ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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人権273~発展途上国と難民問題

2016-02-26 10:03:02 | 人権
●発展途上国の人権状況

 次に、発展途上国の人権状況について述べる。今日、世界の独立国は、約190カ国を数えるにいたっている。その大多数は、植民地から独立した有色人種の発展途上国である。その多くでは、白人種によって剥奪されていた統治権の回復はされたものの、人民の自由と権利はいまだよく発達していない。アジア、アフリカ、ラテンアメリカの多くの地域に、貧困、不衛生、飢餓、内戦、虐待、環境破壊等の問題が存在する。これらの問題の解決には、まず国家の集団として持つ権利が拡大され、そのうえで個人の自由と権利が発達しなければならない。
 発展途上国における国家的権力の強化は、しばしば独裁や腐敗を生み、それが固定化される。経済発展と国民形成はうまくいかず、混迷と混乱が続く。先進国側は人権の擁護のための関与の正当性を主張し、人権の尊重を求める。これに対し、発展途上国は、人民の「自決の権利」を援用して、先進国の要望を内政干渉として非難するという構図となっている。
 有色人種の国家の多くは、欧米・日本等の近代化の先進国より人権状況がよくない。その例の一つが、北朝鮮である。わが国と北朝鮮の間には、日本人拉致の問題がある。北朝鮮では、金日成・金正日政権のもと、多くの日本人を含む外国人の拉致が行われた。国家最高指導者の指示による拉致は、最も許されざる人権侵害であり、国家によるテロである。2003年(平成15年)4月、国連人権委員会は、北朝鮮が多くの国民を強制収容所に送り込み、拷問をし、幼児を餓死させるなど、人権を蹂躙していると非難して「組織的かつ広範囲で重大な人権違反を犯している」という決議をした。この決議は日本人拉致問題の全面的解決を要求した。
 とはいえ、この委員会には、国内で人権を蹂躙している多くの諸国が名を連ねていた。議長国は、カダフィを元首とする専制国家当時のリビアだったことは、皮肉なことだった。北朝鮮による人権侵害を糾弾する決議を採択したこの同じ委員会は、ロシアによるチェチェンの陵辱、中国におけるチベットでの弾圧等には目をつぶった。ロシアや中国の人権問題について国連で議論らしい議論がされないのは、こうした加盟国の実態も背景にある。
 北朝鮮に関しては、国連において拉致問題等に関する理解が進み、近年対応に変化が出ている。2014年2月、国連北朝鮮人権調査委員会が、北朝鮮の人権問題について最終報告書を公表した。これを受けて、3月28日国連人権理事会は、北朝鮮による国家ぐるみの人権侵害行為は「人道に対する罪」と非難する決議を賛成多数で採択した。決議は、拉致被害者らの帰国、全政治犯収容所の廃止と政治犯の釈放等を要求し、犯罪に関与した人物の責任を追及するよう明記した。人権状況を今後も把握するため「実態の監視と記録を強化する組織」の創設を盛り込んだ。また、国連安保理に対し「適切な国際刑事司法機関」への付託の検討を勧告した。そして、北朝鮮の人権侵害を国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう勧告した初めての北朝鮮人権決議案が、12月18日に国連総会本会議で採択された。過去の決議は北朝鮮住民たちの人権問題だったが、このたびの決議は「人道に対する罪」の最高責任者として金正恩の責任をICCで問うことを目指したものである。
 だが、金正恩は、拉致した多数の日本人の帰国を拒み、生死や安否に関しても正確な情報を提供しようとしていない。わが国は、拉致問題は金日成・金正日の指示によって行われ、現在も金正恩が関与している国家犯罪であることを強く打ち出し、またこれを国際社会が一致協力して解決すべき人権侵害犯罪として、米国および国際社会により積極的にアピールすることが必要である。
 その他の各地の発展途上国に目を向けると、バルカン半島のボスニアにおけるムスリムへの虐殺・虐待・強姦等は、民族浄化(エスニック・クレンジング)といわれるほど、苛烈なものである。アフリカ北東部の南スーダンのダルフール地方における紛争は、多くの難民を生み出している。その他、イラク、エチオピアのソマリ州、コンゴのギブ地方、ジンバブエ、ソマリア、パキスタンの北西部、シリア、イスラーム教過激組織ISILが支配する地域等、近年その国の国民の権利が著しく侵害されている国は、少なくない。問題の原因には、宗教的対立、少数民族の独立運動、相対的強国による併合、為政者の独裁・専横、資源確保を図る先進国の関与等がある。専制国家、独裁国家においては、特権的な支配集団を除く多数の国民が権利を制限され、多民族国家・多宗教国家においては、少数民族や少数集団が権利を制限されている例が多い。
 こうした人権問題への対処としては、国連が政権に対して非難決議をしたり、国際社会が経済的等の手段によって制裁を加えたりして、政治体制の変化を促す。また安保理の決議によって、PKF・PKOが活動し、治安と秩序の回復を図る。だが、安保理は、常任理事国の意見が一致しなければ、国連としての行動は取らない。その場合、特定の国家やそれに連携する国家群のみで行動を起こすことがある。その戦争が侵攻戦争なのか人道支援なのか、今のところ客観的な基準は存在しない。立場・利害が異なると、軍事行動に対する評価は大きく異なる。軍事行動の目的も、人権の擁護より、主は石油・天然ガス等の資源の確保にあることが多い。今日の国際社会では、国益の追求が優先され、国益を実現するため、または国益を損なわないようにするために、人権擁護の行動がされることが多い。

