まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

伊勢湾~渥美半島を横断する

2016年08月27日 | 旅行記D・東海北陸
伊勢湾をフェリーで横断する。9時半に鳥羽を出航した時はどんよりした雲が広がっていたが、少しずつ日が差してきた。水面がギラギラと光るのが夏を感じさせる。暑いのは暑いが、潮風に吹かれるのは気持ちいい。大阪の都市部のベタッとした蒸し暑さとは違った心地よさがある。答志島や神島といった周囲の島の案内放送が流れると、カメラを手に甲板に出る人が目立つ。

客室内に「ヒッチハイク 浜松方面」と書かれた段ボールを見つける。金剛杖2本を持った男性客のものである。ヒッチハイクか・・・今もこういう旅をしている人がいるのだなと思う。思い出すのは、以前日曜朝の関西テレビの番組でJR西日本提供の「走れガリバーくん」というのがあり、ゲストの芸能人2人が列車の中でゲームをして、勝った方は豪華な旅、負けた方は所持金ゼロでヒッチハイクや民泊をしながら目的地を目指すというもの。もし私がクルマ利用なら、乗せる乗せないは別にして、何を思って旅をしているのか話しかけてもいいかなと思う。

10時半、伊良湖岬に到着。下船口で鉄の扉が開くのを待つのも日常ではなかなかないことである。三河に来たな・・・と実感するが、豊橋行きのバスは11時33分発ということで、1時間待ちとなる。次のフェリーで来てもこのバスには間に合わず、この辺りはもう少し何とかならないのかなと思う。まあ、それでも伊良湖岬に滞在する時間ができると思えば悪くない。

ならば灯台や恋路ヶ浜など散策すればいいのだろうが、陸地に降り立てば猛暑である。この中をキャリーバッグを引いて歩くのもできない。ここは昼食と休憩ということで、フェリーターミナルと同じ道の駅で過ごす。昼食として、あさり煮としらすが乗った丼ときしめんのセットをいただく。

食後は、階下にあるやしの実博物館に向かう。伊良湖岬自体にやしは自生しないが、島崎藤村の「やしの実」の詩があまりにも名高い。実際に沖縄からやしの実を流して、伊良湖岬に流れ着くかというイベントも行われている。この詩は島崎藤村のものとして、その「元ネタ」は柳田國男(やなぎだ、ではなく、やなぎた「ギータ」)である。柳田が民俗学的な面白さで語った「やしの実」のエピソードを、藤村が見事なまでに詩の世界に広げた。博物館の解説では、海のない信州で生まれ育った藤村の海への憧れがあったのではないかとしている。博物館は植物としての椰子の紹介のほか、渥美半島の歴史についても触れている。ただ設備が壊れていたり、説明文も古い感じで、メンテナンスがあまり行われていない印象だった。

名鉄の高速船も発着する。実はフェリーの中で、伊良湖岬に着いたら対岸の知多半島を経由してもいいかなと思っていた。伊良湖岬から篠島、日間賀島を経て河和に行く高速船があり、河和から名鉄を乗り継いで豊橋に行くのも一つかなと。まあ、これは今回のような静岡行きのついでではなく、日帰りでも知多半島メインで行けばいいかなと・・・。

バスの時間となる。フェリーで徒歩客はそれなりにいたが、バスに乗ったのは私を含めて3人だけ。他の客はどこに行ったのだろうか。近くのリゾートホテルの送迎車も発着していたからそれに乗ったのかもしれないし、あるいは上に書いた知多半島方面の高速船に乗り継いだか。ヒッチハイクの男性の姿も見なかったので、誰か善意の人のクルマに乗り込むことができたのだろう。

渥美半島は広くて平坦である。土の質の関係か、水田はほとんど見られないが砂地にビニルハウスが広がり、その中を一直線に道が伸びる。畑が終わると今度は三河湾が車窓に広がる。

田原市街に入ると、「サーフィン競技会場を田原市へ!」という看板を見る。次の東京五輪の追加種目の一つにサーフィンが加わることになったが、その開催地として名乗りを挙げているそうである。ただ、なぜ田原市なのだろうか。田原市のホームページを見ても、ここを競技会場とするだけの強い根拠がわからない。そもそも「東京」じゃないし。東京五輪を招致した際のアピールの一つが、コンパクト五輪というものではなかったかと思う。東京ではないにしても、これが湘南や房総なら、まだ「広い意味での東京圏」ということでわからないでもない。それがなぜまた愛知県になるのか。どこかだんだんユルくなっているように思う。リオでのメダル、メダルの騒ぎで忘れられているが、東京五輪は競技場問題、エンブレム問題などさまざまな問題をはらんでいて、一時は「開催地を返上せよ」という声もあったことである。日本全体で開催するということもわからないでもないのだが、あくまで「東京」五輪であることは一貫してほしいものである。

その田原市にある豊橋鉄道の三河田原駅がリニューアルされていて、ここから電車に乗り継ぐこともできるのだが、今回はそのままバスに乗る。ただこれが甘かった。今日は平日、道は普通に渋滞している。田原市から豊橋市に向かう道路はトロトロと走る感じで、結局定時から20分の遅れということになった。

ここからこの旅初めてのJR利用で東に向かう。青春18きっぷは封印して、窓口で購入したのは「豊橋~静岡」の普通乗車券。この区間だけでも途中下車できるし、2日間有効である。この「2日間有効」というのが、この旅で結構効果的である。

14時05分発の浜松行きに乗る。この先、JR東海の在来線はロングシートが続くことに・・・・。
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