ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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人権398~人権発達のための実践で重要なこと(続)

2017-01-06 09:30:13 | 人権
●人権発達のための実践で重要なこと(続)

(11)国家の役割が重要であることを認識する
 次に、人権発達のための実践において、国家の役割が重要であることを認識する必要がある。現代の世界は、さまざまな国家が並存している国際社会である。国際社会における主要な行為主体は、国家即ち各国の政府である。これに加えて、補助的な行為主体として国際機関・民間団体・諸個人等が活動する。国連は基本的に国家を単位とし、加盟国は190以上にのぼる。各国は、政治的自由によって国連に加盟し、一個の集団的主体として討論や投票に参加する。仮にこの主体を個人単位にすると、70億人もの個人を等しく国連の参加者とすることになる。これは、現実的に不可能である。国家を単位にするのが妥当である。
 人権条約は諸個人が直接採択しているのではなく、諸政府が採択している。個人の人権を擁護するのは、基本的に各国の政府が行うべきことである。その国の政府ができない場合やどの国の政府もできない場合に、国際機関や民間団体、篤志ある個人等が、政府の役割を補助するという副次的な役割を担う。その役割も重要だが、人類全体の人権の発達を目指すには、個人や民間団体の活動では、規模が限られている。国家が主体とならなければ、大規模な動きはできない。国家を排除したり、軽視したりする考え方は、大きな計画の実施を困難にするだけである。
 人権発達の実践のためには、費用がかかる。費用負担のためには、国民総所得の主体であるネイションの役割が不可欠である。ミレニアム宣言の実行は、先進国でネイションの役割の回復・強化を行うことなしには、現実のものとならない。ネイションの本質的な価値を否定すると、ネイションの責任担当能力を発揮させられない。
 ネイションの国内的・国際的な役割を再評価し、諸国家・諸民族が協調し、共存共栄し得る地球社会の指導原理を追求すべきである。国際間の平和と繁栄、諸国家・諸民族の共存共栄のもとでしか、人権の大きな発達は実現できない。
 国家の中でも大国の役割が重要である。ネイションとして負う道徳的責任は、ネイションによって異なる。大国と小国では、能力が異なる。GNIという経済的な能力だけでなく、政治的な影響力の違いもある。GDPの大きい国や、国連安保理常任理事国として拒否権という特権を持つ国の責任は大きい。私はまずこうした国々、特権的な米・英・仏・ロ・中の5大国と、それらの国以外でGDPの大きい日本・ドイツ、合わせて7か国について、その結果責任及び救済責任を具体化し、責任の履行を確実なものとするための体制を構築することが必要だと思う。
 そのためには、米国が国連分担金の未払い分を支払うこと、及び国連憲章の敵国条項を廃止することが先決である。次に、国際機関の改革が必要である。ミレニアム宣言で合意したGNI0.7%の移転だけでなく、IMF・WTO等の国際的な経済機構の改革へと議論の枠組みを広げて、国際的な合意を作っていくべきである。グローバリゼイションを規制して、発展途上国が「発展の権利」を行使でき、諸国家・諸民族が共存共栄できる仕組みを創出しなければならない。

(12)米国の価値観の変化と中国の民主化を促す
 大国の中でも、特に米国の役割が重要である。ハンチントンによれば、現在の世界の権力構造は、超大国、地域大国、第2の地域大国、その他の国々という四つの階層からなる。国際関係は、それらの国々の権利と権力の力学によって、日々動いている。国際法を無視して地域覇権を目指す国や、核開発をして発言力・影響力を強めようとしている発展途上国もある。西洋文明の価値観による国際秩序を破壊しようとするイスラーム教徒の過激組織もある。こうした国際社会で秩序と平和を維持するには、自由・平等・デモクラシー・法の支配・人権等といった理念を尊重するとともに、強い国力を持った国が必要である。
 現状において、その役割を担う能力を持つ国が、超大国アメリカである。しかし、米国は世界最大のGDPを持つ豊かな国であり、最も強い政治的影響力を持つ国でありながら、富裕層と貧困層の格差が拡大し、無保険者が5000万人、乳幼児死亡率が発展途上国並みとなっているという現実がある。米国の国民多数が自由至上の価値観を改め、自由と平等の均衡を図る思想に転換しないと、米国は国内で社会正義を実現し得ない。また米国民が自由至上の価値観に固執している限り、世界の発展途上国の諸国民は、貧困と不正義の解消へと進むことができない。それゆえ、国際社会で人権を発達させるための一つの重要な条件は、米国における価値観の変化である。米国にそれを実現する思想及び指導者が現れることが期待される。
 米国の役割の一つは、覇権主義的な国々の無法な行動を抑えることにある。なかでも共産中国への対応が重要である。中国共産党政府は急速な軍拡をして、地域覇権どころか宇宙空間を含めて、全地球的に米国に対抗して覇権を獲得しようとしている。その一方で、チベットや新疆ウイグルで、少数民族を弾圧・虐殺している。中国で、人権と正義が実現しなければ、国際社会の取り組みは、その努力の多くが損なわれる。中国は、国連安全保障理事会で拒否権という特権を持つ常任理事国である。世界人口の約5分の1を有する人口大国である。アジア・アフリカの諸国に資源の支配、経済的進出等を強めている。また北米・欧州・オーストラリア・ロシア等に大量の移民を送り出している。中国の問題を抜きにして、世界の貧困と不平等の改善ばかりに関心を向けている人権論者や左翼人権主義者の主張は、間接的に共産中国の覇権主義を容認・助長するものとなっている。中国の民主化を促し、伝統的な東洋の精神文化の復興を進める必要がある。
 日本には、米国の価値観の変化と中国の民主化を促す上で特段の役割がある。そして、日本の伝統である和の精神に基づく指導原理を世界に広める使命がある。日本人がそのことを自覚し、人類の平和と発展、精神的進化に貢献しようと決意し、行動するかどうかに、人権の発達もまたその多くがかかっている、と私は思う。物質的な繁栄は、精神的な向上と、ともに進むものでなければ、人間は自らの欲望によって自滅する。物心調和の社会をめざすのでなければ、真の幸福と永遠の発展は得られない。米国と中国が従来の価値観を脱し、物心調和の文明を目指す国に変わらなければ、世界全体もまた人類が生み出した物質文明とともに崩壊の道を下るだろう。
 ただし、この問題は半分以上、今日の日本人自身の問題ともなっている。他国を善導できる日本になるためには、日本人は日本精神を取り戻し、物心調和・共存共栄の道を進む必要がある。日本自体、精神的に復興しなければ、米国の影響によらずとも、自ら衰亡の坂を転げ落ちる瀬戸際にある。自覚と決起、邁進の時である。

 以上、人権発達のための実践において、私が重要と思うことを12点述べた。

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