リベルテールの社会学

生きている人間の自由とは、私の自由と、あなたの自由のことだ。そして社会科学とは、この人間の自由を実現する道具だ。

学における歴史性と継時性

2018-10-06 13:31:44 | 社会学の基礎概念
 というわけで、これは本日の続き「別題」、オタクの方専用。
 読者限定なのですぐ入っちゃいますよ。
 
 一口に「歴史」といいましても、とりあえず2通りあります。第1に、その中から物語を作る諸データの連なり。第2に、諸データから研究者が作り上げ、出来上がった物語(ストーリー)。まあ同じものの表し方の違い、とも言えますが、後者がいわゆる「歴史」で。「物語」というように、それは小説であり映画であり、「歴史と名づけられた何か」であり、その物語に登場する「単語の意味」です。
 この2通り、どちらも行為者にとっては、原則、外在的なものです。映画を見て、その映画内容を次の日に行為するのはよほどの変態。
 
 さてところが、似たようなものでそのほかに、「継時的変化」と呼ぶべきものがある。これにも2通りあります。
 まず第1に、「ある事象の時系列的変化」というものであり、既に存在する概念について、これに新しく付与されるべき意味のことです。ポイントは、すでに存する概念の豊富化だということ。別の言葉で言えば、因果連関が持つ歴史的規定性の確定です。言葉で物語をお作るのではなく、ある社会事象について、その事象が「なぜ」「いかに」時間的に変化し得たか、ということを語ることで、その事象の概念を豊富化する、ということです。それによって豊富化した概念は、それをもって行為主体の次の未来への思考を真理化させるべく存するわけです。人はこの結果をもって次の行為に移る。
 第2に、「現在存する社会状態のよって来る所以(ゆえん)」というもの。焦点は、現在の事象そのものであり、別の言葉で言えば「現状分析」です。現状のある事象が、どういう経過をたどって今に至るか、その時系列的な把握のことです。事象の把握は、それが現在どういう状態なのか、何を要素として「現在」となっているのか、その状態を事実として確定させるためにあります。人は、同様に、その結果をもって次の行為に移る。
 今述べたこの2通りの継時的変化こそが、人間の学問の持つ主体的意味なのです。

 こういうことがサクッと頭に浮かぶところが私の素晴らしさ。ボケたなんて言わせない。って、ボケボケで毎日よく生きれてるなあと思うんだけど。(ってゆうか、物事がサクサク浮かぶには年齢的定着が必要なのさ。ほんとムダに生きちゃあいないぜ、というよりも生かされてるといったほうがよい。以上、信仰者より)
 とりわけ、今「継時的変化」と呼んだものに2通りがあるなんて、歴史上社会科学者が世界に何千万人いようと、誰一人思いも寄らなかったことですぜ。

 といって種を明かせば、入江節次郎氏の『世界経済史の方法と展開』2002年、という本が変だったから。変といっても悪くはない。入江氏というのは1921年生まれだそうで、研究をし終わった人がやっと縦横に語れる、という喜びに溢れた好著です。知る人しか知らない人なのが残念。
 なんだけど、それゆえに自分の知識にひきづられてしまって、御自身の論理どおりにならない。
 入江氏によれば、世界経済史は、経済史を時間の流れではなく同一空間のものとして扱うのだ。というわけ。正しいね。現状分析として正しい。しかし、それなら経済の歴史を扱ってはいても経済史ではないよ。にもかかわらず本書の結果は、書物としてはただの経済史です。
 一方、彼によれば、経済段階論は、前の段階の要因を次の段階では消えたもののように扱うのが間違いだ、と。しかしこれは彼氏の間違い。経済段階論は、それが正しいのであれば、規定因子論なのだから、段階ごとにリセットされた姿で表すしかない。経済段階論は経済史ではないのだ。
 まあそれはいいとして、こうした議論には抜け落ちた側面がある、というわけで、それが継時的変化の第1の概念の豊富化です。これがない限りは人間は歴史からは何一つ学べない。歴史家の説を面白く拝聴することはできても、それでは講演会場から出れば、青空の下、歴史家の講義とは縁もゆかりもない世界に舞い戻るだけだ。
 社会科学学徒は、常に行為主体として人間社会の概念を豊富化することにより、同じ行為主体である人々とともに、その生を豊富化しなければならない。
 
 というわけで、これはカテゴリー「その他」歴史学ではなく、社会学徒が自分の理論を作るための基礎知識なのです。我ながら、ここんとこすごい社会学的貢献であるなあ。
 ちなみに、ようやく次回論究の中枠が仮決定しました。今やらないとすぐに凍える冬だし。
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