ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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習近平主導体制に応じ、尖閣を守れ

2012-09-23 08:44:17 | 尖閣
 今秋開催予定の第18回中国共産党大会で習近平・国家副主席が党の最高指導者に昇進する。シナ系評論家の石平氏は、8月31日の産経新聞「China Watch」に、次のように書いた。
 「来年3月の全国人民大会では習氏はさらに国家主席に就任する予定である」「中国政府は『尖閣が中国の領土・核心的利益』だと主張してきた手前、日本側の尖閣の土地購入の実行に対して『習近平政権』は強硬姿勢に打って出るしかない。さもなければ、国民と軍部から猛反発を食らって誕生したばかりの新政権がいきなり、つまずくことにもなりかねないからだ。それを避けるために習近平政権はおそらく必死になって日本側の動きを封じ込めようとするのであろう。場合によっては来年の4月を待たずにして、今秋に習近平氏が党のトップとなったときに、日本に対する攻勢が早くも始まってしまう可能性がある」と。
 産経新聞の中国スぺシャリスト、矢板明夫記者によると、既に中国では、政策の策定・調整の主導権が、胡錦濤国家主席から習国家副主席に移っており、尖閣問題で中国の一連の強硬な対抗策を主導しているのは、習氏だという。胡政権による対日協調路線が中国の国益を損なったとして、実質上否定された形であり、「中国政府の今後の対日政策は、習氏主導の下で、強硬路線に全面転換しそうだ」と矢板氏は書いている。
 8月10日の韓国の李明博大統領による竹島上陸や日本世論で強まる中国批判などを受け、状況が一変したらしい。
 9月19日習副主席は、中国を訪問したパネッタ米国防長官に対し、尖閣問題への不介入を要求した。日米を分断し、日本を孤立化させる狙いがあるものと考えられる。またわが国政府による国有化を「茶番」と断じた。習氏は尖閣問題で外交の前面に立つことで、自分の存在感を強め、権力基盤を一層固めようとしているのだろう。
 次期国家主席となる習近平氏は、人民解放軍の軍内保守派に支持基盤をもつ。対日協調路線を取る胡氏は、日本製品の不買運動や大規模な反日デモの展開には否定的だったが、習氏はこれを容認し推奨した。国連に対し東シナ海の大陸棚延伸案を正式に提出することも決定した。尖閣周辺海域を中国の排他的経済水域(EEZ)と正式宣言することに道を開き、日本と共同で資源開発する可能性を封印した。中国メディアの反日キャンペーンや、尖閣周辺海域に監視船などを送り込んだことも含め、すべて習氏が指示しているという。既に習近平時代は始まっていると見たほうが良い。そして、習近平氏が国家主席の座に就けば、以後、10年間は、習体制が続くことになるだろう。
 習氏は故習仲勲副首相を父とし、太子党すなわち中国共産党の高級幹部の子弟等で特権的地位にいる者たちのリーダーである。太子党と対立するのが団派、すなわち共産主義青年団出身者のグループである。その首領は、胡錦濤主席である。
 習氏は大学卒業後、北京の中央軍事委本部に勤め、その後の地方党・政府勤務でも各地で軍の分区書記を兼務してきた。軍とのつながりが強い。胡氏が共青団出身で軍との関係が浅いため、軍権掌握に苦労してきたのとは対照的だ。
 習氏は、また上海出身者による上海派の首領・江沢民のグループに連なっている。習氏は「ミニ江沢民」と呼ばれ、江氏同様、思想面では強硬派である。習氏は、21年秋、新疆ウイグル自治区で発生した騒乱事件で武力鎮圧を主張、温家宝首相ら穏健派と対立したと伝えられる。
 日本に対しては、胡主席は江沢民政権の反日民族主義政策を改めようとしたが、軍部は東シナ海の油田開発や尖閣諸島問題などで強硬策をとるよう圧力をかけてきた。江前主席が推挙した習氏が国家主席となると、対日政策は逆戻りすると見られてきた。既にそれが始まっているわけである。
 習氏は毛沢東を賛美する。朝鮮戦争を「侵略に立ち向かった正義の戦争」と断じてはばからない。22年10月朝鮮戦争参戦60周年行事で、老兵を前に「帝国主義侵略者が中国人民に強いた反侵略戦争の勝利」と「中朝両国軍の団結」を謳歌し、称賛した。
 習氏は、毛沢東思想を強調することによって、毛思想の影響が濃厚な軍を中心にした勢力の支持を固めてきた。習氏を推してきた軍部は、国内の経済的・社会的危機の中で、発言力を強めている。習氏が国家主席になれば、指導部への軍の影響力はこれまで以上に強まるだろう。
 中国では、現状への不満から民衆の間に毛沢東崇拝が復活しつつある。その度合いはまだ分からないが、共産党政権は、民衆の毛沢東崇拝のエネルギーを、愛国主義の中に吸収して、政権の基盤強化に利用し、対外侵攻を不満のはけ口にする可能性がある。またそれによって、一気に体制のファッショ化を進めるおそれがある。
 習近平政権が誕生するのはこれからだが、わが国は、既に習氏が中国の対日政策の主導権を握っていると見て、強硬化する中国に対して、領土と主権を守る覚悟と備えが必要である。

