●東南アジアが米中の競い合う場に
中国は、米国をけん制しつつ、東南アジアへの経済・外交・安全保障面での影響力を拡大している。とりわけ、南シナ海のほぼ全域を「核心的利益」と呼んで領有権を主張し、覇権の確立を目指している。これに対し、米国はアジア太平洋における中国の行動をけん制するため、ASEANとの関係の強化を図ってきた。冷戦時代に、米国と中国はインドシナ半島で激しく勢力争いをした。ベトナム戦争やカンボジア内戦は、米中の勢力争いの舞台だった。今日その争いの再現を思わせるほど、東南アジアは再び米中が激しく競い合う地域となっている。
オバマ大統領は、23年(2011)秋、それまで以上に「アジア太平洋シフト」外交の姿勢を明確にし、在日米軍再編など日米同盟を通じた対中抑止強化に踏み出した。ただし、中国に対して柔軟な対話路線を取り、軍拡・海洋問題では牽制しながら、対北朝鮮・対イランでは協力を要請するという複雑な外交を展開しているものである。
24年(2012)11月6日オバマ大統領が再選された。大統領が引き続きアジア太平洋重視の方針を堅持する姿勢を示したことは、日本にとってもアジア太平洋地域にとっても歓迎すべき事柄だった。
再選されたオバマ大統領はタイ、ミャンマー、カンボジアの3カ国を、再選後初の外遊先に選んだ。このことは、2期目もアジア太平洋重視の方針を堅持することを示しただった。11月19日、オバマ氏は現職の米大統領として初めてミャンマーを訪問した。オバマ氏は、スー・チー氏を自宅に訪ねて会談した。スー・チー氏の肩を抱いて微笑むオバマ氏の写真は、ミャンマーの民主化と米国の関与を強烈に印象付けた。オバマ氏のミャンマー訪問は、ミャンマーを中国から引き離し、自由民主主義の勢力の側に引き付ける外交をさらに大きく前進させるものとなった。
このときプノンペン行われた一連のASEAN関連首脳会議で、東南アジアにおける米中の対立が一段と鮮明になった。南シナ海問題について、オバマ大統領は「多国間の枠組みでの解決」を主張した。一方、中国の温家宝首相は「あくまで2国間で解決すべきだ」と従来の姿勢を繰り返した。中国は多国間協議を拒否し、個別撃破の政略を取っている。中国の反対により、南シナ海の紛争回避に向けた「行動規範」の策定協議入りは先送りされた。
中国が南シナ海で覇権を確立すれば、東シナ海でも覇権確立の動きを強化することは明白である。南シナ海の領有権問題は、わが国にとっては東シナ海の領有権に直結する問題である。南シナ海から東シナ海へ、さらにインド洋へと勢力を広げようと企む中国の野望に対抗するため、わが国は、米国・東南アジア諸国に加えて、南方のオーストラリア、西方のインドへも連携の輪を広げ、太く、強くする必要がある。米国の政権が、日米安保条約を堅持し、中国に対して積極的に対抗する外交を行う政権であることは、わが国にとっても、またアジア太平洋地域の多くの国々にとっても、喜ばしいことなのである。
次回に続く。
中国は、米国をけん制しつつ、東南アジアへの経済・外交・安全保障面での影響力を拡大している。とりわけ、南シナ海のほぼ全域を「核心的利益」と呼んで領有権を主張し、覇権の確立を目指している。これに対し、米国はアジア太平洋における中国の行動をけん制するため、ASEANとの関係の強化を図ってきた。冷戦時代に、米国と中国はインドシナ半島で激しく勢力争いをした。ベトナム戦争やカンボジア内戦は、米中の勢力争いの舞台だった。今日その争いの再現を思わせるほど、東南アジアは再び米中が激しく競い合う地域となっている。
オバマ大統領は、23年(2011)秋、それまで以上に「アジア太平洋シフト」外交の姿勢を明確にし、在日米軍再編など日米同盟を通じた対中抑止強化に踏み出した。ただし、中国に対して柔軟な対話路線を取り、軍拡・海洋問題では牽制しながら、対北朝鮮・対イランでは協力を要請するという複雑な外交を展開しているものである。
24年(2012)11月6日オバマ大統領が再選された。大統領が引き続きアジア太平洋重視の方針を堅持する姿勢を示したことは、日本にとってもアジア太平洋地域にとっても歓迎すべき事柄だった。
再選されたオバマ大統領はタイ、ミャンマー、カンボジアの3カ国を、再選後初の外遊先に選んだ。このことは、2期目もアジア太平洋重視の方針を堅持することを示しただった。11月19日、オバマ氏は現職の米大統領として初めてミャンマーを訪問した。オバマ氏は、スー・チー氏を自宅に訪ねて会談した。スー・チー氏の肩を抱いて微笑むオバマ氏の写真は、ミャンマーの民主化と米国の関与を強烈に印象付けた。オバマ氏のミャンマー訪問は、ミャンマーを中国から引き離し、自由民主主義の勢力の側に引き付ける外交をさらに大きく前進させるものとなった。
このときプノンペン行われた一連のASEAN関連首脳会議で、東南アジアにおける米中の対立が一段と鮮明になった。南シナ海問題について、オバマ大統領は「多国間の枠組みでの解決」を主張した。一方、中国の温家宝首相は「あくまで2国間で解決すべきだ」と従来の姿勢を繰り返した。中国は多国間協議を拒否し、個別撃破の政略を取っている。中国の反対により、南シナ海の紛争回避に向けた「行動規範」の策定協議入りは先送りされた。
中国が南シナ海で覇権を確立すれば、東シナ海でも覇権確立の動きを強化することは明白である。南シナ海の領有権問題は、わが国にとっては東シナ海の領有権に直結する問題である。南シナ海から東シナ海へ、さらにインド洋へと勢力を広げようと企む中国の野望に対抗するため、わが国は、米国・東南アジア諸国に加えて、南方のオーストラリア、西方のインドへも連携の輪を広げ、太く、強くする必要がある。米国の政権が、日米安保条約を堅持し、中国に対して積極的に対抗する外交を行う政権であることは、わが国にとっても、またアジア太平洋地域の多くの国々にとっても、喜ばしいことなのである。
次回に続く。
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