今日、多くの人が「天皇制」という言葉を使っている。日本を愛する人々、政治家や有識者もそうであり、保守を自称する人にも「天皇制」という人が目立つ。
「天皇制」は戦前、ソ連の国際共産主義組織であるコミンテルンが作った言葉である。コミンテルン日本支部であった日本共産党が使用した。日本の共産革命をめざした「32年テーゼ」で使用している。ここで「天皇制」は、帝政ロシアのツアーリ専制支配体制と同様のものとされている。
「天皇制」が左翼用語と知っていても、それに替わる言葉を知らないがために「天皇制」を使っている人が多いようだ。「皇室制度」が伝統的な正しい用語である。そのことを、私は、国学院大学教授・大原康雄氏の名著「天皇―その論の変遷と皇室制度」(展転社、昭和63年)で知った。以来「皇室制度」を使用している。
「皇室制度」は戦前、宮内省で使っていた言葉である。宮内省の宗秩寮爵位課長等を歴任した酒巻芳男に「皇室制度講話」(岩波書店、昭和9年)という題名の著書があることからもわかる。本書は、皇室制度の解釈に関して定評のある文献である。
皇室を敬う日本人は、「皇室制度」という言葉を使うべきである。日本の共産化をめざしコミンテルンが作った言葉と分かっていて「天皇制」を使うのはやめよう。
「天皇制」という言葉が普及した要因の一つが、「象徴天皇制」という言葉である。これも「象徴天皇制度」と言ったほうがよい。「天皇制」は「統治体制」「支配体制」という意味で「○○制」と言う。打倒すべき支配体制という階級闘争の思想がこめられている。こうした共産主義の思想を除き、法制度としての「象徴天皇」を述べる時は、「象徴天皇制度」と呼ぶのが適切と思う。
単なる言葉の言いかえではない。戦前のわが国では華族制度、爵位制度等と「制度」という用語を使った。その点からも、法制度としての「象徴天皇」を述べる時は、「象徴天皇制度」と呼ぶのが妥当と思う。
「皇室」の意味で使われる「天皇家」という言葉も、現在では広く使われている。しかし、この言葉は、戦前には無かった。「皇室」ないし「帝室」と呼称した。私の知る限り、「天皇家」を使ったのは、左翼の歴史家・禰津正志(ねずまさし)が書いた「天皇家の歴史」(昭和28年)が、一般書の最初のものと思う。「皇室」を英訳したthe Imperial Familyを反訳して「天皇家」とし「天皇制」とともに、左翼が使用して普及したものだろう。日本を愛する人々は、伝統的な呼称である「皇室」とお呼びしたい。
「皇室」は、天皇と皇族各個人の総称である。天皇、及び皇族の方々という意味である。そこで、皇室に関する法制度について論じる時は、「皇室制度」という別の言葉を使う必要がある。天皇、及び皇族の方々を総称で呼ぶときは「皇室」、その皇室の法制度を述べる時は「皇室制度」と分けることができる。
以上は細かい言葉の問題のようだが、一つ一つの言葉の背景には長い伝統があり、またそれが組み込まれた思想がある。背景を知った上で、不適切な言葉は避け、適切な言葉を使うことが大切だと思う。
■追記
本稿を含む「天皇と国柄」に関する拙稿を、下記に掲載しています。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion05.htm
「天皇制」は戦前、ソ連の国際共産主義組織であるコミンテルンが作った言葉である。コミンテルン日本支部であった日本共産党が使用した。日本の共産革命をめざした「32年テーゼ」で使用している。ここで「天皇制」は、帝政ロシアのツアーリ専制支配体制と同様のものとされている。
「天皇制」が左翼用語と知っていても、それに替わる言葉を知らないがために「天皇制」を使っている人が多いようだ。「皇室制度」が伝統的な正しい用語である。そのことを、私は、国学院大学教授・大原康雄氏の名著「天皇―その論の変遷と皇室制度」(展転社、昭和63年)で知った。以来「皇室制度」を使用している。
