ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

尖閣:中国首相が「日本が盗み取った」と公言2

2013-06-12 09:54:59 | 尖閣
 李克強首相が尖閣諸島を念頭に「日本が盗み取った」と主張した発言は、昨年9月楊潔●(よう・けっち)外相と李保東国連大使が国連総会一般討論の場で行った演説に通じる。楊外相と李国連大使は、この時、尖閣諸島の領有権を主張し、日本が尖閣諸島を「盗んだ」という表現を計7回使用した。日本による尖閣国有化に関連し、日清戦争末期に「日本が中国から盗んだ歴史的事実は変えられない」と述べ、「強盗の論理と同じ」「マネーロンダリング(資金洗浄)のようだ」とも表現した。国連総会という国際社会で重要な会議の場で、日本を盗人呼ばわりする中国の姿勢は、異様だった。
 これに対し、日本の国連代表部の児玉和夫次席大使は、同演説に反論する答弁権を行使し、日本の尖閣諸島領有の歴史を詳細に説明した上で「日本の固有の領土」であることを主張した。李国連大使が激しく反論すると、日本は2度目の答弁権行使で、「歴史的事実と国際法に基づき、尖閣諸島は日本の固有の領土だ」と主張した。
 中国の言い分は、尖閣は台湾の付属諸島であり、カイロ宣言及びポツダム宣言によって、中国に返還されたはずだという論理である。カイロ宣言は、台湾などに言及し、「日本国が清国人より盗取したすべての地域を中華民国に返還する」と規定している。しかし、戦後の日本の領土は、昭和27年(1952)4月28日サンフランシスコ講和条約の発効を以て、法的に確定したものである。講和条約でわが国は、日清戦争で割譲を受けた台湾を放棄したが、わが国は台湾割譲以前に、尖閣諸島を閣議決定で沖縄県に編入している。当時、尖閣はどこの国にも属しておらず、国際法上適正な手続きによる編入だった。中国は、日本はカイロ宣言・ポツダム宣言に定められた義務を果たしておらず、「戦後の国際秩序に挑戦」していると主張するが、中国の言い分には、まったく根拠がないのである。
 だが、楊外相らの発言は、単に国連総会の場を使ったプロパガンダではない。周到な研究と計画あってのものと見て、わが国は外交的な対抗策を講じるべきである。中国政府は、日本に対し、第2次大戦の戦勝国の地位を利用し、戦後秩序を維持するという論理を用いて歴史認識や領土の帰属に係る主張をしている。中国が国際連合で歴史カードを使っているのは、国際連合は、第2次世界大戦の時の連合国がもとになっており、戦勝国が戦後秩序を維持するための機関として設立されたことに関係する。わが国では国際連合と訳すthe United Nationsは、正しい訳は「連合国」であり、中国はそれを使用している。日本は連合国に降伏して、連合国=国際連合に加入を許された旧敵国である。国連憲章には、日本を敵国と見なす「敵国条項」が残されたままである。この敵国条項は、中国が日米安保を無効化するために悪用する可能性があり、注意を要する。
 なお、李首相は、ポツダム宣言について「カイロ宣言の条件を必ず実施すると指摘している」と述べた。だが、カイロ宣言については、米英中参加国首脳の誰も署名はしておらず、チャーチル英国首相は国会ではっきり宣言の存在を否定している。米国国務省はカイロ宣言はなかったと公に発表している。宣言というより、公告という程度のものであることを、抑えておく必要がある。
 ところで、中国の習近平国家主席は、異例にも国家主席就任後、早期に訪米し、オバマ大統領との首脳会談を行った。6月7日、米カリフォルニア州で行われた首脳会談で、オバマ氏に対し、尖閣諸島は歴史的に見ても「中国固有の領土」と主張を繰り返し、中国の譲れない国益を意味する「核心的利益」に位置づけているとの認識を表明し、主権と領土統一を断固として守る方針を強調した。また習氏は「中米両国が互いに相手の核心的利益を尊重することが重要だ」とくぎを刺したと伝えられる。
 習氏が国家主席に就いて中国の最高権力者となれば、覇権主義的な行動を一段と強く推進してくることが予想されたが、予想通りの展開である。習氏は、オバマ氏との初の首脳会談で、オバマ政権を米中二大国のG2路線に引き戻させようとするとともに、尖閣については、尖閣については強い姿勢を示すことで、米国を牽制し、米国が日本に譲歩を迫るよう促す狙いがあったものとみられる。また首脳会議で「核心的利益」と述べたことで、日本に対し、引き続き強硬な方針で挑んでくることは確実である。
 6月上旬の米中首脳会談に向けて、中国は沖縄についても、これを奪取しようとする姿勢を明確にした。6月2~3日の拙稿「中国の沖縄略奪工作と琉球独立運動」に書いたが、5月8日、中国共産党機関紙、人民日報は、沖縄の帰属は「歴史上の懸案であり、未解決の問題だ」とする論文を載せた。11日人民日報傘下の環球時報は社説で、この論文に言及し、沖縄の独立勢力を「育成すべきだ」と中国政府に提案した。15日、沖縄では「琉球民族独立総合研究学会」が設立された。これに呼応して、衆院沖縄2区選出の社民党・照屋寛徳国対委員長が「沖縄、ついにヤマトから独立へ」と題した文書を公表した。16日環球時報は、社説で「琉球民族独立総合研究学会」について「中国の民衆は支持すべきだ」とする社説を掲載した。こういう流れの中で、米中首脳会談における習主席の発言は、行われている。ここ数か月間の中国の尖閣及び沖縄に関する外交宣伝工作の展開あっての発言であり、米中首脳会談に向けても計画的にかつしたたかに工作を展開してきたのだろう。
 中国は、尖閣=沖縄略奪工作を一貫して進めており、今後、一層大胆にかつ執拗に展開してくるだろう。尖閣諸島周辺で武力による威嚇を繰り返し、国民の間に厭戦気分を醸成し、同時に反戦思想を高揚させ、憲法改正や集団的自衛権行使が進まぬようにする。同時に沖縄の独立運動を育成し、沖縄県民の意識を誘導し、本土の反日左翼を利用し、沖縄と中央のメディアを操作する。そして、戦わずして勝つ孫子の兵法によって、兵を動かさず、米国と衝突せず、民主的に沖縄県民多数の意思によって、沖縄が独立し、中国の勢力圏に入ってくるよう謀る。だが、もしこの最善の策が国内外の事情によって遂行できないと見極めるや、牙をむいて襲い掛かってくるだろう。
 日本国民は、わが国の主権の要である尖閣を守り、また沖縄でチベットや新疆ウイグルの人民と同じ悲劇が起こらないよう沖縄を守り、またそれによって日本そのものを守らねばならない。

(註 ●=簾の广を厂に、兼を虎に)

関連掲示
・拙稿「尖閣を守り、沖縄を、日本を守れ」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12o.htm
・拙稿「中国の沖縄略奪工作と琉球独立運動」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/b67a056be689c5ea0b357d66fa9b8da9
・拙稿「米中再接近をけん制し、価値観外交の展開を」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/9ef38f8b6965e21b17d046cff9e144ce

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