるということもあり、そりゃ応援のしがいもあるというものだ。試合中のアナウンスでファンからの応援メッセージが紹介されたのだが、その中に「ワタシを四国に連れてって~」というのもあったし。

P9083405ここで富山サンダーバーズのおさらいをしておくと、鈴木康友監督、横田久則(西武・ロッテから台湾でもプレーした)投手コーチのほかに、チームの顔といえるのが「プレーイングコーチ」という肩書きの宮地克彦選手(写真最右)。若手の指導をする一方で、自身もNPBへの返り咲きを目指すということでがんばっている。打率も3割を悠に超えており、やはりレベルの違いかな・・・?また富山の若手選手では本塁打トップ、打率と打点がリーグ2位の4番・野原を筆頭に、打点トップの5番井野口、そして3割打者が前出の宮地のほかに1番の塚本、3番の草島を擁しており、チーム打率も3割を超えるという強力打線でここまで首位できている。一方の信濃は荻原、大村という好打者はいるが、やはり打線が細いという結果が出ている。

P9083394試合前にはチームのマスコット「ライティー」がグラウンドで愛想を振りまいたり、地元の愛好会によるよさこい踊りが披露される中、一塁側スタンドには緑と黄色のいでたちのファンたちの数が少しずつ増えてきた。選手一人一人に登場時のテーマ曲とか、トランペットこそないが、アカペラと太鼓での応援歌があり、大きな声で声援を送る。片や信濃応援団も赤い格好の人たちがそれなりに詰め掛けている。そういえば駐車場に長野や松本ナンバーのクルマも結構停まっていたな。

P9083408さて試合開始。富山の先発は右腕の萩原、信濃は給前。萩原が小柄な体から飄々と投げるのに対し、給前は剛球タイプと見える。

P9083409で、初回の攻防。萩原が信濃打線から2三振を奪ったのに対し、給前はいいボールも来るのだが初回だけで2四球。その後も、萩原がきっちり抑えるのに対し、給前が毎回の四球を出しながらも富山の拙攻に助けられ得点を許さないという接戦。

P9083424 P9083427打率3割が並ぶ草島-野原-井野口-宮地と続く3~6番も、四球は選ぶがヒットが出ない。大声援を送る富山ファンからもため息が出る。スタンドから叱咤の野次が飛ぶが、その昔藤井寺球場でばかり観戦していた私にとっては実にのんびりとした野次に聞こえる。これも地域柄というか、やはり富山の人はそんなえげつないことは言わないのだろう(河内のほうが普通より下品なだけなのかもしれないが・・・)。

P9083428試合が動いたのは4回ウラ。2死から8番廣田が四球を選び、続く9番の大士がセカンド・センター・ライトのちょうど真ん中に落ちるヒットを放つ。信濃の連携プレーが乱れる間に、一塁ランナーの廣田が一気にホームイン。これで先制。続く5回ウラも2安打と四球で満塁のチャンスを迎えるが得点に結びつかず、投手戦である。ちなみに信濃先発の給前はこの回までで被安打5は仕方ないとして、7四球はいただけなかった。

P90834335回ウラ終了後には、「ライティー」と一緒にグラウンドで「YMCA」を踊るというイベント。子どものためのイベントなのだろうが「どなたでも参加できます」とあって、応援団のメンバーも踊ったり、中には子どもを連れているフリをしてグラウンドに入り、もっぱら選手の写真ばかり撮るという客もいたり・・・。

P9083436富山先発の萩原は回を追うごとに調子を上げ、だんだんと打球が前に飛ばなくなってきた。一方、信濃2人目は長身の涌島。ここまでチーム最多の8勝を挙げた先発要員で、信濃ファンからは「贅沢なリレー」という声もあった。投げ下ろす速球で三振を奪い、宮地との勝負でも大きな当たりを許したが、最後は球威が勝ったかスタンドインを許さなかった。

P9083444駄目押し点は8回ウラの富山。8番廣田が二塁打、9番大士の内野ゴロの間にランナー三塁と進み、1番塚本がこの日3本目の安打をヘッドスライディングで決める。これで2対0。クリーンアップの豪快な当たりもよいが、切り込み隊長がバンバン塁に出るのも見ていて面白い。

