まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

津波の被災地・気仙沼へ(その2)

2011年06月17日 | 旅行記B・東北

Dscn8823 一ノ関から大船渡線の快速「スーパードラゴン」に乗車する。2両の車内はほどよく埋まる感じで、ボックス席はあきらめドア横のロングシートに陣取る。現在気仙沼へ出ることのできる唯一の鉄道路線ということか、地元の人も多い中、いかにも私と同じように「被災地の見学」に行くとおぼしき人の姿も見える。

さてこの「スーパードラゴン」、特に大船渡線にドラゴン伝説があるというわけではなく、その線形がドラゴンの形に似ているから。それも自然の地形に沿うのではなく、いわゆる「ナベヅル線」「我田引鉄」の典型として語られる経路である。そのためかどうもローカル線の旅でもイメージよく語られることは少ないように思うのだが、私も久しぶりに乗車して、素朴な山村が広がる光景になぜか心がなごむ。村の人が総出で田んぼの手入れや土手の草取りなどに当たるのも見え、本当にこの先に震災・津波の大きな被害を受けた町があるのかと、半ば信じられない気持ちである。

Dscn8833_2 そして1時間あまりで気仙沼に到着。現在はここが袋小路の終着駅となっている。前回訪れたのは2007年の1月であったが、この時の気仙沼線の記事を改めて読み返すと、低気圧から来る強風のために途中の駅での足止めも含めて3時間遅れで到着したとある。そして今回はこのような形で来ることになったとは複雑な気持ちだ。

Dscn8836 気仙沼の駅は高台にあるために津波の被害はなく、見たところではこれまでとも変わらぬ姿である。ただ気仙沼線、そして大船渡線の盛までの区間が「復旧のめどなし」という表示が、この先復旧まで何年かかるか見通しのたたない厳しい状況を物語っている。

Dscn8839 駅前の案内所に入る。市街地のガイドマップは置いてあるが、通常この手の案内所にあるホテルや観光施設のパンフレットは見られない。まあそれはそうだろう。その代わりに現在運転中のバスの時刻表がドア一面に貼られ、また沿岸の津波の被災状況の地図が掲示されている。色の変わっているところが被災地で、ここ気仙沼では駅の周辺は津波の被害がないものの、中心部は一面色が変わっているのがわかる。震災直後の報道でしつこいくらい流された津波の映像を思い出す。

Dscn8840 何はともかく、ということで中心部に向けて歩き出す。駅前の商店街、そして10分ほど歩いたところにあるセブンイレブンはいつもと変わらないかのような営みである。セブンイレブンには普通に品物が置かれていた。ただ新聞コーナーにちらりとのぞいた河北新報の「震災から3ヶ月」という見出しが重くのしかかる。

Dscn8844 そしてやってきた港町のエリア。ここに足を踏み入れて、まずは言葉を飲み込んだ。そこには、3ヶ月前の津波が発生してから時間が止まっているかのようで、重機でガレキの撤去を行っている光景も見えるがそれでもまだ手付かずで残されている建物が多く残っていた。何か焦げたような臭いも漂っている。

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Dscn8865 ガレキの一角で見かけたこんな光景。旗はどこかの家にあったものだろうか。どうだろう、犠牲となった人たちへの鎮魂とともに、「がんばろう日本!」という力強いメッセージを送っているかのようである。

Dscn8868その近くには大漁旗、養殖網に使うビン玉が並ぶ一角があった。そこには「グラウンド・ゼロ」の文字。グラウンド・ゼロ・・・2001年に発生したアメリカ同時多発テロの現場となった地の名前であるが、同時多発テロと同じく、この震災を忘れてはならないとのモニュメントとして、私が訪れたちょうど前日、慰霊祭が行われたという。そのことを伝えるニュースでは「復興なんてまだまだ」との声があった。先に「いつもと変わらないかのような営み」と書いた私の気持ちを恥じた。

Dscn8874岸壁に出る。ここも被害が大きく、大島行きのフェリーは乗り場を変えて運航しているようだ。

Dscn8875ただその中にあってその姿がしっかりと残っているのが、森進一の「港町ブルース」の歌詞が刻まれた歌碑。気仙沼の地名がモロに出てくるこの歌碑がしっかりと残っているのは、それだけカネをかけたからということか。いやそんなひねくれた見方はやめて、これからの気仙沼復興への希望のモニュメントとして見るべきだろうな。

Dscn8892Dscn8896とはいうものの、現実には漁船が打ち上げられたり、乗用車もひっくり返ったままである。自動車の持ち主に向けて撤去の意思確認を行う張り紙がなされていたが、果たしてこの持ち主は無事でいるのかどうなのか。何とも痛々しい。

Dscn8885 津波の被害のすごさを改めて確認しながら、南気仙沼方面に向けて歩を進めることにする・・・・。

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