●難民及び国内避難民が4,300万人

 今日の世界の人権状況で深刻なものの一つに、難民の問題がある。難民については、個別的人権条約の一つとして、1951年に難民条約が締約された。難民条約は、第1条A(2)にて難民を定義している。すなわち、この条約の成立を分岐点として、「1951年1月1日前に生じた事件の結果として、かつ、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」が、難民と規定された。要件は、迫害の恐怖、国籍国の外にあること、国籍国の保護の喪失の3つである。こうした難民を狭義の難民または条約難民という。迫害を受ける理由は、人種、宗教、国籍、特定の社会集団または政治的意見の5つである。それゆえ、戦争や内乱、自然災害によって国を追われる人々は、難民ではない。また、国籍国の外にあることが要件ゆえ、国内にとどまっている者も同様である。国籍国の外にあっても、国籍国の保護を受けている者も同様である。
 難民条約が定める狭義の難民に対し、外国軍隊の侵攻や内戦、食糧危機等により生じた国内避難民、人道上の難民等を、広義の難民と言う。国内避難民とは、武力紛争や内乱、自然災害、大規模な人権侵害等によって、難民と同じく移動を強いられているが、国境を越えていないので難民とは分類されない人々である。国内避難民は、国籍国の保護を期待できないという点に関しては、難民と共通した境遇にある。
 国籍国に代わって難民に保護を提供するのは、難民条約の締約国である。ただし、どの国家も、難民条約の締約国となることによって、難民を受け入れる義務を負うわけではない。たとえ自国の領域に入った人々が難民と認定されても、これを受け入れるかどうかは、各国が領域国として独自に主権的判断に基づいて決定し得る事項とされている。
 一方、国家の権利としては、国籍国から迫害を逃れてきた個人を領域内に庇護する自由を、国家は持つ。これを領域内庇護権という。領域内庇護権は、主権国家の権利であって義務ではない。またあくまで国家が庇護する権利であり、個人が庇護を受ける権利ではない。
 無国籍の場合は、国外強制退去となった時に、当該個人を受け入れる国がないということが起きる。無国籍は個人の重大な不利益を招くため、1954年に「無国籍者の地位に関する条約」、61年に「無国籍の減少に関する条約」が成立した。ただし、これらの条約の締約国は多くない。
わが国の外務省によると、2009年(平成21年)末の時点で、世界における難民及び国内避難民は、4,300万人を超えるといわれる。日本の人口の3分の1である。それだけの人々にとって、地球は安住の地となっていないのである。
 こうした難民及び国内避難民への支援においても、国連の役割は重要である。だが、国連には、安保路常任理事国の構成だけでなく、他にも問題が存在する。その一つが、左翼主義の浸透である。国連は、世界の人権状況を改善する中心的な国際機関だが、そこに自らの思想を浸透させて利用しようとする勢力が存在する。そうした勢力が関わっているものの一例が、戦前の日本軍の慰安婦問題である。1996年(平成8年)に国連人権委員会(現人権理事会)に出されたクマラスワミ報告書は、慰安婦を「性奴隷」と定義し、その人数を「20万人」と記述した。この報告書は、虚偽であることが明白な著作を基にしたものだった。その他、さまざまな国連機関が、日本の責任を追及する報告書や勧告を相次いで出してきた。その背景には国連を利用し、自らの主張を通そうとする左派・リベラル系団体の活発な動きがある。彼らは、NGO(非政府団体)という公認の団体を通じて、国連諸機関に働きかけて、自国の政府への批判や他国の政府への攻撃を行い、党派的・民族的な利益を実現しようとしている。市民運動の名目で、国際的な左翼や反日勢力が活動している。人権は普遍的・生得的な価値と思われやすく、また国連機関は一見政治的に中立な機関であるので、国連機関から人権問題として指摘されると、抗弁がしにくい。それゆえに、国際的な左翼や反日勢力の巧妙な活動には十分な注意が必要である。
 国連の改革のためには、国連から左翼人権主義を駆逐しなければならない。

 次回に続く。

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