「皇室制度」は戦前、宮内省で使っていた言葉である。宮内省の宗秩寮爵位課長等を歴任した酒巻芳男に「皇室制度講話」(岩波書店、昭和9年)という題名の著書があることからもわかる。本書は、皇室制度の解釈に関して定評のある文献である。
皇室を敬う日本人は、「皇室制度」という言葉を使うべきである。日本の共産化をめざしコミンテルンが作った言葉と分かっていて「天皇制」を使うのはやめよう。
「天皇制」という言葉が普及した要因の一つが、「象徴天皇制」という言葉である。これも「象徴天皇制度」と言ったほうがよい。「天皇制」は「統治体制」「支配体制」という意味で「○○制」と言う。打倒すべき支配体制という階級闘争の思想がこめられている。こうした共産主義の思想を除き、法制度としての「象徴天皇」を述べる時は、「象徴天皇制度」と呼ぶのが適切と思う。
単なる言葉の言いかえではない。戦前のわが国では華族制度、爵位制度等と「制度」という用語を使った。その点からも、法制度としての「象徴天皇」を述べる時は、「象徴天皇制度」と呼ぶのが妥当と思う。
「皇室」の意味で使われる「天皇家」という言葉も、現在では広く使われている。しかし、この言葉は、戦前には無かった。「皇室」ないし「帝室」と呼称した。私の知る限り、「天皇家」を使ったのは、左翼の歴史家・禰津正志(ねずまさし)が書いた「天皇家の歴史」(昭和28年)が、一般書の最初のものと思う。「皇室」を英訳したthe Imperial Familyを反訳して「天皇家」とし「天皇制」とともに、左翼が使用して普及したものだろう。日本を愛する人々は、伝統的な呼称である「皇室」とお呼びしたい。
「皇室」は、天皇と皇族各個人の総称である。天皇、及び皇族の方々という意味である。そこで、皇室に関する法制度について論じる時は、「皇室制度」という別の言葉を使う必要がある。天皇、及び皇族の方々を総称で呼ぶときは「皇室」、その皇室の法制度を述べる時は「皇室制度」と分けることができる。
以上は細かい言葉の問題のようだが、一つ一つの言葉の背景には長い伝統があり、またそれが組み込まれた思想がある。背景を知った上で、不適切な言葉は避け、適切な言葉を使うことが大切だと思う。
■追記
本稿を含む「天皇と国柄」に関する拙稿を、下記に掲載しています。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion05.htm
はじめまして。「日本の心をつたえる会」(略称、日心会の田沼と申します。
よろしくお願いいたします。
細川様がおっしゃいますように、いま現在でも保守陣営にありながら「天皇制」を使う方々が見受けられます。
ご本人たちに悪気はないのでしょうが、やはり改めて欲しいと思っております。
そこで差し支えなければ、非常に解りやすい細川様のご考察を拡散させて頂きたいのです。
ブログ名と共に全文転載しますのでよろしくお願いいたします。
日心会 会長 田沼喜一
kokoro2011tanu@willcom.com
国体という漢語は、シナの「漢書」によります。その語が「くにがら」という大和言葉に充てられました。
わが国の国体は、万世一系の天皇が統治する国のあり方を意味します。
国体の語は、近代において、西洋の constitution の訳語に当てられました。この場合は、国の主権または統治権のあり方を意味し、主権または統治権の運用の仕方を意味する政体と区別されます。国体の例は君主制・共和制等であり、政体の例は専制政治、立憲政治等です。
例えば、君主制国家の場合、政体が専制政治から立憲政治へと変わっても、君主制を維持していれば、国体は変わらないということになります。
わが国で国体を護持するという場合、天皇を中心とした皇室制度を守ることを意味します。国体の破壊は、皇室を廃止し、共和制や共産主義体制に変えることを意味します。
色々考えていることがございまして、又御教授よろしくお願いいたします
やっぱり確かな根拠のあるこうしたお話は、もっと皆が知るべきだと思いました。
私も人に聞かれたら、こちらの記事を参考にいたします。ありがとうございました。