P9083457こうなると試合の行方は決まったもので、9回も萩原が信濃打線を3人で片付ける。何と2安打完封達成。特に終盤の投球にはうなるものがあり、7回から9回までの9つのアウトのうち、投ゴロが5個(うち1個はバットをへし折った)、二ゴロ2個、一ゴロ1個というもの。試合後のヒーローインタビューで鈴木監督、横田コーチが「投手陣に故障者が多い中、後半になって安定した投球をしてくれている。これまでメンタル面が今ひとつだったが、だんだん成長している」というお褒めの言葉。最後は萩原自身の言葉で締めるところ、思いっきり噛んでいた。このへんはまだ「客の前で話をする」ということに慣れていない、初々しいものだろうな。観客からも温かい笑いが起きていた。

P9083460で、試合後の場外。人だかりができている。毎試合そうなのか、ホームで勝った試合限定なのか、選手が総出でサイン会を行っている。NPBでは絶対にありえない光景だし、北信越BCリーグのサインなぞ現地でなければまず入手できないだろうから、慌てて売店のワゴンで無地のサインボールを買い求め(ペンは選手が用意しているようだ)、人ごみの中へ。鈴木監督に宮地、野原選手は特設ブース(といっても普通の長机だが)で、その他の選手は一列に並んで受け付けるというもの。

P9083463まずは地元記者からインタビュー中の鈴木監督。優勝に向けての一戦で快勝したとあって口も滑らかに、記者の質問に答えながらペンも滑らかにサインする。鈴木監督、先日CDデビューを果たしたとか。富山在住の筋ジストロフィーと長年闘っている男性の作詞に、元アラジン(完全無欠のロックンローラーですな)の高原兄(大阪のバラエティで出ていて、そういえば富山出身だったな)の作曲によるバラード。

P9083462続いて、宮地選手。やはり近くで見ると、プロ野球選手としては小柄なんだけど他の選手と違って一回「できあがっている」というか、NPBに長くいただけに醸し出すものが違うな、という感じ。若い選手のチャレンジの場というリーグだが、こういうベテラン選手と一緒にプレーしたことが、敵味方問わず若い人たちの大きな力になるのだろう。

P9083464このほか、横田コーチ、切り込み隊長の塚本選手などのサインをいただき、私も「にわか富山ファン」になった心持で、アルペンスタジアムを後にする。リーグ戦も終盤、このまま富山が逃げ切るか、そして四国リーグの覇者(今のところ、香川が前後期制覇しそうな勢い)との対戦に打ち勝つか、(オリックス・バファローズのプレーオフ進出の可能性がほぼなくなっただけに)注目したいものである。

帰りも東富山の駅まで歩き(帰宅後にネットで調べたら、富山駅からスタジアムにほど近いところまで路線バスが出ていたらしい・・・本数は別にして)、富山駅まで電車で移動。この日は富山で宿泊。軽く飲みに外に出たが、昨年までにはなかった「サンダーバーズ」の幟やらポスターが店頭に掲げられているのを多く見かける。サッカーJリーグのような規模での「街全体のサポート」というのに比べればごくごく小さなものだろうが、それでも新しい「街のシンボル」が生まれ、少しずつ根を張りつつあるのは確か。この日の観衆は2800人あまり。開幕戦は6000人の客を集めたというから少なくなっているが、四国リーグの平均が1000人台そこそこというし、いや一昔前のパ・リーグの球場なんぞは実際の観客人数はもっと少なかったぞということを思えば、この数はまずまずではないか。

P9083387よく、アメリカの3Aとか、ルーキーリーグの野球の雰囲気がいい、という声を耳にするが、日本の独立リーグだって、それに結構近いものがあるのではないだろうか。大陸に渡る時間もカネもない野球好きとか、日本のプロ野球ってつまらないねという向きも、一度北信越BCリーグや四国アイランドリーグを観戦してみてはいかがだろうか・・・?

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