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●産経新聞 平成24年9月19日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120919/chn12091911090003-n1.htm
【尖閣国有化】
対日強硬策、習近平氏が主導 韓国大統領の竹島上陸など機に一変
2012.9.19 11:06

 【北京=矢板明夫】日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化を受け、中国で一連の強硬な対抗策を主導しているのは、胡錦濤国家主席ではなく、中国共産党の次期総書記に内定している習近平国家副主席であることが分かった。胡政権による対日協調路線が中国の国益を損なったとして、実質上否定された形。中国政府の今後の対日政策は、習氏主導の下で、強硬路線に全面転換しそうだ。
 複数の共産党筋が18日までに明らかにした。それによれば、元・現指導者らが集まった8月初めの北戴河会議までは、党指導部内では尖閣問題を穏便に処理する考えが主流だった。「尖閣諸島を開発しない」などの条件付きで、日本政府の尖閣国有化についても容認する姿勢を示していた。
 しかし、8月10日の韓国の李明博大統領による竹島上陸や日本世論で強まる中国批判などを受け、状況が一変した。「なぜ、中国だけが日本に弱腰なのか」と党内から批判が上がり、保守派らが主張する「国有化断固反対」の意見が大半を占めるようになったという。
 9月初めには、胡主席を支えてきた腹心の令計画氏が、政権の大番頭役である党中央弁公庁主任のポストを外され、習氏の青年期の親友、栗戦書氏が就任。政策の策定・調整の主導権が習氏グループ側に移った。
 軍内保守派に支持基盤をもつ習氏による、日本の尖閣国有化への対抗措置は胡政権の対日政策とは大きく異なる。胡氏はこれまで、日本製品の不買運動や大規模な反日デモの展開には否定的だったが、習氏はこれを容認し推奨した。
 また、国連に対し東シナ海の大陸棚延伸案を正式に提出することも決定。尖閣周辺海域を中国の排他的経済水域(EEZ)と正式宣言することに道を開き、日本と共同で資源開発する可能性を封印した。これは、2008年の胡主席と福田康夫首相(当時)の合意を実質的に否定する意味を持つ。このほか、中国メディアの反日キャンペーンや、尖閣周辺海域に監視船などを送り込んだことも含め、すべて習氏が栗氏を通じて指示した結果だという。
 習氏が今月約2週間姿を見せなかったのは、一時体調を崩していたことと、党大会準備や尖閣対応で忙しかったためだと証言する党関係者もいる。習氏が対日強硬姿勢をとる背景には、強いリーダーのイメージを作り出し、軍・党内の支持基盤を固める狙いもある。
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